MAKE A NOISE! 第63回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

若い時に決定、歳とったら順守

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 
「若い時分に決めたことを、歳をとったら守っていく」という結婚45周年を迎えた夫のスピーチは、パーティーの招待客には心温まる良い話。長い年月を添い遂げた秘訣ともとれる。だが、妻には…。
 場に合わせ笑顔を作っていた妻が、衆目から離れた後に見せる表情、そのラストワンシーンが焼きつく『45 Years』。
 
 始まりは、45周年パーティーを間近に控えたある日、夫に届いた手紙。はるか昔、登山中に行方不明になっていた昔の恋人の遺体が、雪山で見つかったという知らせ。
 エベレストで見つかったジョージ・マロリーみたいだなあ。75年も経過しているのに、真っ白な背中がみずみずしくて、驚いた。天然冷凍保存で、きっと、恋人も若い日のままなんだろうなあ…ということを、夫婦ともども考えているふう。
 自然と、青年期、いっしょに山歩きした恋人への思いに浸る夫、その思い出を明かそうと昔の写真など探し出し、疑念を募らせる妻。彼女が死ななかったら、夫が結婚したのはそちら?
 そうして迎えたお祝いの日の「若い時分に決めたことを、歳をとったら守っていく」という言葉。言う夫と聞く妻、それぞれの思いを、穏やかな老夫婦としての抑えた演技からにじませて見せる妻役シャーロット・ランプリング、夫役トム・コートネイの御両人は、長い俳優歴の中でも最良と思える名演で、揃って銀熊賞(それぞれ女優賞、男優賞)獲得!
 
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シャーロット・ランプリング&トム・コートネイ
 2015年ベルリン国際映画祭(撮影:著者)

 
 
 
 心中には激震が走っているであろう夫婦の日常が、淡々と描かれます。バックミュージックで盛り上げることもせず、音楽は夫婦が聞くレコードの音など流れるのみ。
 余計な装飾無しで、丹念に老夫婦の感情の揺れを拾い上げて見せたアンドリュー・ヘイ監督は、長編映画がこれで3作目のイギリスの新鋭。ヘイ監督の名が轟いたのは各国で様々な映画賞をさらった長編2作目の『Weekend』でした。ゲイ男性2人の出会いから、もう2度と会うことがないかもしれない、それぞれの生活に戻っていくまでの間を描いたもの。微妙な心の動きを捕らえているのはいっしょですが、『45 Years』はかなり渋い映画なので、出会いのトキメキがある分、『Weekend』の方が面白く観られるかもしれません。
 

 
 ヘイ監督は、長編監督デビューも『Greek Pete』という男娼を主人公にした映画だったので、ゲイ映画専門の監督かと思ったのですが、こだわりなく、描きたいものを撮る監督のようです。

 ところで、『Weekend』は心理描写もさることながら、ご覧のように映像も良し。朝のクリスプな空気まで写すような自然で雰囲気のある映像はウラ・ポンティコスによるもの。 
 『Weekend』ではディナール・ブリティッシュ映画祭コダック賞にノミネートされたポンティコスが、サンダンス映画祭映像賞をとったのが第28回でご紹介の『Lilting』で日本公開中!『追憶と、踊りながら』というこっ恥ずかしい邦題に負けず、観に行ってくださいませ。そこまでセンチメンタルでもないですよ。ご紹介した時には無かったトレイラーをつけておきますので、ポンティコスの映像を再度お楽しみください。
 

 
さて、皺、白髪も様になってたランプリングは、会見での媚びの無い受け答えもかっこよかったですが、次回は、この人のかっこよさの秘密はこれだった!を見つけてしまった(と思う)俳優さんです。

 
 
 
 
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-ヒビレポ 2015年5月28日号-

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