MAKE A NOISE! 第60回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

サッカーファンにもお勧め(笑)

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 
 アルゼンチンのサッカーチーム楽屋裏を見せるドキュメンタリー『Fulboy』。そのお披露目がロンドンLGBT映画祭とは、これいかに?
 その答えは「にじみ出るエロティシズムが画面を満たすチームのポートレート」(映画祭の紹介文より)になっているから。
 

 紹介文には「サッカーファンにもお勧め」とも。サッカーチームを撮って、サッカーファン以上にアピールする層があるという時点で、もう不思議。
 観ていくうちに、私の興味は一点に絞られました。どこまで確信犯?

 
 
 マルティン・ファリーナ監督は、弟トマスが選手として在籍していたことで、チームと行動をともにすることを許されます。その特権をフルに活かし、シャワールーム、ロッカールーム、ホテル撮りまくり。
 誰もが見ることのできる試合なんか、撮らない。競技場でさえ、ロッカールームの側から、選手が出て行った後の閉じられた扉を撮り、扉越しに聞こえる歓声を聞かせるのみ。チームしか入れない場所以外は撮らないと、心に固く誓ったかのよう。

 よくあるスポーツドキュメンタリーみたいに、テレビ中継の良いシーンをつなぎ、盛り上げる音楽かぶせてスローモーションで流すなんてことも、もちろんしない。
 結果、サッカーチームを撮りながら、サッカーシーンの少ない、フルヌード込みでやけに選手の裸ばっかりの映画になってます。それなのに不思議と女性向きではなく、ロンドンLGBT映画祭でお披露目された後は、トリノ・ゲイ&レズビアン映画祭でも上映されたようです。

 ファリーナ監督は、これが初監督作。ロンドンがワールド・プレミアだったので、映画祭に顔を出したってよさそうなもの、なんなら選手たちとか、せめて弟でも連れて来たっていいくらいなのに、参加者無しでした。
 なので、どこまで確信犯か問題、勝手に想像すると、監督「みんなの鍛え上げられたボディを使って、とってもジューシーな映画を作ります」、選手たち「エイ、エイ、オーッ!(よーし、がんばるぞ!)」なんてことは考えにくい。
 ひょっとしたら、監督も「みんなの生の姿に迫る」くらいは言ったかもしれない。で、迫りに迫ったら、なぜかゲイ向きに撮れてしまい、LGBT映画祭中心に出品中というところでは?

 映画のオフィシャル・サイトには、「ファリーナ監督の美的選択と視点、観る者の男体への凝視を反映させた映画」とあります。観る者とか言って、こっちのせいにしちゃって、ずるいぞ!
 でも、そうやってハッキリさせないことで、「なんだ、サッカー映画かと思ったよ」なんて、だまされたフリして観に行くこともできますね。そこまで計算済みなら、すごい確信犯かも。
  
 

 今回はLGBTの人が表立っては1人も出てこない変り種LGBT映画でしたが、次回もこれをLGBT映画祭で上映するのかと思った映画です。
 
 
 
 
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-ヒビレポ 2015年5月7日号-

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