レポは日暮れて 第10回

kitao
イラストレーターが3人で

 
北尾トロ
(えのきどいちろう&北尾トロの交互連載)
 
 
 
 まいったなあ。いま終刊20号の製作が追い込みなんだけど、これで終わるって気がしてこない。「あけすけなるレポの記録」には謝辞めいたことも書いたし、メインの特集は「終刊号新連載大特集」で、山田うどん特集のタイトルは「ラストダンスは山田に」だもん。隠しようもなく終刊号らしい誌面にはなっているだがなあ。えのきどさんが言うように、レポという雑誌は何か磁場を作っていて、そこはまったくしぼんでない。

 南伸坊さんから電話があって、用向きは「新刊送るよ」ってことだったんだけど、言いたいことは別にある様子だった。

「レポが終わってもその部屋は借りてるでしょ?」
「すぐ引き払うとかはしませんよ」
「良かった。そういう場は大事だからあったほうがいいんだよ」

 場さえあれば「ふにゃらら」って雑誌を新たに始めたっていいし、雑誌である必要すらない。もう場は温まってるのだから何やるかだけだ。その部分は残そうよってニュアンスの話。


 
 南さんの電話が終わって1分後、チャイムが鳴り、イラストレーターの伊野孝行さん、霜田あゆ美さん、犬ん子さんがやってきた。レポではなるべく、イラストレーターに来てもらい、即興で描いてもらうようにしている。『本の雑誌』は沢野ひとしさんがフラッときてチャチャっと絵を描いていくというのを読んだことがあって、その方式を取り入れたのだ。今回はヒラカツが伊野さんに依頼したらおもしろがってくれ、霜田さんと犬ん子さんも一緒にやることになった。どうやら伊野さん、合作を狙っているらしかった。

 霜田さんはニコニコだし、初対面に近い犬ん子さんも「さて、描きましょうかね」と”持ち歩き用絵筆セット”を広げる。ぼくはお茶菓子を出して簡単な説明をする役割。さぼってるんじゃなくて、あーしてこーしてと細かい注文出したら台無しだもんね。ヒラカツは別席でおもむろにゲラの束を読み始めたでしょ。気配消すために。

 3人は大きめのテーブルに仲良く座り、世間話したり、せんべい齧ったりしながら絵の担当を決め、事務所のコピー用紙にごにょごにょと絵を描いていく。うわ、イラストレーターすげえ。ライターだとこうはいかないよ。

 だんだんと集中が高まって話し声が消え、それぞれ制作に没頭する時間が訪れた。速い。原稿ざっと読んで、アイデアが浮かんだら即、手が動く感じ。伊野さんなんて、失敗した紙をクシャクシャに丸めて床に捨てたりして、悩める絵描きを演出するんだけどわざとなんだよね。

 たくさんの絵が3時間くらいで完成した。どうやら今日みたいな合同作業はみんな初めてだったらしく、あんがいうまくいったなんて喜んでる。うらやましくなっちゃってさ、ライターも負けじと集まって何か書き、できたらイラストレーターにホイと渡して絵をつけてもらうようなことができそうな気になってきた。最終号の作業をしているのにそんなことを思ってしまって、南さんのことばが納得できたんだ。

 ぼくはいずれ東京から、自宅の近く(いまんとこ松本)に拠点を移そうと思っている。そうなれば仕事のスタイルも変わってくるはずだけど具体的な像はまだ見えてこず、東京でのライター生活が長かったので不安もある。だけど答えは簡単なのかもな。場を作ればいい。場がおもしろいことを生んでいく。そのやり方は、レポやってきてなんとなくわかってきた。

 で、それはまだ少し先の話ですと。レポの終わりと拠点移動の間には時間ありますと。過渡期がいいのは実験ができること。ぼくはここへきて、いい時期を迎えたのかもしれないです。
 
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2015年6月7日号-

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