私とタカラヅカの日々 第8回

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トップ・オブ・トップのラストデイ

 
高橋ユキ
(第17号で「ヤラセ騒動に巻き込まれてしまいました。」を執筆)
 
 
 
 宝塚歌劇のHPにはそれぞれのタカラジェンヌさんのプロフィールが掲載されています。たとえば私が最近気になっている礼真琴さん(歌がむちゃくちゃ上手くて何と言っても華があります!!!)のページを見てみますと「愛称」という項目があり、礼真琴さんでは、まこっちゃんとか書いてあります。これは芸名にちなんだものや本名にちなんだものだったりします。タカラヅカのファンはジェンヌさんのことを愛称で呼ぶことが多いです。柚希さんは、本名にちなんで、ちえさんとかちえちゃんとか呼ばれていました。5月10日の東京宝塚劇場千秋楽をもって宝塚歌劇団を退団された柚希さん、朝ドラ「あまちゃん」最終回以降、あまロスという言葉が生まれたように、今(本原稿執筆時の5月下旬)私は目下、ちえさんロス状態です。この日の入り待ち・出待ちのファンの多さが話題となり翌日以降にワイドショー等で取り沙汰されましたが、そんな放送を見るだけで泣けてきたり、また寂しさから過去に録画した柚希さん出演番組や、所有しているDVDなんかを眺めていると自然と涙がこぼれてきたり…一体私はどうしてしまったのでしょう…!!!!

 今回はそんな千秋楽当日の様子を綴ってみたいと思います。ラストデイと呼ばれるこの日は全国の映画館や宝塚バウホール、さいたまスーパーアリーナ、さらに台湾の映画館でもライブビューイングが開催され、ものすごいことになっていました。できれば劇場で、生で最後の柚希さんのお姿を拝見したかったのですが、千秋楽のチケットがありえないぐらい高いのです! 20万円とかはザラ、ヘタしたら50万円とかで売りに出されていて、そんなもん小市民には買えません。なので家から近いTOHO渋谷でのライブビューイングチケットを取りました。ただそれも抽選にはあっけなく外れ(ここまで外れる事もそうそうないです、柚希さんの人気ぶりを実感します)、チケット売買サイトでなんとかゲットしました。入り待ちに行こうかどうかというのも悩みましたが、すごい人数になるという噂があったので、凄まじい人ごみの中に息子(2歳児)を連れて動き回るのはかなりの困難が予想されあきらめました。でも、いまはすごい良い時代です。入り待ち・出待ちをされたファンの方がそのときの様子をなんと写真つきでSNSに投稿してくれているのです!!! 晴れ渡る空の下、純白のスーツにゴールドの靴に身を包み、ドアがウィーンと上にスライドして開く、なんだか未来的なカッコいい車に乗って現れた、柚希さんの入りの様子をSNSで知る事ができました。愛に溢れたヅカファンに感謝しまくりです。


 
 家で準備や家事をしながらひとしきり入りの様子をSNSでチェックしたのち、ようやくライブビューイング会場へ。最後の勇姿をライブビューイングでリアルタイムに共有する事ができるなんて、本当に良い時代です…。ようやく始まった最後の公演ですが、最初の登場で、あぁ…ついに終わりの始まりが来てしまった…とか、もうこれで本当に最後なんだ…とこみ上げてきて早速泣きました。ミュージカルの「黒豹の如く」は、やはり最後ということでアドリブもけっこう多め。前回も紹介した英真なおきさんは、旅立つトップを激励するような言葉を、しかもストーリーに違和感がない感じで盛り込んで来るという絶妙なアドリブをかましてきて、泣きました。ただ私は常日頃から、物事を冷ややかな目で見すぎてそれが鼻につく、という夫からの指摘を受けているのですが、この日もそうでして、あまりにもストーリーがトップの旅立ちにリンクされすぎていることから、もうひとりのそんな醒めた自分が出てきて、そこまで号泣っていうことでもなかったです…。しかしショーの「Dear DIAMOND!」は、さきほどの醒めた自分もどこへやら、な感じでうっかり涙を流しすぎて顔が腫れてしまうほどでした。「黒豹」のようにストーリーでトップの退団を彷彿とさせなくとも、ショーの合間に時折繰り出されるジェンヌさん同士のハグやら一瞬のアドリブなど、そんなところから星組の皆さんの、送り出す方、送り出される方、それぞれ抱える色々な思いを(超勝手に)想像してしまい、こっちのほうが自分はこみあげるものが多かったです。特に、二番手といわれる紅ゆずるさん、三番手といわれる、今回の千秋楽後に星組から宙組へ異動(っていう漢字で合ってるのか分かりませんが)になってしまった真風凉帆さん、そして柚希さん、この3人が登場する場面ではついつい涙もろくなってしまいました。ひとりは外の世界に旅立ち、ひとりは別の組に行き、もうひとりは組に残る…つまりこのお三方をお三方として見れるのはもう最後、それぞれが違う道を歩むのです。またとくに紅さんは終始笑顔で、なんか笑顔過ぎるくらいの笑顔でショーに臨まれており、そこがまた、色々想像してしまって…紅さんが真風さんにハグするアドリブ?的なものを目の当たりにしたときも…と書きながら泣きそうなのでこの辺にしておきます。。。

