半澤と12人の優しい既婚者 第12回

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愛しさと切なさとデリカシーのなさ

 
半澤則吉(18号で「病人」を執筆)

 
 
 
優しい既婚者11人目
仲本夫妻
夫35歳 妻31歳
結婚5年目 子供1人 男児(3歳)
 

【飲酒していることをお許しください】

 まず、この文章はお酒を飲んで書いているということをご了承いただきたい。文筆家の端くれとしてこのような執筆スタンスをとること、とらざるをえなかったことを冒頭でちゃんと詫びておきたい。酒の勢いが必要だったのだと思う、無意識下、僕は缶ビールを手にしていた。本連載最終回が目前に迫り、この体たらく、いや、目前になったからこその冒険的アプローチ、今、僕はメガネを投げ捨てた。このライブ感。

 どういう成り行きで話していたかは覚えていないが、友人にこのように言われた。つい先日の話。
「お前は昔からかわいくてちょっとバカが好きだよな」
 そうそう、と頷くのは癪にさわるが、いやそれは違うぜと、強く否定することもできない。かわいさとバカさ加減に差こそあれ、これまで僕が好きになった女性は多くの場合「かわいくてバカ」だったように思える。誤解されると困るがこの「バカ」という言葉はたとえば愛嬌とか、あとはなんだろうね、とにかくもっとやわらかな言葉に換言できる。が、今回の優しい既婚者である仲本さんの場合は割とストレートにバカなのかなと、今、筆を走らせながら思う次第だ。彼女は本企画での「優しい既婚者」に早々に立候補してくれた。僕が君の恋愛やら結婚について書くことはけっこうイタい作業なのだけど、と言っても彼女はぜひとも書いてくれと強硬姿勢を貫いた。仲本さんは僕に対してデリカシーという、人として大事なものをなかなか見せてはくれない。

 さんざ、人の恋愛やら結婚に足を突っ込んだうえでノーギャラ、しかも土足でズカズカ系の質問を繰り返し、挙げ句はそれを記事化、ネット配信という暴挙をふるってきたこの連載。己のことは何も語らず「あがり」となるのはちと違う。みそぎの意味も込めて、今回は半澤側の赤裸裸感ハンパがない。
 

【エクセル化はしませんでした】

 これは仲本さんの希望なので書かざるを負えないが、本連載第4回でご登場いただいたあやかちゃんと「同等くらいの可愛さがある(原文ママ)」と述べて欲しいということだった。僕も大人なので、個人的見解をここで上げることは避けるが、挑戦的な今企画としてはこの幕開けは悪くないだろう。そう仲本さんはバカだけどかわいかった。僕は中学二年生の時から高校二年の春まで仲本さんのことが好きだった。彼女への片思い期間は僕にとってなかなかに甘美な時間であったし、思春期の恋愛としては幸せだったように思う。百歩も千歩も譲ってね。僕は都合2回、しっかりふられているので、失恋は純粋に痛々しい思い出でもある。彼女のことを好きだった期間、いろいろと手につかなかったし、あとは何だろう。そうだから、僕はちゃんと恋愛していたのだと思う。彼女と親しかったというのはうれしくもあり、とても辛いことでもあった。彼女はずっと恋人やら好きな人やらがいて、つうか、ずっと男はいたけれど(今回、この文章を書くにあたり彼女の恋愛遍歴をエクセルで表化することも考えたが僕は優しいのでそんなことはしない)僕は彼女にとってはずっと仲がよい友人で長く楽しくやってきたつもりだ。それが一男性として正解だったかどうかはわからないけれど。仲本さんの歴代の彼氏のうんぬんの話もさんざん聞いてきたし、場合によっては紹介されて一緒に遊んだりもした。彼女の結婚式に参加した際には、お前ちとお人好し過ぎるべ、的な見解を言う友人もいたわ。という訳で半澤の若き日の恋愛を語るうえで、仲本さんを外すことはできない。結婚というテーマを掲げた本連載において、彼女を無視することはやはりできなかった。いかんせん本人が立候補してしまっているしなあ。
 

【わたしはあなたの何なのよ?】

 つぶさに恋人の話などは聞いていたので、あまりびっくりしなかったが、結婚して京都に行くと聞いた時はさすがに驚いた。仲本夫妻が結婚されたのは2010年。旦那様が地元で開業したリストランテでマダムをすることになったと、そう聞いたのはいつのことだったろう。長く服飾の仕事がしたいと語っていた彼女がマダム、しかも京都。東京を離れる彼女の姿はあまりイメージできなかったが、なかなか素敵なお話に思えた。結婚式も二次会も参加させていただいたけれど、両方素晴らしかった。二次会の料理はすべて旦那様の手によるもの。二次会が混沌とした盛り上がりをみせるなか、粛々と料理を作る旦那様の姿、素敵だったなあ。いい男と結婚できてよかったなあ、と心底思ったものだ。

