レポは日暮れて 第12回

kitao
夜になっても遊び続けろ

 
北尾トロ
(えのきどいちろう&北尾トロの交互連載)
 
 
 
 この原稿が読まれる頃には発行されてるはずの「季刊レポ」終刊号も、書いてるいまはようやく校了した段階だ。
 レポでは毎号、原稿の著者校正が終わったあとでヒラカツの事務所に集まり、読み合わせをしてきた。最終号は大増ページになったので12時集合。終わったのは23時。単行本1冊以上のボリュームを思えば、これでも早く終わったほうかもしれない。最後まで見終わってヒュ〜っと声が出た。ヒャハァ〜だったかな。ともかく声が出て、ヒラカツと一緒に笑った。

 あとは校了して、印刷が無事に上がれば終刊号が完成する。休刊じゃなくて終刊ね。ぼくがつくるレポという雑誌は20号でおしまいになるのだ。5年間もやったんだから感慨めいたものもある。

 ただね、レポが終わっても、それは節目にすぎないのだとも思う。ぼくのテーマは「全力でスローボールを投げる」ことだ。あと「可能な限り、本の周辺をうろつく」こと。5年間、編集発行人という立場で雑誌に関わってヘロヘロになってる部分もあるけどゲームセットはもう少し先だ。ことばとしてではなく、実感としてそう思う。


 
 まだ現役編集長なので、それぞれの執筆者や原稿について書くのは控えてきたけれど、ヒビレポも最後なので、この男について記しておきたい。レポのアートディレクター・米谷テツヤである。レポでは表紙から中身に至るまで、すべてのデザインワークを米谷さんと彼のスタッフに任せてきた。副編ヒラカツとAD米谷が「やろう」と言ってくれたからレポは創刊に踏み切れたのだ。

 ライターデビューから15年近く、書くことだけやってきたぼくは本を作ってみたくなり『廃本研究』『廃本研究2』というインディーズ本を製作し、コミケや一部書店で販売した。出版社に出したけどボツになった企画や原稿を形にしてまとめたもので、原稿依頼のやり方、編集作業の基本、対面販売の面白さ、書店営業の方法などは、その後の活動をする上で貴重な経験になった。

 調子に乗ったぼくがつぎに作ったのが『Secret of DragQueen』。内容的に、ただ活字を並べればいい本ではなく、こういうインディーズものを一緒にやれるデザイナーを探すことに。そのときに、人の紹介で会ったのが米谷さんだった。ドラァグクイーンの赤裸々なエッセイ集を作りたくて、と話し出したとたんに米谷さんは笑い出して「それはヘンな本ができますね。やります」と言った。初仕事がそれで、つぎに『西荻カメラ』(やまだないと)、さらに『なんて素敵!』(エミ・エレオノーラ)、『ばいぶる』(円奴スーパー)などを作ったが、デザインはすべて米谷さんだ。

 ずいぶんヒマなデザイナーだと思われそうだが真逆である。『Mac Fan』などのADから書籍の装丁まで、こんなに働くデザイナーをぼくは知らない。で、忙しいのに悪いなと思い、他を当たる素振りを見せると米谷さんはムッとする。「オレやるよ。どうせ忙しいんだから、ひとつ仕事が増えたって同じだよ」。そういう人だ。

 その期間にぼくはネットで古本屋、期間限定のブックカフェ、古書展の開催、本の町プロジェクトなど、本まわりのあれこれを行ってきた。季刊レポはその流れの中にあり、米谷さんとの関係でいえば、初の長期タッグである。レポをやりながら、2冊の山田本やレポCDという副産物がポロンと生まれたりした。
 

 だから…何が「だから」が知らないが、ぼくは心配していない。振り返ると、こうして知らず知らず長いつきあいになっていて、この先がまだありそうだ。さっき「廃本研究」のことを書いたけれど、執筆陣には下関マグロや、勤め人だった頃の杉江松恋がいたりするんだ。自分でも気がつかないうちに、ぼくたちは何かの種をまいていて、忘れた頃に花が咲いたり実をつけたりすることがある。レポもきっとそうなるよ。

 レポは日暮れて。でも、ライトの下へ移動すりゃ、もう少し遊べるだろう。夕食の時間が来ても家に帰りたくないやつは、いつだって自分だけじゃない。
 

*ぼくの原稿は今回で最終回。これ読んだらあれこれ考えずに終刊号を申し込んでくれ。
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似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2015年6月21日号-

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