 これまでの公演ではこのミュージカルとショーで終了でしたが、この日は「サヨナラショー」があります。この日をもって退団される柚希さんや、他の星組の方の紹介をはさみ、間髪入れずショーがスタート。これまで柚希さんが出られた舞台や武道館ライブで歌った歌などを中心に構成されていて、往年のファンも私のような新規のファンも楽しめる作りになっていました。退団挨拶で柚希さんは、努力した先の喜びを知ったから精進し続けることができた…みたいなことをおっしゃっておられましたが、6年間トップとして君臨し100周年を盛り上げてきた方が言うと重みが違います。私もまだまだ努力が足りない、と痛感させられました。また柚希さんの作詞した歌のひとつに、わたしの夢はひとりでも多くの人に宝塚を知ってもらう事、そして深く愛してもらう事…みたいなセリフがあるんですが、確かに私のような、何にもタカラヅカに興味がなかったような、しかも演劇とか大嫌いだった人間をハマらせてくれた柚希さんは精進し続ける事で夢を叶えてきたのだなぁと素直に感動しました。このたびタカラヅカに興味を持ってから、わりと柚希さんファンと知り合う機会もできたのですが、多くの方がここ数年とか1年とかで柚希さんにハマったという私と同じようなタイプだったりしたことに驚かされたものです。何より驚いたのは、私は常々BOΦWY好き、それもヒムロック好きを公言していますが、数年前にヒムロックが東日本大震災のチャリティとして東京ドームで全曲BOΦWYの歌を歌うというファンなら悶絶するようなライブがあったとき、mixiで知りあって一緒に見に行った女性(なんとBOΦWYを当時ライブハウスで見た事があるという猛者です)も柚希さんにハマっていたことです。

 ラストデイ翌日に真矢ミキさん(現役時代に武道館ライブを実現させたのはこの真矢ミキさんと柚希さんだけです、そんなところにもファンは感じるものがあります…)が司会の朝のバラエティを見ていたら、この日の様子が報じられていて、まぁバラエティのお決まりといった感じでフリップで柚希さんのすごさとか宝塚歌劇団についてなんかが紹介されてたんですけど、そこで秋元康が、AKB48のシステムはとどのつまりタカラヅカと非常によく似ているのだ、的なコメントを寄せていました。確かにその通りです。トップを争う集団であること、卒業、組替えを行い集団をマンネリ化させないことなど、共通点は色々あります。この3つの要素があることで競争が起こり、またそれによってドラマが生まれていきます。思い入れのあるジェンヌさんにトップになってほしいという感情は総選挙で1位になってほしいという感情と似たものなのではないかと思います。また番組では、タカラジェンヌさんの未婚率が高いということも紹介されていて、真矢ミキさんは、女性の一番大事な時期をタカラヅカに捧げているから…的なことをおっしゃっていましたが、それもうなずけました。遊びたい盛りの時期に恋愛禁止であること、女性だけの世界で過ごすこと。ひとつ大きなものを犠牲に(っていう言い方をしてすいません)していると受け手が感じるゆえに思い入れも強くなるのではないでしょうか。この世界が異質であり、いつか終わるものと知っているからこそ儚く見えるような…これは私の完全な主観ですがそんな感じです。

 
 
 
-ヒビレポ 2015年6月2日号-

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