昭和歌謡宅急便 第3回

嗚呼難しき結婚ソング

 
田中稲(第8号で「K文学館の散歩者」執筆)

 

さて、いきなりですが、みなさん独身ですか(号泣)。
うわ、どうしよう。我ながら訳の分からない超寂しい出だしになってしまった。

なんと言いましょうか、40を過ぎの独り身って、肩身せっまいせっまい。
私など、既に親せきから「ヤスコちゃん(←本名)の前では結婚の話を出しちゃダメッ!!」
といわゆる「腫物」状態だ。どっひょー、針のムシロッ。

いや、それでも日本はまだいい。

以前世界の風習について調べた際、なにかの本で、キルギスという国では適齢期を過ぎても嫁に行けない女性は見せしめのため三つ編みヘアを余儀なくされるという記述があり、背筋が凍った。

キツイ。シンプルだけどキッツいわー。

オバハンに三つ編みってコレ、見た目的にも頭皮的にも破壊力抜群の拷問ですよ。
もう資料を読みながら泣いたです。わが身に置き換えて。

いやいや、しかし遠い過去を思い出してみると、私も一応プロポーズを受けた事はあった。
28歳くらいだったろうか。当時付き合っていた彼がカラオケでおもむろに
吉田拓郎の「結婚しようよ」(1972年)を入れた。

しかし、照れていたのか
「♪僕の髪が〜肩から生えて〜」
替え歌で歌いやがった。

しかも、彼は歌い終わってから
「えーと、この歌詞通りになったら、結婚しようと考えています」
というもんだから、ワタシャ彼の髪が肩から生えるミラクルな日を待たねばならんのか?と混乱した。
結局、元歌の歌詞「髪が肩まで伸びたら」ということだったらしいが。

こういう時の大阪男は面倒くさい!
恥じらいを隠すためギャグを交えるもんだから、ロマン&感動が薄れるっちうねん!

ところが結局、彼は心変わりしたのか、肩に髪が付く前にドレッドにしてしまった……。
もう少しで肩につくはずだった髪がチリチリと縮れ上り、肩から遠ざかっておるではないか!
「あ、アンタ、確か前に、僕の髪が肩までのびのびのび」
指摘する声が震える私。
「は? のびのび太?」
……。
結局この男とその後10年も付き合ってしまった私がバカであった。

……とまあ、思い出しているうちに画面が涙で曇り見えなくなってきたので、
昔話はここまでにしておき。

私は人の結婚式には両手両足では足らんほど出席した。
で、結婚ソングも何回か歌わせていただいたが、
意外にも新婦の友人から超評判が悪かったのが定番中の定番、

チェリッシュ「てんとう虫のサンバ」(1973年)である。

お決まりとして
「♪キスをしたっ」のところで新郎新婦の側に駆け寄り、キスを促すのであるが、
これが当人にとってすんごい迷惑だったそうで、

「アンタ、私に何の恨みがあって公開処刑させんねん!!」

とドエライ剣幕で怒られた。
うーむ、みんなの前でチュー強制は人によってはツラいようだ。

しかもこの「てんとう虫のサンバ」、歌詞を改めてよーく読んでみると、けっこうとんでもない。

イメージビデオなどでよく花輪を頭に飾ったウサギやらクマやらリスやらが新郎新婦を祝福しているが、
そんなプリティーな動物、ひとっつも出てきやせん!!
みんな、「森の小さな教会」という設定だけでカン違いしているぞ!

歌詞をよく読んでほしい。
新郎新婦を祝うのは、ひたすら「虫」。

色とりどりの服をまとったテントウムシが「ピッピッピリッピー!!」とホイッスルも高らかなサンバに合わせて踊り狂う状況も、祝いの席とはいえかなり仰天の光景だ。

さらに「口づけせよとはやしたて」るのも虫。
虫に囲まれ祝われる……。
これを喜べるって、ファーブル博士か哀川翔か小学校のヤンチャ坊主くらいではないだろうか。

それともなにかい。世界で一番幸せ絶好調、まさしく「今日の主役」の新郎新婦にしてみりゃ、
祝いの席に並ぶ招待客はムシ程度の存在に見えるってことかい!

あんまり納得できないので、調べてみたら、
てんとう虫ってヨーロッパでは幸せの象徴なのだそうな。げっ。

うあーん、独り身ならではのあらぬヤサグレ感覚で聴いた私が恥ずかしいっ。
「てんとう虫のサンバ」深い。いい歌じゃないか!(忍法、変わり身の術…)

最後にもう一つ。

私が別の結婚式で歌ったのが山口百恵の「いい日旅立ち」(1978年)。
結婚=旅立ち、しかもいい日。題名だけでチョイスしたが、曲調がドド暗く会場が静まり返ってしまった。

で、その数年後、某TV番組で「いい日旅立ち」を作った谷村新司が

「たまに『いい日旅立ち』を結婚式で歌う人がいますが、そんな幸せな歌詞ではありません」
と言い放っておられました。

歌っちまったバカがここに……(泣)。

-ヒビレポ 2012年10月17日号-

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