半澤と12人の優しい既婚者 最終回

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肝心な時に守ってくれる人

 
半澤則吉(第20号で「朝からドラマに見入る国」を執筆)

 
 
 
優しい既婚者12人目
渡辺夫妻
夫32歳 妻30歳
結婚3年目

 
【粗品進呈】

 自分でやるって言っといてなんですが、正直この企画大変でした。話を聞いた既婚者の方には校正を取らねばならなかったし、遠方に出向いて話を聞く機会も多かった。複数回まとめて作業するということもできなくて、律儀に毎週、締め切り直前に作業していたように思う。おかげで、いろんな人に久々に会えたし、こういう機会でもない限り耳にすることができない素敵な言葉の数々を聞き出すことができた。たくさんの友人にご協力いただき、文章を書けたことはこれ幸せだな。最後に言うのもあれだが本コラムのタイトルは三谷幸喜氏の舞台劇、ならびに映画の『12人の優しい日本人』をもじったものだ。(昔のアメリカ映画『12人の怒れる男』がルーツ)。だからあえて“12組”とはせず“12人”とした。いきおいで付けたタイトル、本当に12人に話を聞けるかどうかは不安だったが立候補してくれた方もいたうえに、話の流れで連絡させていただいた方も多い。つっけんどんなお願いにもかかわらずご対応いただいた皆様には、感謝の言葉しかありません、本当。つうわけで、半澤作りましたよ。

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結婚式プチギフト風粗品
マグカップできちゃいました。しかもそれぞれ夫妻名を名入れ。
捨てないで大切にしてね!


 
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中にはオリジナルチロルチョコを入れてお贈りします。
結婚式のプチギフト感ハンパないね。
チョコの柄はロゴと半澤ph、あとシークレットもあるよ!
いかんせん初披露のロゴなのでピンとこないかもしれませんが、ポップなロゴ

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どんだけ暇だよ!

 
優しい既婚者の方々には随時発送か手渡しいたしますね。ただ、夏場にチョコレートってなあ。しくじったなあ。

 
【長い春】

 というわけで、今回で見納め! 最後を締めくくる12人目の既婚者は渡辺夫妻だ。本連載の早い段階で彼らを最終回にもってこようと、そんな気持ちが生まれた。理由は多い。渡辺君が中学からの友人、奥様の明子さんとも友達歴は10年以上、そして渡辺君は、畑は違えど僕と同じフリーのライター職。聞きたいことはたくさんあった。

 実はお二人、交際10年という長い春を実らせた珍しいカップル。同棲期間も数年にわたり、よくそんなに長期間付き合ってきたなあ、と僕からみてもつい感心してしまう。渡辺君いわく
「30歳になったら結婚するかー」
 と、そういう気持ちはあったのだという。年齢や交際期間が節目になった形だが、それにしても10年てスゴい。結婚してからの10年とはちと意味が違うし、10代後半からの青春時代をずっと一緒に駆け抜けてきたわけだから、なんつうかエネルギーが違う。二人が長期間に渡り、まあ多少の喧嘩やなんかはあったとしても、うまくやってきたヒケツは何だったのか。彼らにお願いしたアンケートにはその答えが詰まっていた。

 
【同じ回答】

 結婚して良かったこと、変わったことは? という質問に二人とも同様の回答をくれた。
渡辺君:「みんなに祝福してもらえたこと」
明子さん:「自分たちはそんなに変わらないけど、お互いの家族や友人が喜んでくれてるから私達も嬉しい」
 二人とも真っ先にまわりの人の存在をあげているのが面白い。そして素敵。彼らは長く京王線沿いの代田橋という街に住んでいる。地元の人とも本当に仲が良く、愛されている。代田橋に一瞬も住んだことがない僕ですら、行きつけの飲み屋が2軒ある。渡辺夫妻がいない時でもサラッと飲みに行ったりする程代田橋の人たちは皆優しく、楽しい方ばかりだ。まるで家族のように渡辺夫妻は街に、街の人に見守られてきたのだ。これにくわえ、二人の予備校時代からの友人や大学時代の友達、働き出してからの同僚など、皆が皆彼らの結婚を楽しみにしてきた。夫妻に寄り添って、いや、寄り掛かって東京で生きてきた僕としても二人の結婚は本当にうれしかった。長い春を成就できたのは、多分にまわりの人の支えあってのこと。二人の共通概念として、「まわりの人の存在」がまずあることに僕は感動すらしてしまった。そういえば本連載で登場した多くの既婚者の方もそうだった。彼らの話には家族や友人の名前が自然出てくる。結婚って二人でするものだけど、二人だけの問題ではない、出来事ではない。当たり前だけど、そのことを改めて知ることができた。

 
【親戚がもう一組できた】

 渡辺夫妻は、上の回答にそれぞれこう続けている。
渡辺君:「親戚がもう一組できたって感じがする。会えるのがいつもすごく楽しみなのです」
明子さん:「お盆やお正月に会いたいと思える家族や親戚が増えるのはいいな〜」
 二人別々にアンケートしたのになあ、驚くわ、さすが夫婦! そう、二人は新しく増えた親戚とも仲がよいようだ。結婚式もわいわいと、楽しかったなあ。家族って一番小さな共同体で、だからこそ難しいこともあるように思えるが、二人は自分の家族、相手の家族ともうまく関係を作っているのだ。親戚関係とか面倒くさがる人もいるけれど、渡辺夫妻の話からはそんな様子がみじんも感じられない。確かに日常的にも、二人の口から互いの家族の名前が出ることは少なくない。なんて素晴らしい話なんでしょう。

