MAKE A NOISE! 第56回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

あれこれ無くても良い映画は作れる!

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 やったー! ジャファル・パナヒ監督『Taxi』金熊賞受賞!こういう監督が受賞するのは、ほんとにうれしい。パナヒ監督は、世界的な評価を得ているにもかかわらず、作品の多くが体制批判とされイラン国内で公開禁止、さらには逮捕され、釈放された今も活動の自由が制限されている中での受賞。 
 今回のベルリン国際映画祭にも出席はかなわず、受賞者会見は金熊トロフィーが置かれただけでした。
 
GB 2015B-s

2015年ベルリン国際映画祭受賞者会見で (撮影:著者)

 
 
 
『Taxi』は、パナヒ監督自身が運転手となったタクシーに、隠しカメラを仕込み、乗客を撮るという設定のドキュメンタリー風ドラマです。監督と気づく人あり、運転手だと思い込む人あり、そのあたりで面白くしつつ、イランの今をしっかりわからせます。
 画面は車内と車窓から見える風景のみ。それが、CGとか高感度映像とかのスンバラシイ技術に慣れた目をも飽きさせない。それどころか、映像の可能性さえ感じさせてくれる。ポンとダッシュボードに置かれたバラ1輪で、どれだけ景色が変わることか!
 車内からの画面のみで、どう終わらせるかというのもポイントですが、こう来たかと思わせる見事な締め。
 会話も乗客や車外から声をかける人と、または携帯で交わされるもののみ。それがある種の緊張感を生んでいるし、観る者の想像力をかきたてます。

 上のクリップに登場する可愛らしい女の子は、監督の姪。映画上の設定かと思ったら、授賞式で金熊を受け取ったのがこの子で、ほんとうの姪だったのでした。監督のことを思ったか、スピーチの途中で泣き出してしまい、審査員一同が囲んで言葉をかけてました。
 会見にも出てくれるかと期待するも、夜9時前に終わる授賞式はまだしも、それから始まる会見に子供が出るのは無理か。
 
 ともかくも、パナヒ監督は20年間の映画製作禁止を命ぜられた身で大掛かりなことが出来ないのを逆手に取り、タクシー1台でこれほど素晴らしい映画を撮ってみせた! この受賞に、制約のある状況で映画を撮る人は大いに励まされたと思います。国からの制約に限らずとも、思うように予算がとれないような映画人も喝采を贈ったことでしょう。とすると、ほぼ全ての映画人になりそうですが。映画を撮らない私でさえ、何だか励まされました。

 姿を現さずとも強い意志を感じさせたパナヒ監督でしたが、次回は、強い意志を感じさせる姿でベルリン会見に現れた監督です。

 
 
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-ヒビレポ 2015年4月9日号-

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