 仲本夫妻の結婚には、意外にもプロポーズの言葉はなかったのだという。
「いまだに恨んでいる」
 と仲本さんは語ってくれる。明確なプロポーズの言葉が欲しかった模様。
ちょっとしたケンカの中で、
「わたしはあなたの何なのよ?」と芝居がかった言葉をはく仲本さんに対し
「一緒におろうな」
 とやんわりと旦那さんが言ってくれたのがプロポーズらしい言葉とのこと。それで十分じゃないかと僕は思うね。だってそうじゃない!(こちらも芝居がかった声で)好きな男性が心の底から自分を必要としている、それ以上に何を望むんだ仲本さん。プロポーズというものについては本連載でいろいろ考えさせられたなあ。多くの方が“流れ”、“タイミング”で結婚したと言いながら、そこには恋人関係と結婚の分水嶺がしっかりと引かれる。これって冷静に考えると面白い仕組みですよね。しかも女性側は多くの場合、はっきりしたプロポーズを求めている。やっかいですね。なぜだろう、先ほどから僕の脳内には『SAY YES』が流れている。チャゲのハモりパートが頭を離れない。それにしても「わたしはあなたの何なのよ?」ってどういった局面で言ったのだろうね。そんなドラマみたいなセリフ、現実にあるんすね。
 

【実家が遠いのは大変】

 京都に嫁いだ仲本さんとはなかなか会う機会も得れていないが、マダムとしての生活はなかなか順調なようだ。職業マダムってスゴいなあ。仕事も順調だし子育ても楽しそうだ。それでも実家を遠く離れての生活に寂しさを覚えることも多いという。もうすぐ3歳になる長男昂生君は初孫として親戚にとても可愛がられているよう。仲本さんいわく、
「西野カナか?ってくらい愛に溺れてしまっている」。
 僕も初孫だったのでよくわかるが、下の子や従兄弟が生まれるまでは愛を注力されるよね。うれしいことですが。この年になると親を思う気持ちもね、昔と変わってくるし、実家恋しくもなるよなあ。今までご登場いただいた既婚者の中にも住んでいた街を離れて……という人が何人かいたが皆スゴいっすわ。仮に結婚するとして、今の生活を変える自分の姿がまるで想像できないな。結婚は決意やら決断が求められること。頭では理解できてもやっぱり立派なことですよ。
 

【半澤へのアドバイス】

 半澤へのアドバイスは? という問いを他の方にもしてきたけれど、仲本さんは誰よりも具体的なご意見をくれた。

①適度に変態な謎な男を目指せ
 女はミステリアスな男に惚れる、と仲本さん。世の女性は皆、好きなタイプは「優しい人」とか生温いことを言うが、このミステリアスさってけっこう求められている気がして納得しました。ミステリアスさというか、フックになる部分がないとダメだよなあ。なんか痛いほどわかるわ。現に仲本さんも、旦那さんのことを「この人意味わかんない」と思いながらも惹かれていったのだそう。

②年下を狙え
 当然ながらカップルの年齢差は一生埋まらない。男が年上だと年下の女性としては多少素直に話を聞けるのだという。
 わかる気もしますが、なんとも言えません。ただ一男性として、最近は年齢のことをあんまり考えないようにしてるんですよ。オーバー30ともなるといろいろありましてね。(なぜか敬語)
 この年上、年下のくだりを受けてか仲本さんにご回答いただいたアンケートは森高千里『私がオバさんになっても』の引用で締めくくられていた。大丈夫、もう十分オバさんだよ。安心安心。 
 
 夕暮れというとキレイ過ぎるなあ。僕は今、だいだい色に染まった、白い校舎を思い出している。中学校のとき僕らは何委員だったか、放課後各クラスを回ってチェックする仕事で仲本さんと、数ヶ月に1回1週間、学年のクラスを回って歩いた。きっと彼女は覚えてないだろう。僕もぼんやりとした記憶だけれど、14歳のときに好きな人と短時間ながら放課後の校舎を歩く時間を与えられたことは幸せな思い出だ。ムダに電話もよくしたなあ。電話代が高くなりガチで怒られたものだ。中高生時代は生きているのがあんなに辛く嫌なことばかりだったのに、それでも今振り返るとキッラキラしてるわあ、なんかヘコむね。もうこんなところで良いだろうか。最終回直前、身を切った分よい回となったように思う。
 

【本日のまとめ】
ちゃんとシラフで書き直しました。
 

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昂生氏のかっわいい写真をくれ、と言ったら本当にかっわいいのを送ってきてくれた。
見事な着こなし

 
 
 
-ヒビレポ 2015年6月17日号-

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