 
【自営業者として、ライターとして】

 渡辺君は大学卒業後すぐに音楽ライターとしての活動を始めた。のっけから個人事業主。ライターとしても自営業者としても僕の大先輩なので、そのへんのこともうかがいたい。

 「もっと稼がなきゃ!」と思ったのは事実と渡辺君は述べてくれているが、結婚を理由にしての職業の方針転換はあり得なかったとのこと。
「そんなことをしたら彼女は怒るだろうな」
 と、渡辺君は語る。明子さんは誰よりも渡辺君のライター業を理解し、支えている。渡辺君の仕事、仕事の目標を二人は見事にシェアできている印象がある。明子さんも配偶者が自営業者ということを、苦には思ってないようだ。
「時間に融通が利いて毎日一緒にご飯食べられるし、家事も料理も率先してやってくれるし」
 僕も自営業を楽しくやっているけれど、それがまだ見ぬ恋人、奥さんに理解されるかどうか分からない。というか、理解がないとまずやっていけないだろうなあ。休みは不安定だし、朝まで働くことも少なくないし。と、思ったら昼から飲んだくれているし(それは職業と関係ないだろうが)。どの仕事でもそうだろうがパートナーの職業理解ってとっても重要に思えた。毎年3月が来ると渡辺君と、確定申告をどうしのぐか、互いがいかに追い込まれているか、で盛り上がる。が、自営業者で困るというか大変なのはそのくらいのもので、あとは真面目にやれさえすれば(それが一番難しいけど)まあ何とかはなるような気がするなあ(この辺の文章は自分を励ます意味で書いています、頑張れオレ!)。
 また、面白いとおもったのは渡辺夫妻のお金システム。収入全額を明子さんに預けたお小遣い制とのこと。過去の既婚者にもここのところちゃんと聞いておけば良かった、と激しく後悔。カップルというか家族としての方針が感じられ、非常に面白いですね。
「お金の管理をやってもらえるのは助かる」
 と渡辺君はいうが、僕はお小遣い制になったら死んでしまうなあ。先週も家電数点を購入したばかり。独身、30歳を越えて車も持たず安マンションで暮らしていると、デジタルガジェットに金をかけたくなるんだよ。散財でもって何とか自己を保ってるんだよ。(この辺の文章も自分を肯定するために書いています、頑張れオレ!)

 
【半澤へのアドバイス】

 半澤へのアドバイスで渡辺君は僕を激励してくれた。面白いので全文掲載、原文ママ。
 

恋愛をしてください。結婚よりもそっちのほうがはるかに大事です。結婚なんてもんは恋愛してたら付いてきたおまけみたいなもんだと思います。
「仕事でそれどころじゃない」「出会いがない」「好きな人がいない」とは言わせないよ。それは君の怠慢だ! まずはかるい気持ちで今ちょっと気になってる人にプローチしてみてはいかがでしょうか。それでもしダメだったらすぐに次の人を探す。付き合ったらもっと好きになった、なんてことは普通によくあるんだから(逆も然りですが)。結婚について考えるのは、そのあとでもいいんじゃないでしょうか

 

 確か、中学2年のときだ。先生の机の前という一番目立つ席で、なぜか渡辺君と僕は男二人並んだことがあった。他の席がすべて男女ペアなのに。あれは楽しかったな、と彼の熱い激励文を読みながらしみじみ考えた。高校も一緒だったし、東京に来てからもずっと仲良くしてもらっている。僕のふがいなさを誰よりも知っている彼からのお言葉、重く受け止めましょう。そう僕の怠慢なんすよ、わかってるんすよ。

 
【あの日の夜】

 渡辺夫妻を語るにあたり、忘れられないできごとがある。最後にこのお話をして、本コラムを締めさせていただきたい。(名番組『知ってるつもり!?』も終わり方こんな感じだったなあ、ぜひ関口宏の声色でお読みください) 

 東日本大震災、3.11.の夜、仕事で巣鴨に赴いていた明子さんを渡辺君が自転車で迎えにいったというエピソードが僕は好きだ。代田橋から巣鴨まで。距離はそんなに遠くないが、あの日、あの夜の混乱を思うと自転車移動もなかなか大変だったはずだ。
 震災当日のこの話を当人たちからも聞いたような気がするし、二人のTwitterでリアルタイムで見ていた気もする。後日見たのかも知れない。そこかしこで、そんなドラマは起こっていたのだろうが、家族や恋人と一秒でもはやく会いたいと皆が皆思ったあの日、渡辺君が東京の街を自転車で必至に駆けている姿、二人が巣鴨で合流し、二人乗りで代田橋に帰ってゆくという光景。見てもいないのにどういうわけか僕の記憶にっきりある。全力疾走で自転車をこぐ渡辺君の姿を、僕はなぜかはっきり想像できる。この目で見ていたように、想像できる。
 明子さんはこの日のことを振り返り、こう語っている。
「普段優しい人は沢山いるけど、肝心な時に守ってくれる人はそんなにいない」
 
 カップルの決断、家族観、人生観をのぞいてきた本連載。いかがだったでしょうか。表題通り優しい既婚者の方に支えられて、なんとか完結できました。ご登場いただいた方以外にも文章化したかったカップルは多い。今後趣味として書かせてもらってもよいでしょうか。また、読んでくださった方々、毎度長文にお付き合いいただき、誠に有り難うございました。

 
【今回のまとめ】

やっぱり結婚したいなあ
 
 

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Music Magazine」6月号
渡辺裕也氏の近作。特集「ceroと新しいシティ・ポップ」で総論ほか。

 
半澤も買わせていただきました。“シティポップ”というワードをめぐりながら気鋭のバンドceroと現在のポップシーンを考える、本当に面白い特集。しかし、老舗有名雑誌の巻頭特集でこれだけの論を展開できるのだから、スゴいなあ。

 
 
 
-ヒビレポ 2015年6月24日号-

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