MAKE A NOISE! 第66回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

見逃した映画

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 
 ゲッ、『Citizenfour』、アカデミー賞でドキュメンタリー賞!これ、パスしちゃったんだよね、昨年のロンドン映画祭に来てたのに。遅ればせで観たら、やっぱり良かった。

 どうしてパスしたのか。ゲスト無しで記事にできそうになかったというのは半分言い訳。それでも観たい映画なら、観といて、記事にする手立てを考えるのに、それもしなかったのは、結局は観る気が起きなかったから。

 なぜ観る気が起きなかったのか。エドワード・スノーデンに食傷気味だった。わかったから、もう十分という意味ではない。重大ニュースなのはわかるけど、どう反応していいかわからない、つまりは消化できないところに、一時期、連日ニュースが続いての食傷。アメリカが自国民を監視するシステムを持っていた! 個人情報もプライバシーも何もあったもんじゃない! 民主主義はどうなるの! と、スノーデンがアメリカ国家安全保障局から持ち出した情報を素直に受けて怒ればいいの? スノーデン、ヒーローなの?

 そんなふうで、ニュースを分析する頭のない私にさえ『Citizenfour』はちゃんと面白い。なんと、ローラ・ポイトラス監督自身が台風の目!
 

 
 
 
 ポイトラス監督は、スノーデンが最初にコンタクトをとったうちの1人。監督が、ガーディアン紙に書いていたグレン・グリーンウォルドといっしょに、スノーデンと会ったことが全ての始り。重大情報を握っている人を匿うような状態で撮っている。すごいスリル!  リアル・スパイ映画みたい。

 でも、ジェームズ・ボンドとかがカッチョよく決めて終わりというわけにはいかず、リアルの終わりはやっぱり苦く、最終的には誰もアメリカに帰れない。ご存知のようにスノーデンはロシアに身を隠し、監督はドイツに越して、グリーンウォルドはブラジルの住まいに戻ることになる。

 映画中、見覚えがあったのは、グリーンウォルドの恋人が空港で拘束された件。ニュースを見ていた当時、その恋人が男性だった方に気をとられ、この人もゲイだったのか、が一番の感想だった私。そこは、もっと怒るべきところだったのね、どう考えても別件逮捕ならぬ別件拘束なのだから。

 映画が面白かったもんで、ロンドン映画祭でパスした冷淡な態度から一転、ヴィクトリア&アルバート博物館に展示中の、スノーデンの情報が入っていた壊されたラップトップまで観に行っちゃったよ。傷がある以外は何てことないマックブックエアーで面白くもなかったけど、解説の方にガーディアン紙の心意気が。これは破壊されても、移してある情報をこれからも明かしていくのだそう。

 ガーディアンといえば、盗聴事件でニューズ・オブ・ザ・ワールド(NOTW)紙廃刊のきっかけになった記事を出したところでもある。それまでにも、ウィリアム王子や映画スターへの盗聴で逮捕者を出したり、訴えられたりしていたNOTWが、殺されたミリー・ダウラーちゃん(当時13歳)の電話にもアクセスしていたという記事だった。留守電を盗聴したうえ、もっとメッセージが入るよう、メッセージの削除までしたという。捜査妨害はもちろん、遺族は電話がいじられた跡を見て、まだミリーちゃんが生きているのではと希望をもってしまったと聞くと、怒りがわく。

 そう言えば、読むならガーディアンと言われたことがあったな。イギリスに来た当初、英語を習いに通った近所のカレッジで、新聞読むのは勉強になるとガーディアン紙を勧められたのだった。もう名前も覚えてないけど、カーリーヘアのさばさばした女の先生で、納豆も食べられるほどの日本食好きと言ってたっけ。英語の方はたいして伸びなかったけど、そういう話は面白かったなあ。

 ガーディアンが良いという意味がわかりましたよ、先生。と言いつつ、スノーデン絡みで楽しみにしてるのは、ガーディアン紙の記事より、オリバー・ストーン監督ジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演『Snowden』だったりするダメな生徒ですが。
 

 その先生が、お勧め映画として最後の授業で見せてくれたのがマイク・リー監督の『秘密と嘘』だった。次回はそのリー監督作のうち、是非とも日本公開してほしいという1本で最終回といたします。
 

 
 
 
 
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-ヒビレポ 2015年6月18日号-

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