半澤と12人の優しい既婚者 第8回

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サミーズリーゼントに思いを馳せて

 
半澤則吉(18号で「病人」を執筆)

 
 
 
優しい既婚者6人目
星夫妻
夫31歳 妻31歳
結婚5年目 
 
優しい既婚者7人目
大曽根夫妻
夫33歳 妻31歳
結婚2年目 

 
【今回の既婚者は2人です】

 永福町駅で英子さんと待ち合わせをしたのはGWを間近に控えた4月の終わり、天気のよい昼下がりだった。僕の「GW間近」という感覚はどうも間違っていたらしく、出産祝いを買おうとした近所の子ども洋品店が閉まっており、しょうがなくカルディコーヒーファームの紙袋を抱えることになった。出産祝いはいつも困る。誰かとかぶったり、サイズ違いのものを買ってしまっては申し訳ない。だからといってカルディでタイ料理買うのもどうかと思うが。しかも永福町駅にもカルディ発見。ありがたみ半減というやつだ。英子さんと合流し、線路沿いの道を歩いて行く。2月に第一子を出産したばかりの真悠さんの家は駅から10分くらいという。近い近いと思っていても、今日までお邪魔する機会を逸していた。
 思えば3年前、英子さんにお子さんが生まれたときには真悠さんとお祝いに行ったっけ。僕たちは中学の同級生。それぞれ東京で暮らすようになり長いがずっと仲良くさせてもらっている。今回の優しい既婚者は英子さん(星さん)と真悠さん(大曽根)のお二人。二人とも妻として、そしてお母さんとして日々奮闘中だ。
 

 
【旦那はミュージシャン】

 大曽根家に到着、生まれたばかりの長男達之くんとご対面。真悠さんも元気そうでよかった。彼女の旦那さんは結婚式のパーティでしかお会いしたことがないが働きながらミュージシャンとして活躍されていること。僕もたまーに楽器を持つことがないわけではないから痛感するけれど仕事と音楽、両方成り立つなんてそれだけでスゴいっす。なるほどお家の中にはDJっぽいアイテムたちが。ずっと同棲されているというのは知っていたが昨年結婚。そうか、真悠さん、ミュージシャンと結婚かあと感慨深く思ったものだ。というのも、彼女も昔は音楽をやっていたし、高校時代からその音楽好きは広く知られていた。名曲『遠藤真悠17歳』(遠藤は旧姓)は彼女がベーシストとして所属したサミーズリーゼントというバンドのキラーチューンで、表題通り彼女が17歳の時に歌っていたのだけど、いまだ僕らのアンセムとしてつい口ずさみたくなってしまう。真悠さんが17歳でないことは知っていたが、そうか姓名も変わったということはいまだにちょっと慣れない感じがある。
 音楽を通し出会ったという旦那さんとは本当に仲が良く、共通の友人たちも気遣ってくれ子育てへの理解も厚いとのこと。同棲期間が長かったこともあり「結婚」という感慨は薄かったというが、出産は大きかったと真悠さん。なるほど、ママ歴数ヶ月なのにもうすっかりお母さん感がある。なおさら出産祝いがカルディでは申しわけないわ、美味しいけど、美味しいんだけど。温かな陽光の中、赤ちゃんをあやす様子を見ているこちらも幸せな気持ちになった。
 
