今朝はボニー・バック 最終回

bonnie

UFCより熱い餅まきに17年ぶりに参加した

 
ボニー・アイドル
(第19号で「地下アイドル」執筆)

 
 
 
2月28日(土)、久しぶりに「餅まき」に参加した。
前回参加したのは、高校受験に失敗し、中学浪人をしていた15歳の春だから、17年ぶりということになる。
バブル期と重なっていたためか、ぼくが少年時代を過ごした1980年代中頃〜90年代前半には、近所でかなりの頻度で餅まきが行われていた。
「○○ンちで明日、餅まきだってよ」
どっかから情報が回ってくるや、隣町の一切面識のない家の餅まきだろうが自転車を駆けて参加した。遠慮情けない悪ガキぶりと体育の時間や放課後のボール蹴りで鍛えた運動神経を生かし、頭上から降ってくる餅を取って取って取りまくった。
ある時など、「丸餅」より一回り大きく、家の四隅に奉られている「角餅」がどうしてもほしくて餅まきが始まる前に強奪したこともある。近所のじいちゃんに追いかけ回されてぶん取られたが…。
そう、あの頃のぼくたちにとって餅まきは、運動会や遠足と同じぐらい楽しく、そしてプロレスごっこより熱く燃える行事だったのだ。

あれから十数年。東京に上京してからというもの、餅まきの場面に遭遇したことは一度もなかった。東京出身の友人(30〜40代)に訊いたら、参加したことはおろか、その存在すら知らないという人がほとんどだった。
餅まきを知らない。ぼくに言わせれば、それだけで人生の楽しみの何%かは損をしている。
今、世の中には「モンハン」とかスマホアプリの釣りゲームとか、さまざまなキャラクターやアイテムを収集するゲームが流行っているらしいが、そんなもんいくら手に入れようが所詮は絵に描いた餅。現実の生活では何の役にも立たない。どうせなら腹の足しになる本物の餅を拾うべきである。


 
餅まきが行われたのは、中央線を乗り継いで青梅線小作(おざく)駅近くに建設中のモデルハウスだった。ツイッターで探し当てたこの「もちまき棟梁送り」というイベントは、青梅市の建設・不動産会社である「健幸工房シムラ」主催で、モデルハウスに近隣住民を招き、餅まきの他に上棟式、棟梁送り他が行われる。
その日のぼくの所持品は、財布、スマホ、メモ&ペン、デジカメのみ。これらをモッズコート、インナーのパーカーに詰め込む。過去の経験上、地面に落ちた餅をより多く拾うには手ぶらの方がいいと判断したのだ。服装も、インナー、アウターともパーカーにした。あわよくば降ってきた餅を背中のフードでダイレクトキャッチするためだ。
抜かりなく家を出たはずだったが、拾った餅を入れるものがない! 途中、駅を降りて市指定のゴミ袋(20L10枚入いり)を購入。デカいクーラーボックスを持っていったはいいが、ボウズで帰宅する波平さんみたいにならなければいいけど。

10時半近く、会場に到着するとすでに上棟式は始まっていた。柱と棟の骨組みが組み立てられた状態のモデルハウスの中に祭壇が作られ、神主さんによるお清めが行われている。
受付で振る舞われていた甘酒をいただきながら会場を眺める。現時点での参加者は15名ほどだろうか。モデルハウスの上棟式とあって、マイホームの購入を検討している幼児を抱いた若いファミリーの姿が目立った。同世代で単独参加しているのはぼくだけだった。
1s

シムラの設計士さんによる家づくりの話、世界的けん玉プレイヤーによるけん玉ステージが行われると、時刻は11時20分。会場内の人数はいつの間にか40名程に増え、中にはぼくと同じ餅まき目的であろうお年寄りの姿もちらほら。モデルハウス内にプラスチック桶5つ分の餅とポリ袋4つ分のお菓子が運び込まれる。シムラの社員さんに訊いたところ、この日用意された餅は五百個とのこと。
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3s

