津島の窓から 第7回

tsushima

名古屋市科学館のプラネタリウムの謎

 
津島千紗
(第18号で「“本物の”探偵物語」を執筆)
 
 
 
 私が行った国内旅行の観光中に出会った疑問点について、真実を知りたく、もしご存知の方がいれば、教えてもらいたいと思っている。

 名古屋市科学館のプラネタリウムについてである。

http://www.ncsm.city.nagoya.jp/visit/planetarium/

 名古屋の科学館にあるプラネタリムがとにかくすごく有名なのだという。とにかく大きくて、なんかすごいのだそうで、朝から並ばないと見られないと聞いた。あれはそう、一昨年の七月。大相撲の名古屋場所を見に行った次の日、高校の後輩であり相撲仲間のFと、朝から並んだのだ。すでに暑い中、開館前から並んだのに長蛇の列で、一時間以上並んで無事に昼過ぎの回のチケット(科学館とは別売り)を買えた。しばらくしたら、すぐに売り切れになっていた。噂通りの大人気だ。昼過ぎまでは科学館内を存分に楽しんだ。放電だの竜巻だの実演系も面白かったし、館内のいろいろな展示も、科学の仕組みはよくわからなかったけど面白かった。鏡の前に立つとすごいデブになる鏡があって、そこで腹を抱えてFと大笑いしたときは、いい年してなにしてんだと思った。まったく仕組みのわからない科学の前では、人は無垢になれるのだ。科学の分からなさ加減が、よかった。


 
 そして、いよいよプラネタリウムの時間になり、ドーム内に入った。その瞬間、これはまずい、と即座に思った。薄暗いドーム内には、うっすらと星空がちりばめられていた。まるで、大草原から満点の星空を見ているか、宇宙の中にいるようだ。そして、椅子。ただの座席ではなく、一つ一つが独立したリクライニングシートで前後左右の人と十分な距離が取られており、やたら良い椅子だ。ほとんど寝ているような体勢を取って、広い座席でゆったりと夜空を見るのだ。
 あかん、これ、寝る。
「これ・・・寝るやろ・・・」
 とFに言うと、
「これ、あかんやつですね。絶対寝ますね」
 と心から同意している。ずっと前から何度も何度も「プラネタリウム楽しみだね!!!」とFと言い合っていたのだ。寝たくない。
「無理やろこれ・・・」
「これは無理ですね・・・」
 という話だけを開演ギリギリまでひたすら続けていたと思う。というかもう、薄暗くて涼しくて椅子が気持ちが良く、すでに眠かった。そしていよいよプラグラムが始まった。ここのプラネタリウムの特徴として、録音されたナレーションではなく、「学芸員」という生の人間が解説をしてくれるのだという。で、この学芸員の方が非常にナイスすぎる声の持ち主のおじ様だった。第一印象は「森本レオやないかい!!」めっちゃくちゃ優しくてソフトな素敵すぎる声のおじ様がその日の担当なのだった。眠くなるようなつまらない喋り方とかでは決してなく、とにかく耳に心地よい優しい素敵な話し方なのだ。

 このときのプログラムが、たぶん、一日の空の流れを追う的なもので、なんか、夜明け前の空から朝になっていくシーンから始まり、レオおじ様が「おはようございます、朝です・・・」と言ったのを最後に、あっというまに意識を失った。誇張抜きで、開始一分以内に寝た。あんなに楽しみにしていたプラネタリウムなのに! 明らかにすごそうなことが起きることは始まる前からわかったし、あの素敵な声の解説も、めちゃくちゃ聞きたいのだ。「ダメだ! 見たい!」という強い気持ちでたまに意識が戻るのだが、もう、一瞬たりとも目を開けていられない。途中一瞬目を覚ましたとき、隣のリクライニングから、Fの
「ぐごぉーっスピプーッ」
 というひっどい寝息が聞こえてきた。
「ああ、Fもやっぱり寝てるな・・・」
 と思った直後、またしても意識を失った。私ははっきりいって退屈なときなんか隙さえあれば寝てやろうという考え方の持ち主だが、今回のように起きていたいときや寝てはいけないときも、意図せずに寝てしまうことが多々ある。しかし、どちらかというとFは、みんなが寝ているようなときでも一人でけっこう起きているような真面目な一面がある子なのだ。しかしながら、完敗である。
 逆にあのドーム内で、寝なかった人はいるんだろうか? 起きていた人が仮にいたとしたら、Fの寝息はけっこううるさかったので、同行者として私も申し訳なく思う。というか、私も寝息を出していた可能性も否めない。あれだけ気持ちよく爆睡していたのだから、寝息の一つぐらい出ていた可能性の方がなんなら高い。

 次に意識が戻ったのは、また、ラストの夜明けから空が明るくなっていくシーンだった。またレオおじ様がラストのナレーションで「おはようございます、朝です・・・」と言って目が覚めた。尋常じゃなく気持ちの良い目覚め方だった。普段の生活で、大音量のアラームに起こされその爆音により心臓ドキドキしながら、しぶしぶベッドから這い上がるときの気分と違いすぎる。爽やかすぎる目覚めだったが、
「ああ、やっぱり寝てしまった・・・終わってしまった・・・」
 というひどい絶望がただちに訪れた。そしてドーム内が明るくなったので、Fのほうを見ると、寝起き丸出しの顔をしており、かつ
「やっぱり寝ましたよね・・・」
 とこっちに言いたいが言わずもがなといった様子で、半笑いでニヤニヤしていた。私もおそらく同じ表情をしていたはずだ。私たちはドーム内を出てエスカレーターまでの数メートルを無言で並んで歩き、しばらく、あまりのショックで言葉が出なかった。当然、ようやく出た言葉は「やっぱり寝ましたね・・・」「あれは無理やろ・・・」である。そのあとしつこく、「あれは無理だ」という話をメインに、Fの寝息がすごかったという話など寝てしまった関連の話をしばらくしていた。

 50分の上映時間中、私が起きていたのは、秒単位で全部合わせて2分もいっていないと思う。別に退屈だから寝たわけではなく、おもしろそうだったし楽しみにしていたし、本当に寝たくなかったのに不可抗力だったのだ。とにかく夜明けのシーンが冒頭とラストであったこと以外、何が起きたかまったく知らない。たぶん、ところどころ神話がどうとか聞こえた気がするので、予想だが神話絡みの星座の話などもあったんじゃないかな。なんなら夜明けのシーンしか見ておらず、満点の星空や星座の数々など一つも見ていない。見られなかったから、このプラネタリウムがすごいと言われる理由や、実際のすごさなど、全てが不明だ。
 本当に謎なのだ。あれで寝ないでいられる人はいるのだろうか? いるとすれば、どんな人なのだろうか。あれで寝ない人は、普段ちゃんと夜などは眠れているのか、海外行くとき飛行機では寝ないのか、つまらない授業などどんだけ居眠りしない能力があるのか等、気になる。心配になるほどだ。すごく興味がある。

 今回グーグルさんにて「名古屋 プラネタリウム 寝る」で検索したところ、無数に出てきたので、まあ、たぶん、ほとんどみんな寝るんだろうとは思っている。そもそも、ご丁寧にリクライニングシートにしたり、素敵な優しい声のおじさんを採用したり、名古屋市科学館が客を眠らせようとしているとしか考えられないのだが、どういうつもりなのかも謎だ。

 リベンジしたいが、次回も起きていられる自信は全く無い…。

 
 
 
-ヒビレポ 2015年2月12日号-

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