半澤と12人の優しい既婚者 第9回

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歌のうまいジャイアン

 
半澤則吉(18号で「病人」を執筆)

 
 
 
優しい既婚者8人目
鈴木夫妻
夫31歳 妻31歳
結婚5年目 
 
 
【輝かしい系譜】

「恋と書いたら、あと書けなくなった」
とは『斜陽』の一節で、僕が一番好きな文章かも知れない。
太宰治の丁寧で繊細な手つきと巧妙なストーリーテリングがこの一文に詰まっている。が、僕もまさにその状況にある。

ジャイアンと書いたらあと書けなくなった

 今回の優しい既婚者は鈴木潤君、幼稚園からの同級生で中学校3年間は同じクラスだったし部活も一緒だった。かなり親しい友人の一人だが、彼のことを考えると僕は自然、藤子・F・不二雄作品を思い出す。
 一番わかりやすいのがジャイアンにブタゴリラ。あとはオバQのゴジラだろうか。そう彼もこの系譜、絵に描いたようなガキ大将キャラなのだ。というようなことを彼の結婚式スピーチで述べさせてもらったところ本人は納得していなかったが、今でも僕はそう思っている。それ以上によい説明の言葉が見当たらず、ジャイアンと書いたらペンが止まってしまった。

 と、何とも失礼な物言いだが、これらのガキ大将たちは皆、情に厚い。潤君も負けじと豊かな感受性を持ち、友達を大切にする男だ。今回は家族で上京するとの連絡をくれ、久々に会うことになった。
 


 
【悠長な大阪弁】

 数年ぶりの再会となったが元気そうで何よりだった。彼は結婚を機に故郷を離れ大阪に引越し奥さんの千春さんと暮らしている。今回は旦那潤君像を聞き出すべく、千春さんにアンケートに答えてもらった。その回答も参考に二人の結婚について書いていこう。
 プロポーズは2010年の元旦、眠りにつく直前だったという。自然とサラッと「結婚しようか」となったのだそう。当時交際していたのは僕も聞いていた。
「ここで告白したんだ」
 と、潤君がうれしそうに語ってくれたことを覚えている。当時はまだ我々も20代前半か、恥ずかしいわ。
 その後遠距離恋愛の末にご結婚となったわけだ。まさか潤君が地元を出ることになるとは思わなかったからびっくりした。しかも大阪!
 潤君のガキ大将らしいエピソードのひとつだが、中学校の頃「ガキ使」のトークのコーナーを見逃しただけで怒られた記憶がある。若い時から松本人志に傾倒していた彼が関西の言葉をペラペラ話せるようになるのに、そう時間はかからなかった。数年前に一度お家に泊めてもらったことがあるが、その悠長な大阪弁には驚いた。大阪で仕事をみつけ妻帯者となった彼はなんだかとても頼もしかった。
 千春さんの言葉を借りれば
「お互い付き合うなんて、結婚なんて想像していなかった」
 というが、ガキ大将を地元からひっぺがすだけの恋の力、結婚の力があったのは事実で、それはこスゴいことに思える。
 

【妖怪ウォッチの歌】

 結婚の力はスゴいと思える点は他にも。転々、というわけではないにせよ職を変えることも少なくなかった潤君が同じ職場でずっと働いているというのも、ごめんちょっと驚いた。自分のためではなく、誰かのためとなるとやっぱり違うんすね。しかも今は家族も増えてやる気まんまんのよう。そう、もう潤君がお父さんになって1年数ヶ月になる。子どもの存在は大きいと千春さんは語ってくれた。
「ものすごく子煩悩で一に息子、二に息子、三四も息子、五に私」
 最初に述べたようにとにかく潤君は情に厚い男だ。今回初めてご子息の叶我君に会ったが、二人の愛情を受けて育っていることがよくわかった。僕は一フレーズも歌えない「妖怪ウォッチ」を歌って息子をあやす潤君に思わず笑みが漏れる。中学時代には松山千春のモノマネを自分のものにしていた彼の歌う妖怪ウォッチもまた、聴き応え十分だった。もともと、子どもをあやすのがうまいのだろう、まるで違和感のない父親っぷり。奥さんの千春さんが保育士として活躍されていたこともあり、子どもとの対し方が本当に様になっている。2人の子どものかわいがり方は何とも素敵に見えた。何より叶我君が僕になついてくれよかった。(ここ数年、周りでは女の子の出産が多く小さい女の子受けの悪さに自信を失くしていました)
 

【いざ、新天地へ】

「んで、なんで東京来たの?」
 会うまで何のための上京か聞いていなかった僕は当然の疑問を家族に投げかけた。地元福島で結婚式があったという。なるほどね、仕事も順調そうでよかったわ、となんとなく口にしたが潤君から衝撃的な返答。
「仕事は辞めたわぁ」
えー??
「九州に行くんや、大分に」
えー??  聞けば千春さんの実家のある大分に家族で引っ越すのだという。大阪に行くわ、と数年前に言われたときも突然だったが今回も僕にとっては晴天の霹靂。近く関西観光にでも行こうと思っていただけに残念だったが、九州に友人ができるというのもうれしい。千春さんいわく、0歳児から保育園に預け共働きをしていたこともあり、もっと息子の近くにいてあげたいという気持ちが強かったのだそう。そこで潤君から
「実家に近い方が子育てする環境がいいやろ」
と優しく後押ししてくれたのだという。さすが潤君と思った。こういう温かな言葉をさらっと言える男なのだ。映画の時のジャイアンが男前で優しいことを僕は知っている。そして2人とも仕事を辞め無職に! なかなか勇気あるなあ。自堕落な生活を送っている僕にはとてもできた選択ではありません。それでも千春さんは
「毎日がとっても楽しい」
と現状の幸せさがにじみ出る言葉を述べてくれた。「明日の予定はハローワーク」というメールをくれたが、それもなんだかとても楽しそう。2人ならば新天地でもうまくやっていけるに決まっている。
 ふと中学校の卒業アルバムを思い出している。今手元にないので本当に記憶だけで。クラスメイトのアンケートでランキングにするみたいな、ちょっとえげつない企画があった。「早く結婚しそうな人ランキング」みたいなのがあり、潤君は確か上位だったなあ。あれは言い替えればモテる男ないし、モテそうな男ランキングだよなあ。それをクラス全員に堂々投票させるとは恐ろしいわ、義務教育。ちなみに僕は「長生きしそうな人ランキング」において1位に大差をつけららえての2位だったことを覚えている。ランクインしたのはそれだけ! 中学生ながらちょっとキズついたわ。なるほどまだ結婚できないわけだわあ。レッツ! 長生き!
 一頻りお酒を飲み、潤君一家と分かれてから、あ、カラオケ行けばよかったと思い至った。金のないスネ夫を自称する(それじゃタダのいやなヤツじゃん)僕にとって潤君は永遠にジャイアンであり続けるけど、本家ジャイアンと違い歌がうまいのだ。久々に松山千春も聞きたかったなあ。大分は大阪とも言葉が違うのだろう。今度彼に会った時、ネイティブな大分弁を聞けることを楽しみにしている。
 
 

【今回のまとめ】

そうか、世のお父さんは妖怪ウォッチの歌を歌えるのか。僕は歌のタイトルすらわからない

 
ph1

潤君の幼少期の面影を確かに感じる叶我氏

 
ph2
素敵な写真ですね。大分にも遊びにいくわ

 

 
 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2015年5月27日号-

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