11時半。志村將成社長がマイクを握り、「大変お待たせしました!」というあいさつに続いて餅まきのルール説明へ。最初は小学生未満の幼児(&その保護者)のみが参加できるファミリー向けを行い、その後に全員参加の部になるという。参加者全員に餅を入れるビニール袋を配られた。ゴミ袋は必要なかった。
撒き手のシムラ社員がモデルハウスの二階に上がり、「U-6枠」の試合が始まった。白い丸餅に混じって、マーブルチョコやよっちゃんイカ、ラムネなどの駄菓子が空から降ってくる。が、ちびっこたちのテンションは至って普通で、餅を拾う動きも緩慢だ。どちらかというとお母さんたちの方が「こっちにも投げて〜」と頭上の撒き手におねだりしている。
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ぼくが小さかった頃の餅まきでは、前述の角餅や紅白の紐を通した五円玉も撒かれたが、今回はどちらもないようだ。頭に当たった時の危険配慮なのだろうか。撒き手も一投ごとに「次、固いお餅いきますからね〜、次、お菓子投げますよー」と事前アナウンスしている。
餅とお菓子入りポリ袋2つ分を撒いたところでU-6は終了。
いよいよ年齢制限なしのバトルロイヤルへ。若いファミリーに加えて、じいちゃん、ばあちゃん、部活帰りの小学生たちに混じってぼくもリングイン。
頭上の撒き手の手からぱっと餅、お菓子が放られる。それがぼとぼとぼと、と地上に落ちた刹那、四方から現れた無数の手が獲物をかっさらっていく。
5s

速い。撒かれる餅の量は先ほどよりも多いはずなのだが、まったく拾えない。地面から餅が消えるスピードがU-6とは比べ物にならない。
そしてエリアを覆っている熱気もさっきとは段違いだ。飛んできた餅をダイレクトキャッチしようとしてバランスを崩し、将棋倒しになっている人もいる。オレだ。また、飛んできた餅をダイレクトキャッチしようとしてバランスを崩し、餅が入っている袋を後方にぶん投げてしまった人もいる。オレだ。どこかで子どもの泣く声もする。
ゼブラヘッドのライブのような様相の中、着実に獲物をゲットしている人たちがいる。じいちゃん、ばあちゃんたちだ。地面に這いつくばり、普段の動きでは考えらないほどの敏捷さで餅、お菓子をビニール袋に入れていく。餅を掴む手も指を立ててくるので怖い。
そういえば、子供の頃に参加した餅まきでも最大のライバルはお年寄りたちだった。
この餅への情熱はどこから来てるんだ? しょっちゅう喉に詰まらせて死んでるのに。
6s

10分に及ぶ死闘が終わった。ぼくが獲得したのは、餅4個に、カレースナック、マーブルチョコ、コイン型のチョコなどの駄菓子10個のみ。
7s

周りの参加者が持っているビニー袋のふくらみと比べて惨敗と言っていいだろう。勝者であるじいちゃん、ばあちゃんたちはパンパンに膨らませた袋を手に、餅まきが終わるやさっさと会場をあとにしていた。
8s

よし、この借りは午後に行われる後半戦で返そう。そう、餅まきは2回行われるのだ。
14時半に行われる第2部を前に、先ほどの反省を踏まえ二つ作戦を立てた。
ひとつは、強敵であるお年寄りのいるエリアで戦うことはないということ。
もうひとつは、視線を常に地面に置いておくということ。頭上を見上げ、撒き手の手元から放たれた餅の軌道を追っていては、体が餅の方に流されて一瞬の遅れが生じてしまう。それよりなら、一点ポイントを絞り、そのポイントに落ちてきた餅だけを拾う方が確実に釣果は上がるはず。
よし、この作戦で行こう!
餅まき第2部開始時間の14時半になった。会場内のいるのは30人ちょっとか。つい先ほどまで行われていた幼児向けのライブやイベントの名残からか、子ども連れがほとんどだ。第一部では10名ほどいたお年寄りは2、3人ほど。
これはチャンスだ。
餅まきは第一部と同様、幼児とその保護者向けの第一部を終えた後、全員参加の第二部へ。作戦通り、周りにお年寄りのいないエリアに陣取る。
餅が撒かれた!
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足下の半径50センチ周囲をじっと見つめ、中腰になったまま落ちてきた餅を拾う、拾う。作戦は的中し、他の参加者が屈む動作をしたときには獲物はぼくがゲット。欲張って自分からはポイントを移動せずにひたすら待ちの体勢。
ポイントを絞っているだけに、他の参加者の足下といった死角にも目がいく。3歳ほどの幼児とのちょうど真ん中ら辺に落ちてきた餅も躊躇なくかっさらう。スタープラチナのような動きで次々と獲物をビニール袋に入れていった。
撒かれた餅、お菓子の量は第一部よりも多く、餅まきは20分ほどの長丁場になった。頭上で撒き手が「もう、おしまいです」と告げたところで、終了。後半はさすがに息切れしたが、それでも釣果は第1部とは比べ物にならない。ビニール袋の膨らみも他の参加者のを圧倒していた。
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久しぶりに参加した餅まきは、やっぱり楽しかった。これからも都内近郊で開催される餅まきにできるだけ足を運び、ゆくゆくは主催者から「あ、ボニーさんですよね。すいません、今日は素人さんだけの集まりなので、これで勘弁してもらえませんか」と袖の下をもらえるようになるまで腕を磨きたい。
 
 
 
-ヒビレポ 2015年3月31日号-

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