レポは日暮れて 第8回

kitao
秋吉久美子さんありがとう!

 
北尾トロ
(えのきどいちろう&北尾トロの交互連載)
 
 
 
 レポ創刊時の2010年は、電子書籍が市場を席巻すると騒がれた年でもあった。kindleが発売になるとか、そういうタイミングだったのかな、”黒船来襲”なんて見出しが躍っていた。だめなものはいずれ駆除される。あの騒ぎ方は出版界が「おれたちコンテンツ大量に持ってるもんね。チャンス到来だね」と喜んだのではなく、自らを古くてだめなものと半ば認めたようなものだった。現場はさほどうろたえてない印象だったが上のほうが「大変だ〜」ってなってたんじゃないかな。その捉え方は、紙の本VS電書一点張りで、営々と築き上げた領土を、新興勢力に脅かされそうになってうろたえている図式だから、どうしても”紙の本を守れ”というスローガンになってしまう。

 そういうことなら、紙の雑誌をやるのには最適な時期だ。本当に電書の時代が到来するならば、5年後に雑誌を立ち上げたら、それこそ古臭さが充満したものになる。新創刊なのにすでに懐かしいなんて嫌だ。書籍ならいざ知らず、ネットマガジンでうまいことやってるところはなかったし、やるならいま(2010年)だと一歩を踏み出したのだった。ネットマガジンのいいやり方を思いついていたらそっちでやったかもしれない。

 雑誌はね、いつかやってみたかったんだよね。いろいろと理屈をつけることはできるけれど、結局のところそれに尽きる。この調子じゃ思ってるだけで終わるぞと。それはどうなんだと。といって、フリーペーパーや同人誌はなんかヌルい感じがして気が進まん。何やってんのと尋ねられたときに「雑誌」と答えたい…それはそれでミーハーなんだけどね。でも、雑誌育ちの自分としては他の選択肢は考えられなかったなあ。


 
 雑誌読み始めたのはいつからだろう。マンガ誌や学年誌、親に買ってもらってた『スクリーン』を除けば、小遣いで買うようになったのって東京きて(高校2年)からだと思う。筒井康隆のファンだったから、おそらく『SFマガジン』が最初だ。『ミステリマガジン』もよく買った。そのうちに『ぴあ』が出たのかな。

 当時、ぼくは秋吉久美子の大ファンで、名画座巡りの任務が最優先。つぎがポスターや活字資料の蒐集。久美子関連の記事があれば『週刊プレイボーイ』から『シナリオ』『映画芸術』まで買わなきゃなかなかったから常にピーピーなんだよ。

 そんなわけで、他の雑誌は吟味を重ね、どうしても欲しいときしか買えなかった。匂いはするけど内容についていけない『宝島』は立ち読み専門。FM雑誌もこの頃か。『やんろーど』や『面白半分』『奇想天外』なんかは、そういうの置いてある喫茶店があって、もっぱらそこで読んでいた。

 その後、大学生になるとたくさん雑誌を買うようになる。親元を離れたのでエロ雑誌も買いやすくなった。『絶体絶命』『ぱふ』『突然変異』『Heaven』、セルフ出版のやつとかいろいろあったなあ。雑誌おもしろい、雑誌は自由。どんだけ読んでも飽きない。

 だから雑誌好きになったのは大学時代からだと思うのだけど、雑誌への憧れを抱いたのは、買いたくても買えなかった高校生時代のものだと思う。書店通いの習慣がついたのも、雑誌を片っ端から点検するようになったのも、秋吉久美子の記事探しから始まったんだ。単なるファン行動なんだけど、そうやって雑誌に触れていったのだ。

 そうなんだよ。秋吉さんのおかげだったんだ。

 ライターになって以降は、ありふれた言い方だけど、雑誌に育ててもらった。書く場を与えられたのは、いつも雑誌だった。レポをやるとき、素人や若手ライターにじゃんじゃん書いてもらおうと考えたのはそのためだ。今度は自分の順番だって。情弱ですからね、
電書がメインになったらやりたくてもできないぞと。

 それとは別に、順番としてやっときたいことがあった。僕たちの先輩にあたる書き手を引っ張り出すことだ。レポで第2号から『Mの東京時間』を連載する森脇みきおは、『Doll』『ZOO』の編集長だった森脇美貴夫だ。雑誌や音楽評論から引退していた”憧れてた人”に、引退?ふざけんじゃねぇ〜、だったら音楽以外のことを書け〜と頼んで苦笑された。

 ずっと闘病中の森脇さんは編集部に来ない。原稿は手書き。手焼き写真もあるので直接受け取る。「レポは大丈夫なの?『Doll』の初期はね」、貴重な経験談を聞けてぼくは幸せだ。受け取った原稿はヒラカツが一字一字入力する。手間のかかるその作業について愚痴を聞いたことはない。「森脇さん、いいですよ」とヒラカツはいつもうれしそうだ。「体調いいのかもね」「だといいですね」。そんな会話をするとき、ぼくもヒラカツも幸せだ。
 
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2015年5月24日号-

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