二代目『薔薇族』編集長の作り方 最終回

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サヨナラは云いません

 
竜 超
(第20号で「300日のスーパーバイザー」を執筆)
 
 
 
重度の中二病患者だった少年が、本邦初の同性愛マガジン『薔薇族』の二代目編集長になるまでを描く大河ロマン(自称)……ラストとなる今回は、いよいよ歴史ある『薔薇族』を譲られた経緯について語ります。

2005年の晩秋に『薔薇族』が2度目の休刊を迎え、アレコレ戦後処理をしているうちに2006年になった。
その年のぼくは、新宿歌舞伎町のライブハウス「ロフトプラスワン」でイベントを開くなど、同性愛者と世間とを「娯楽」を介してつなぐことにチャレンジしていた。
おなじ頃、『薔薇族』編集長の伊藤文学氏は、同年代の古株編集者との「150歳コンビ」で第三期『薔薇族』を起ち上げた。
今度のスポンサーは、ぼくと文学氏が復刊『薔薇族』と並行して関わっていた「有料会員制サイト」の運営元(IT企業)だった。

そのサイトは、「初期『薔薇族』の電子書籍版」と「竜超による初期号解説コラム」、そして「サブカル文化人出演のGAYトリビア動画」のセットが、「年会費6000円」で毎月配信されるというものだった。
ぼくはスーパーバイザーとして復刊『薔薇族』に関わりつつ、サイト用のコラムを書き、トリビア動画の撮影&編集をしていた。
それに加えて、週3日ほど広告会社でサラリーマン・コピーライターもやっていたので、とにかく死ぬほど忙しかったのであった。

結論から先に云うと、その有料会員制サイトは復刊『薔薇族』と、ほぼ同時にポシャった。
会員になった人の数が当初の予想を大きく下回り、続ければ続けるほど赤字が累積していったのだという。
150歳コンビによる第三期版『薔薇族』は、そちらで生じた損失を補填すべく刊行されたそうだが……こちらの結果は、有料会員制サイトよりもさらに惨憺たるものだった。
IT企業は「損害を取り戻す」どころか更なる大損をして、第三期版の1号を出して間もなく倒産してしまったという。


 
ただ潰れるだけならまだ良かった(←ヒドイ云いぐさ)のだが、IT企業はなんと、文学氏から渡された「第三期版2号用の原稿&図版一式」を持ったままトンズラしてしまったのだ!
なにより悔やまれるのは、持ち逃げされた図版の中に、2007年に急逝したファンシーイラストのカリスマ「内藤ルネ」描き下ろしの表紙画が含まれていたことだ。
ルネ氏は1980年代の半ばから永きにわたって『薔薇族』の表紙画を担当してきたのだが、その行方不明になった作品こそが「生涯最後に描いた薔薇族カヴァーイラスト」だったのである。
10年近く経った今でも、ぼくはソレをどうにかして取り戻したいと思っているのだ。

話を第三期版に戻そう。
ぼくは「第1号にコラムを寄稿したのみ」の関わりだったが、こういう結果になることは当初からある程度の予測ができていた。
何か新しい試みがあるワケでもなければ、旧版の命綱だった「エログラビア」や「交際仲介ページ」もないのだから、これで継続していけるほうが不自然というものである。

第三期版が「創刊即休刊」となって少し経った頃、文学氏から「自腹を切って第四期版を出したい」という相談を受けた。
倒産によって大借金を負いながらも雑誌の継続を願う氏の執念に感銘したぼくは、今度は「副編集長」という肩書で手伝うことに決めた。
発行は負担の少ない「季刊ペース」とし、内容は「昭和期の1年を毎号ランダムに選び、その年の『薔薇族』の内容をダイジェストで網羅する」というものにした。
後世の研究家たちに重宝されるような「資料性の高い年鑑」を作ろうと考えたのだ。

