レポは日暮れて 第3回

eno
ポンコツ化問題

 
えのきどいちろう
(えのきどいちろう&北尾トロの交互連載)
 
 
 
 トロさん、重要なキーワードを挙げましたね。「ポンコツ化」。あ、テレビを見ないトロさんのために一応説明しとくと、これはお笑い発の用語です。下の者が先輩芸人をいじるときに用いる。代表的な例は有吉弘行がダチョウ倶楽部上島竜兵にツッコミ入れたりする感じですね。これはあくまで番組上のことなので結局、愛情あることなんですよ。有吉さんだって本気でやんなっちゃたら触らないでしょう。

 あ、僕がレポTVやって困ったなぁと思ったことのひとつに、トロさんがツッコミを本気に取って、案外苦にする、というのがあります。わかりやすいのはいっぺん雑誌の企画で金髪まだらにしたことあったでしょ。あのとき「売れないライター」って言ったらマジで苦にしてた。僕はびっくりですよ。だってトロさんは(レポTVではなく、自分の連載)企画でその髪形にして、つまり、自分のマテリアルを材料に笑いを取ったわけでしょ。それはネタなんだから本当のトロさんと関係ないじゃん。

 「ポンコツ」や「情・弱損ズ」も半分はホンイキですよ。半分はホンイキじゃないと面白くない。でも、たまたま出てきたものを利用してネタとかキャラ展開してるだけ。それを苦にされると、あ、そっちは行かないほうがいいんだなと反省します。これね、ツッコミの難しいところなんですよ。かつてコント55号も欽ちゃんがサディスティックにツッコんでドッカンドッカン笑いを取ったのはいいけど、そのうち二郎さんが人気が出て、「二郎さんがかわいそう」って言われだしちゃった。歴史的には欽ちゃんはやがて二郎さんにツッコむのやめるんだ。歌手(前川清とか)や発掘したタレント(わらべとかイモ欽トリオとか)や素人(ネタ応募してきたハガキ)にツッコむようになる。

 で、以下は裏話。先週、トロさんが書いた「ポンコツ化」の話を僕の側から見ていくとね、2012年秋、すごい不安になってたんですよ。僕はレポTVの帰り、電車のなかでヒラカツさんや吉岡さんカナちゃんに何度も尋ねた。「トロさんおかしくない?」「僕の感覚が変わっちゃったのかな?」 僕から見るとトロさんは集中力がガタ落ちなんですよ。トークも粘れない、話も長く聞いてられない。一緒にスタジオトークする人間としてはめっちゃ不安ですよ。とにかくぼくにはアンサンブルが狂った感覚だけあった。まぁ結局、疲れてたんだよね、松本に引っ越して。クタクタだったんだね。


 
 でもね、僕は自分の感覚がおかしい可能性について考えてました。あのね、アーカイブを見るとわかるはずなんだけど、最初、僕はトロさんにネタやらせる方式なんだよね。基本的には「はい」「はい」って間で持ってく進行なんです。トロさんがいっぺんどこかに書いて固めてある感じの(持ち)ネタを、トロさんの順序で話してもらってる。あんまりツッコミ使ってないんだね。トロさんも国分寺時代でコンディション良かったし、「ずーっと持ちネタやってもらって最後だけひと工夫」くらいの感覚で成立してた。

 だけど、この年の秋はこっちにも変化があったんですよ。TBSラジオで『水曜WANTED!』が始まった。僕はけっこう久々にラジオMCとしての反射神経を起こしたんです。これはやっぱりフツーの状態とは違うんだね。「5分先の展開をイメージしながら今のパートの話を続けている」みたいな感じ。ツッコミの感覚も叩き起こした。だからね、僕のほうがおかしくなった可能性があった。僕が戦闘モードにスイッチ切り替えたせいでトロさんが静止して見えちゃうのか。実際、レポTVの進行ってこの時期から変わるんですよ。ぐんぐんアタックが強くなる。

 でも徐々に、あぁ、こりゃトロさんが状態落ちてるんだとわかってきた。『水曜WANTED!』のスタジオ来て、番組中休んでたもんねぇ。僕がレポTVのスタッフと話し合ったのは「トロさんに休んでもらおう」だった。急に老け込んだ。疲れてる。もしかするとどこか具合が悪いのかもわかんない。タイミングとしては最初の山田本作ってた時期でもあるんだよね。で、これはその後、最終的には山田本が完成してテレ玉へプロモーションに行ったとき、僕が前言撤回して「老け込んでる場合じゃない」と言いだすに至るんだけど。

 だけど、5年間の「レポの時代」の併走者として、同じ50代のトロさんの様子は身につまされるものがあった。鏡を見てるわけですよ。「バカって言った奴がいちばんバカ」じゃないけど、「ポンコツって言った奴がいちばんポンコツ」であり、「情弱損ズって言った奴がいちばん情弱損ズ」だ。鏡に映ってるのは自分だからさ。

 僕は個人的にはトロさん高遠の「本の街」企画を引き上げたでしょ。地元の実行委員会の人にシラッと沈黙されるなか、もうできないんだと言ってきた。あれは考えさせられたなぁ。僕が日光アイスバックスの取締役を降りたのは、トロさんの高遠の決断に多大な影響受けてる。いい顔しても無理なものは無理なんですよ。いい顔してるうちに大事な関係まで壊しかねない。昔は何でもできるつもりでいたけど、何でもできるわけじゃないと認めざるを得ない。

 まぁ、だから「レポの時代」は自分の戻るところがどこなのか気づかせてくれた面がありますね。しかし、話は無理するとか無理しないとかそういう辺りをぐるぐるめぐってるなぁ。いかにも「ポンコツ化」というテーマにふさわしい。要は「ポンコツ化」した自分を認める、受け入れる5年間でもあったなぁってことですか。

 但し、それでも僕は吉田拓郎『永遠の嘘をついてくれ』側の人間だからさ、今はまだ旅の途中なんだって思いますよね。そんなね、年齢のことを言ったらこの先、受け入れてばっかりでしょう。僕らはこの5年間、原田芳雄を失い、大瀧詠一を失い、赤瀬川原平を失い、ジョニー大倉を失い、それを受け入れた。そんなもんはね、気に入らないですよ。

 僕はトロさんが猟師になろうとしたり、「将来は何になろうかな」なんて思ってる感じに共感するなぁ。楽天的。楽天的ゴールデンイーグルス。いやぁ、何言ってんだかわかりませんなぁ。

 
 
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2015年4月19日号-

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