半澤と12人の優しい既婚者 第2回

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プロポーズってどうやってするの?

 
半澤則吉(18号で「病人」を執筆)

 
 
 
優しい既婚者1人目
橋本夫妻
夫30歳 妻30歳
結婚5年目 子供1人(3歳)女児
 
 
【暴れん坊将軍は偉い人だと思う】

 記念すべき1人目の既婚者は地元の友人である橋本夫妻。ゴマンといる既婚者の中から最初に彼らの話を聞きたいと思ったのはほかでもなくて、仲がよいからサクッと話が聞けるだろう、という安易な腹積りからだった。が、それが裏目に出る。何せ十数年来の友人であるし、彼らの結婚するずっと前から友人だ。改めて結婚うんぬんを聞くのはちと小っ恥ずかしい。
 小っ恥ずかしいが、と僕が今企画の話を向けたのはサクサクと甲類焼酎ソーダ割を2杯ほど飲んだ後で、そう場所は彼らの家だった。ところは福島、二本松市。僕の実家から徒歩10分、車で3分の距離にある。楽器で有名な坂が御茶ノ水ならば、家具の坂はこちら竹田坂。昔ながらの家具屋が並ぶ由緒ある街で彼らは新生活をスタートさせた。ついこないだまで東京で働いていた橋本君は娘が幼稚園に入るのを機に実家に戻ったばかりだ。
 福島に戻ってから2ヶ月足らず、夫妻から聞こえてきた言葉はいずれも穏やかで安堵に満ちたものだった。「いろんな人に助けられている」「東京とは違う」。お前、それは田舎の人がいう言葉じゃん、と一丁前に東京言葉を使う僕を横目についこないだまで東京の人だった橋本君とその家族は、早くも福島の言葉に戻っている。しっかりと昆布で出汁を取られた鍋で酒が進む、橋本君は音楽をする人だが料理を生業にしている。鍋のほかに切り干し大根、菜っ葉の和え物と2つも小鉢が付く宴席を僕は知らない。福島では再放送で連日流れているらしい「暴れん坊将軍」の話になり妻、美香さんは「暴れん坊将軍って偉い人なの?」と冗談みたいなことを言う。「暴れん坊将軍」の悪役への対し方が3パターンあることをだけ熱弁し、橋本君は眠ってしまった。肝心の結婚の話があまり聞けず、後日アンケートを実施。ここからはアンケートに書いてもらった内容も織り交ぜて書いていきます。
 

 
【こうきっつぁんという名前の親戚】

 7年6ヶ月の交際期間を経て、彼らが結婚をしたのは5年前。長く同棲していたから「結婚」するということ自体にはまるで驚かなかったが、改めて話を聞いてみると当然ながらそこにはやはり「けじめ」のようなものがあったようだ。
「プロポーズってどうやってするの?」
 というのがプロポーズの言葉だったそう。中学来、長く友人関係があり交際期間も長かった2人だからこそのなんとも素敵なお話。恋人関係を終わらせて家族になる、当然ながらそこには決意や覚悟が必要なのだなあ、そしてそれができるのは大人だなあ、と感心してしまう。よく結婚は勢いだよ的な話を聞くが、間違いなく「腹をくくる」必要があるはずで、改めてそのことに気付かされた。ぼんやりと「結婚」てスゴいことだなと思っていたが決意すること、腹をくくるということが、結婚から縁遠い僕にとってはスゴいことに思えてならない。
 また結婚して変わったことを問うと、橋本君はこんな回答をしてきた。
「『こうきっつぁん』とかそういう親戚が増えた」
 なるほどこれは福島らしいエピソード。『こうきちさん』という素晴らしい名前もさることながら「こうきっつぁん」という独自の音便変化が秀逸だ。こうきっつぁん(こうきっつぁんって、パソコンで打ちにくいなあ)の名が挙がるとは思わなかったが、一家の幸せ具合がなんだか、そんなところからも感じられる。結婚すると親戚も倍増するし、その分新しい楽しみも生まれる。もちろん大変なこともあるだろうけど、生活そのものが濃密になるのだ。
 
【どこかに旅行に行きたいというような気持ちも生まれない】

 東京から福島へ。地元に戻ったとはいえ、その環境の変化は大変だったのではないか。友人としていくらか心配はしていたが、橋本家の新生活はなかなかに順調なようで何よりだった。美香さんの実家も近いので、いろいろなことが格段に楽になった模様。東京時代はとにかく仕事が忙しく、家に帰ることもままならなかった橋本君だが新しい仕事では毎日家に帰れているという。どこかに旅行に行きたいというような気持ちも生まれないほどに、今は家族一緒で日々を過ごすことを楽しんでいるそうだ。なんやかや注目されてしまう福島という土地で幼い子どもを育ててゆくということは、かなり大変なはずで、本当はそこのところを真面目に記事化するのが福島に生まれ育った僕の使命ではあるのだろうけど、橋本家の幸せそうな様子をみるに、改めてそんな話を聞くのもバカらしくなった。福島における・・・というような話を書くのは別の機会に譲ることにしたい。
 
【アドバイスは、なし】

 半澤へのアドバイスは、という問いに、橋本君はこう答えている。
「 結婚に関して言えば、人の助言などは聞かないようにしましょう」
 本企画の腰をいきなりポッキリと折られてしまった格好だが、確かにそれもそうだなあ。恋愛観も状況も人によりさまざまだし、アドバイスできることなどないというのが既婚者の本音かもしれない。だが、今回話を聞くと、婚姻届に保証人の判を押させてもらったほどに近しい彼らの「結婚」にも僕が知らなかったことがいくつもあった。プライベート過ぎる「結婚」という事柄について取材と銘打っていろいろ聞けるのはなかなか面白いので、これから11人の優しい既婚者に会うのが楽しみになった。と、同時に結婚することのスゴさ、ハードルの高さを改めて認識させられました。結婚への決意も心の準備もまるでない僕にとっては(まあ、相手もいないのだけれど)結婚てやっぱり大人がすることに思えてならない。と、この弁がすでに大人ではないなあ。

 今回はうれしいニュースも聞けた。今春から幼稚園に入る愛娘がこの秋お姉さんになるらしい。人の不幸は蜜の味というが人の幸福もなかなかにおいしいものだ、と締めるのは少々優等生過ぎるかしら。
 なんだか飲み足りなくて僕は家に帰ってから2本発泡酒を飲んだ。いつものことだけれど、福島の夜は寒くて、何だかえらく濃かった。良いタイミングで地元に帰れたので福島より幕を開けたが、次回以降は東京に住む人たちに話を聞いていきたい。
 

【今回のまとめ】
プロポーズってどうやってするのか、僕にはまだわからない
 
 
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橋本裕弥 『雪を食べる』
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sominicaというバンドでも音楽活動をしている橋本君の新作はアコースティックながら力強いサウンド。音数少なく、シンプルなつくりだからこそ、その歌詞世界にどっぷりと浸れる。福島に戻り、新章に突入した彼の音楽から目が離せない。新曲と東京での公演が待ち遠しい。
 
 
sominica YouTube

橋本裕弥HP: http://sound.jp/yuya-hasimoto/
ブログ「汚れちまったから染みに」:http://sominica.jugem.jp/
 
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と、このように多くの読者の方を持つヒビレポでいろいろご紹介できますよ! お得感たっぷり。目下、優しい既婚者の方募集しております。何卒よろしくお願いいたします。
 
 
 
-ヒビレポ 2015年4月8日号-

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