【家族はチーム】

 僕の横で仲の良い同級生として、そして先輩ママとして真悠さんにアドバイスを送る英子さんは母親になってもう3年。もうママ経験値がスゴい。3年も母であり続けると、こうも言葉に説得力と重さが伴うようになるのだろうか。もともと理路整然と話す人だったけれど、久しぶりに会ってもその日本語の上手な使い方は衰えてないなあ。
 英子さんのご実家は、僕の実家から徒歩で2分くらいと驚くほど近く、彼女が黒歴史と語る高校時代にはよく駅からの道を一緒に帰ったものだ。(あの時間が黒歴史だったわけじゃあ、ないよ)結婚式の二次会幹事をお願いされた2010年秋のことを僕はよく覚えている。真悠さんも含め新郎新婦の友人が集まり結婚式二次会の段取りを考えた。準備もパーティも本当に楽しかった。新郎が男たちに担がれて登場、絵のうまい友人のライブペインティング、最後はサプライズ的な合唱、と手作り感満載ながら夫妻の人柄がよく出たものすごく温かい会だった。あれからもう4年以上経過したのかと思うと驚くほかない。その間に英子さんはお母さんになり、慌ただしくも楽しい毎日を送っているようだ。
 この日英子さんが話していた言葉で特に心に残ったものがあった。
「どこの家族も参考にならない」
 他の家族からいろんな話や情報を聞くけれど、意外とマネできることは少ないという。なるほどそれが家族というものなのだろう。人間一人でも他人を参考にできないのに、家族ならば尚更だ。後日書いていただいたアンケートで彼女は、家族は「チームのようなもの」とも言っていた。なんて美しい言葉だろうと思った。お互いに尊重し合う。僕が言葉にするとなんだか薄っぺらいが、それができているからこそ実家から遠く離れた東京の真ん中で共働きで子どもを育て、立派なお母さん、お父さんをやっているのだと思う。(ちなみに英子さんの旦那さん恵晃君はカープファンで競馬通とおそろしほど僕と話が合う。ぜひ次は球場か中山競馬場でお会いしましょう!)
 一方、仕事に関しては違う考え方もある。真悠さんは出産直後ということもあり今は休職中だが将来的に外で働かなくてもよいのでは、と旦那さんが言ってらっしゃるとのこと。それはそれで素敵な話だと思った。真悠さんは仕事も好きなのでウェブで何かできればとも思っているそう。今っぽくて格好よいなあ。以前に比べ、家でも仕事ができる環境は飛躍的に増えたし、主婦のプチ副業とか流行っているっていうし。結婚や出産を理由に女性がキャリアを手放さなくてよい世の中になればいいなあ、それは男の人にとっても絶対プラスなはず、と真面目に書いてしまったなあ。ヨッ、社会派ライター。その状況をつくるうえでも家族はやはりチームでなければならない。みんなそうやって生きてるのか。スゴいわ。
 
【二本松の血】

 お互い結婚もしているし頻繁に会っているわけでもないのに、英子さんと真悠さんには大きな共通点が!
「私もそうそう」
 と2人がはしゃいだのは子どものあやし方だ。「ワッショイワッショイ」と言ってあやしてあげると泣きやむのだという。2人の共通点であり、ご子息の共通点でもある。
 僕らの出身地福島県二本松市には「ちょうちん祭り」という盛大な祭りがある。知らない人は今すぐググって欲しいが日本三大ちょうちん祭りとして有名だ(他の二つが何かは忘れたけれど、ググる気はない)。このお祭りではワッショイワッショイというかけ声に、街中が祭りに酔いしれる。祭りのその三日間(10月4〜6日)だけのために皆生きている。遠く離れて暮らしていてもキンモクセイが香り出すと気持ちが穏やかでなくなるし僕はいまだに祭りの夢を見るほどだが、二人の子どもにも同じ血が流れているんだな。普段僕は東京で暮らしているという実感をあまり持たない。というのはもう十数年も東京暮らしだから当然ではあるのだけど。でも地元の人と地元の話をすると、ああ東京にいるのだな、と感じてしまう。いや違うな。「東京にいるのだな」ではなく「二本松にいないのだな」が正しい。多分にセンチメンタルな感情をはらむが、そう感じられる郷土に生まれたことは幸せだし、僕も子どもをワッショイワッショイとあやそうと思った。地元を出た者が偉そうに語るでねえ、と言われるに決まっているがやはり地方が、地方の祭りが元気でなければな、と強く思うな。ヨッ、社会派。
 筆の力がないのだと思う、単純にそう感じる。あの日、永福町の午後、とても楽しい時間を過ごしたし、勉強になった。それを書きたいと思って今回は既婚者2人にご登場いただいたけれどどこまで伝えることができただろうか。僕は永福町から家に帰って、夜中まで仕事をした。コンビニかどこかで適当に飯を買ってきて、適当に食べて二人は今頃夕飯をせっせと作っているのだろうなと想像した。僕らはもう17歳でもないし、二本松にもいないのだなあ。それでも生きていかないといけないし、僕は独身だけどもろもろ問題だらけだし、彼女らもそれぞれ大変なことも多いだろうなあ。と、感傷的な文言を並べながら『遠藤真悠17歳』を口ずさむ。最後のところの歌詞(つうかセリフ)は何だったろう。はっきり思い出せないが、こりゃあ良い曲だ。
 
 
【今回のまとめ】

カルディで売ってるポロショコラは本当にうまい。

 
ph1

生まれた時からもみ上げがあったという大曽根家長男達之君。
しっかりした顔つきで男前感がすでにありました、また永福町にうかがいます

 
ph2
赤ちゃん時代から端正なマスクだった星家長男こうき君。
もう3歳ですか、今度はドーナツを持っておじさんは会いにゆくよ

 
 
 
-ヒビレポ 2015年5月20日号-

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