レッツゴー!町中華探検隊 第8回

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町中華コレクション事始め!

 
下関マグロ
(北尾トロ→下関マグロ→増山かおりの輪番連載)
 
 
 
 
 町中華探検隊員になる以前、散歩の途中などに町中華の店舗を撮影していた。それは、いつ頃からだろうかと、あれこれ思い出してみたんだけれど、1996年の明大前の町中華ではないかということを思い出した。家から少し歩いたところにあった町中華の日替わりへ定食がおいしくて通っていた。女将さんと顔見知りになり、その頃、かなりの肥満だった僕は「ダイエットしたいんだけど、カロリーの低い定食って作ってくれませんか」とお願いしてみた。女将さんは、快く作ってくれた。野菜多めで、油の少なめの定食だった。以来僕は、お昼にその町中華に通い、作ってもらった特別定食を買ったばかりのデジカメで毎食撮影していたのだが、その画像、パソコンのなかを探してもないのだ。で、パソコンに保存してあった次に古そうな画像はこれだ。
 
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1997年6月7日に撮影した「珍萬」さん

 

 
明大前から四ッ谷の若葉町に引っ越した。そのとき一番近くにあった飲食店が「珍萬」さんだった。珍しい名前だなと思いながら、なかなかお店へカメラを向ける機会はなかった。珍萬の定休日が日曜日で、誰も店にいないからシャッターを切ったのだと思う。この日の他の画像はみこしなど夏祭りの様子が写っている。地元の夏祭りだったのだろう。珍萬さんもそんな飾りがしてある。場所は新宿区若葉3-1。

若葉町の真ん中を貫く、谷底のような通りにある。通りは昔、川が流れていて南に行くに従って低くなっている。その先はかつては鮫河橋といわれたところで、江戸時代から明治のはじめにかけてはスラム街だったそうだ。

僕が住んでいた場所は近所に食べ物屋が少なかった。一番近いのは珍萬。それから寿司屋があった。さすがに寿司屋はなかなか行けなかった。珍萬の先には、丸正のお惣菜売り場があった。ここで、揚げ物やサラダを買ってきて家でご飯を炊いて食べたりした。丸正の先にはとんかつ屋があった。人とご飯を食べるときはここへ行った。おおよそ、それぐらいが近い飲食店だった。あとは、四ツ谷駅周辺へいけば、いくらも店はあるが、駅方面は登り坂になっていて、つい出かけるのはおっくうになり、近場ですませることが多かった。

珍萬はとても狭い、カウンターだけの店でお昼時はいつも満席だったが、少し時間をずらせば、たいてい空いていた。だから、昼すぎくらいに行った。ほとんど口をきくことはなかったけれど、かなりの頻度で行っていた。自分の町中華の歴史で言えば、かなり通った店になると思う。メニューのほとんどを食べたのだけれど、ここでいちばんおいしいのは、餃子だった。次においしいのはチャーハンで、だいたい炒飯と餃子という組み合わせを食べていた。

最初にここの餃子を食べた時、自分の好みじゃないなと思った。僕は皮にはパリっと焦げ目がついて、サクッとしたほうが好きだった。ここのはニュルッとしているのだ。しかし、不思議なことにまた食べたくなる。かなりの頻度で餃子を食べていたのだけれど、若葉には2年ほどいて、その後、同じ四ッ谷の本塩町へ引っ越すことになった。

引っ越しの前の日、珍萬に行き、餃子を食べた。それまでろくに口を利いたことがなかったけれど、その時、「ここの餃子はおいしいですね、何か作るコツみたいなものあるんですか?」と女将さんに聞いてみた。女将さんは笑いながら「何も特別なことはしてないんですよ。ただ、注文があってから餃子の皮を包むんですよ。おいしいとしたら、それぐらいかしら」とおっしゃる。なるほど、そんなもんかと思った。さほど遠くに引っ越したわけではないけれど、以来、一度も珍萬には行っていない。ということで、この原稿を書くために行ってみた。
 
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2015年4月23日の「珍萬」さん。
さすがに昔に比べてデジカメの性能もよくなっているが、上の看板は変わらない。

 
時刻は午後2時半。まさに昔もこういう時間にきてたなぁ。ご夫婦でやっていらっしゃるお店で、女将さんは一段落したのか外で近所の方と話し込んでいる。店に入ると、懐かしいおやじさんの顔。先客が1名。カレーそばを食べている。うまそうだな。メニューなど見ずに「餃子ください。それにチャーハン」と注文。

それから、ゆっくりメニューを眺める。うーん、昔とは変わったような気がする。
 
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携帯電話使用禁止と大きく書かれているメニュー

 
もし、町中華探検隊として初めてこの店にきたなら「お得なセット」と書かれているものあたりから注文するのだろう。しかし、今回は焼き餃子500円とチャーハン650円という千円超えのお大尽注文をしてしまった。たぶん、昔は1000円以内だったような気もする。餃子にご飯並でもよかったか。少々後悔しながらも、先に出てきたのがチャーハン。
 
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珍萬さんのチャーハン 650円

 
旨い。チャーハンにしてよかった。けっこう薄味だ。シンプルな卵チャーハン。しかし、こんなにおいしかったっけ。しっとりとパラパラの中間くらい。わしわし食べる。おっつけで、餃子登場。
 
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珍萬さんの餃子 500円

 
あー、これこれ、このルックス。パッと見はカリッと焼きあがっているように見えるけど、持ち上げてみるとそうもない。食べてみると、肉汁あふれるタイプでもなくて、どちらかというと、皮に餡の旨味が染みだしているかんじで、食べるとニュッルッというかんじ。ニラがけっこうきいていておいしいんだよねぇ。たぶん、こういう店って、本当に近所の人しかこないような店なんだけど、旨いところは旨いよね。

先客の方がお会計して出て行ったので、20年くらい前に近所に住んでいてよくきていたんですよ、ってなことを話すと、おやじさんも笑顔で、「へえ、そうかい、じゃ、あんたもずいぶん若い頃だ」とうれしそう。「そうそう、斜め前に今はサンクスがあるけど、前は酒屋でしたね」。「そーだよ、もう、店はずいぶん変わっちゃったよ。あそこのお寿司屋さんもなくなっちゃったし」「えっ、あそこのお寿司屋さんなくなったの」というような昔話に花が咲き、けっこう時間が過ぎた。たとえば、店名がなぜ「珍萬」なのかとか、創業はいつなのか、なぜここで創業したのかは聞けずじまい。うーむ、しかたがないので「またきます」と店をあとにした。ぜひ、探検隊のメンバーと再訪問したい店だ。
 
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2015年5月23日号-

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