MAKE A NOISE! 第61回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

甘い夢は見ない

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 
 今回は前回に続き、表立ってはLGBTの人が出てこない、ロンドンLGBT映画祭参加映画『Girlhood』です。
 前回の『Fulboy』は男体を美しく撮っていてゲイ感満々でしたが、『Girlhood』には女体もレズビアンを思わせるシーンもありません。強いて言えば、女の子同士つるむのが萌え要素になるかな?
 基本は少女が主人公のカミング・オブ・エイジ・ドラマ。もとから好きなジャンルですが、お気に入り映画2つを思い起こさせるシーンまであったよ!
 

 
 
 
 主人公はパリ郊外の集合住宅に住む女の子。母子家庭で、母に代わって妹の面倒をみたりする。ここまでの設定は、フランス、イギリスと国は違えど『フィッシュ・タンク』とほぼ同様。2009年のカンヌ審査員賞受賞作です。
 両方の主人公が住む家も似ていて、日本の団地みたいな四角い建物が連なる集合住宅は、英仏とも低所得者用と相場が決まってるようです。
 女の子たちがそのへんでダンスするのも両作いっしょ。
 

 
 2作が違うのは、『フィッシュ・タンク』の主人公がまだ夢見てるところ。本気でダンサーになろうと思ってるし、母の情夫になついちゃったりで、危ないったらありゃしない。幼さが残る分、懸命にツッパってもいて、その不安定さゆえに様々引き起こしてハートブレーキング。
 主人公を演じるケイティ・ジャーヴィス、尖がり具合から悪態のつきっぷりまで堂に入ってると思ったら、たまたまボーイフレンドとケンカしながら通りかかったところをスカウトされた、言わばホンモノ。

 ホンモノということでは『Girlhood』の女の子たちもそう。主人公はじめ、みんな街中でスカウトされた、とってもリアルな女の子たち。
 こちらの主人公は覚めてます。学校で進学は無理と言われ、そこを何とかと直談判するも無理なものは無理。家では妹2人の面倒をみる生活で、勉強どころじゃない。兄が実質的な家長の位置にいて、暴力振るいつつ、主人公に命令下す。
 それこそ夢も希望も無くなってガックリの状態で学校から出たところに、声をかけてきた女の子3人組とつるみ、楽しい時間を過ごすも、それがどこにもつながらないのはわかってる。盗品で着飾ってのミニパーティーで、リアーナの「ダイヤモンズ」をみんなで歌って踊るシーンのやるせなさ、「ダイヤモンズ」がこんなに哀しく響く歌だったとはリアーナをちょっと見直したほど。
 
 そんな主人公も恋をする。不良少年グループの男の子といい仲になり、その頃には再び行き場も無いことの解決策として、いっしょに暮らそうと言われるのに、あっさり却下。
 その先にあるのが、自分の家のような風景だと予想できるのでしょうけど、ティーンの女の子が、心寄せた相手から将来を語られて、ちっとも心動かないという覚め方に、この子がたどってきた道、そこから抜けたいがためにあれほど進学にこだわったことなど、フラッシュバックしてきます。

 冷や水を浴びせられたというか、若く可愛らしい2人の恋路が瞬時に凍りつくくらいの覚めよう。
 この感じ、『イーダ』でも味わいました。今年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作です。修道院で育てられた少女が、叔母がいることを明かされ、訪ねたところ、自分のほんとうの名前がイーダでユダヤ人であることを知らされる。自分のルーツを探す途中、知り合ったバンドマンとお互い憎からず思う。
 髪の毛をすっぽりと覆った修道女の姿から、髪をたらしたドレス姿となり、たぶん、初めて口紅をひいてのデートシーンは、全編白黒の画面の美しさが一層際立ちます。そして、結ばれ、「いっしょになろう」みたいなことを言われたイーダの答が「それから何があるの」、いっしょに暮らして、子供も作って、と続ける彼氏の言葉に、表情も動かさないイーダ。
 この頃には、イーダは自分の家族に起こったことを探りあてています。彼氏の言葉に甘い夢を重ねられない理由は、『Girlhood』とは全く別だし、時代も描き方も違いますが、ハッピーエンドにするには、恋の成就なんかでは全然足りないくらいのことがあると、思い知った両作でした。
 

 
 『フィッシュ・タンク』と『イーダ』はDVDが出てます。『Girlhood』は、今、あちこちの映画祭を回っていて、ぼちぼち公開され始めた国もあるというところです。
  

 今回、前回と、LGBTの人が表立っては1人も出てこないLGBT映画祭参加作でしたが、次回は逆に、ベルリン国際映画祭コンペに堂々のゲイセックスを持ち込んだ映画です。
 そう言えば、第57回でご紹介の『I am Michael』は2月のベルリン国際映画祭後、3月のロンドンLGBT映画祭でオープニングを飾ってました。映画はLGBT映画祭だろうが世界3大映画祭だろうが境目のない状況、いいことです。

 
 
 
 
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-ヒビレポ 2015年5月14日号-

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