こうして2007年の春、第四期版の1号目(通巻392号)が発行された。
それを献本した書評家の中に「現在がまったく描かれていない」と批判してきた人がいたが、イヤイヤそれは「描かれていない」のではなく、あえて「描かないようにした」のですゼ。
もし現代を描いてしまったら、その視点はぼくのものだから、第四期版は「竜超の雑誌」になってしまう。
第四期版はあくまでも、伊藤文学と『薔薇族』に最大限の敬意を表し、その「最後の花道」を飾る目的で作るものだから、それではイカンのである。

その後、第四期版は順調に号を重ねていったが、398号を制作しはじめた頃、文学氏が唐突にこんなことを云いだした。
「……もうボクもイイ歳だからねェ、キリの良い400号で『薔薇族』を終わらせようかと思ンだ」
その決意を、ぼくは尊重することにした。
「出版界の怪人も、やはり寄る年波には勝てないのかなァ……」と淋しく思ったりはしたが、「まだ元気なうちに有終の美を飾りたい」と当人が云っているのだから、それに反対する権利など誰にもないのだ。

かくして「完結直前号」と銘打った399号が2009年1月に刊行された。
ところがその後、ラストとなる「400号」はいつになっても発行されなかった。
「400号で辞める」と自分で決めた文学氏だったが、いざとなるとやっぱり引導を渡す踏ん切りがつかないようなのだ。
そんな宙ぶらりんの状態でおよそ2年が過ぎた頃、あの忌まわしい「東日本大震災」が発生した。
物理的には被災していない地域でも「人心」が大いに揺さぶられ、これまで隠されていた「日本人の暗部」がむき出しになった。

今世紀に入ったあたりから、ぼくは硬軟とり混ぜて様々な「同性愛者の集まる場所」に出入りし、そこで色々なものを目の当たりにしてきた。
秘密のフェチパーティーにも潜入したし、生活困窮者の半生も聞いたし、国政&地方議会の選挙ボランティアもした(選挙カーでアナウンスもやった)。
それまで知らなかったアレコレを次々と知っていく中で、「こんな状況でイイのだろうか?」というモヤモヤした想いが溜まっていった。
そのモヤモヤと、東日本大震災から生じた混乱が化学反応を起こした。

「どげんかせんとイカン!」
柄にもなくそんな熱い想いに駆られたぼくは、文学氏のもとを訪ねて「お願いします! ぼくに『薔薇族』を継がせてください」と頼み込んだ。
「同性愛者にまつわる社会問題は、まだまだ山積しています! なのに、日本で最初にそこへ斬り込んだ『薔薇族』が無くなってしまって良いものでしょうか!?」
多分こんなことを云ったと思うのだが、その願いを文学氏は快諾してくれたのであった。
かくして「完結号」になるはずだった400号は、竜超版『薔薇族』の「スタート号」となった。
ぼくの代の『薔薇族』は現時点で415号まで発行されていて、気力・体力・財力が失われない限りはこれからも続いてゆくはずである。

……あ〜、ようやく「二代目編集長襲名」にまで到達できた。
じつを云うと、「ひょっとしたら到達しないうちに連載が終わっちゃうンじゃないか」とヒヤヒヤしてたのですワ。
さてさて、ぼくの担当するヒビレポは今回で終わりです。
ここまで読んでくださったミナサマ、および記念すべきヒビレポ最終シーズンに書くチャンスを与えてくださったトロ編集長&ヒラカツ副編集長に心よりの感謝をささげます。

これからもぼくはジャンルを問わず、アチコチに首を突っ込んでいくつもりです。
「社会の中に自分たちの牙城(聖域)を築いて籠城すること」ではなく、「社会の中にさりげなく溶け込んでいくこと」こそが、真の意味での「同性愛者の解放」につながると思っていますンで。
読者のミナサマ、この先どこかでぼくを見かけることがありましたらヨロシクどーぞ!
とゆーか、絶対に「見かけられるような存在」になりますので、あえてサヨナラは云いません。

じゃ、また!
 
ヒビレポ用イラスト(13)-s
 
 
 
 
-ヒビレポ 2015年6月12日号-

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