今朝はボニー・バック 第3回

ランチジャーの逆襲①

ボニー・アイドル(第9号で「人生とはトイレからの距離である、のか?」執筆)

10月3日、「季刊レポ」、「レポTV」でもおなじみの、えのきどいちろうさんが水曜パーソナリティを務めるTBSラジオの新番組「Wanted!!」にゲスト出演した。
ぼくが出たのは、「Mr.スランプ うもれちゃん」という、今は埋もれた存在だけど、何かに執着している人を紹介するコーナー。えのきどさんとも、アシスタントの川瀬良子さんとも打ち合わせなしのぶっつけ本番だったので、かなりなに喋ってるか分からない状態になってしまい、看板に偽りなしのスランプ振りだったと思う。
Podcastで配信されているらしいので、よかったらダウンロードして聴いてください。

で、このコーナーでぼくが執着しているものとして紹介したのが、「ランチジャー」だ。“鉄は熱いうちに打て”ということで、「ヒビレポ」でも今回から数回にかけてランチジャーの魅力を紹介していきたい。

去年の6月、ぼくはAmazonである商品を購入した。
商品名は「ZOJIRUSHI ステンレスランチジャーお・べ・ん・と SL-XB20-HG ガンメタリック」。そう、ぼくにとって初ランチジャーだ。

一応説明しておくと、ランチジャーとは円筒型の弁当箱のこと。基本3層構造で、一番下にはジャー全体の保温効果役を担う汁容器、中段にはこれでもかと白飯をぎっしり詰め込む飯容器、そして上段のおかず入れで構成されている。

ぼくが購入した「お・べ・ん・と」は、象印製ランチジャーの中でも最大の容量を誇り、飯容器に茶碗4杯分(1.8合)のご飯を入れることができる。それにしてもランチジャーに入れるご飯には、「銀シャリ」という言葉がピッタリだなあ。
高さ23.5㎝。重さは空の状態で約1kg。おかずを入れると2kgに達する。
ランチジャーというより「ランチャー」と言った方がしっくりくる。
数も「1個、2個、・・・」ではなく、「1基、2基、・・・」と数えるべきだろう。

ここで、ざっとぼくがランチジャーにハマった経緯と、ランチジャーの繁栄と衰退の歴史を説明しておく。「Wanted!!」を聴いていただいた方は飛ばしてもいいです。

ぼくのランチジャー原体験は、保育園に通っていた1985年頃にまで遡る。
朝ご飯を終えると、食卓にはいつも3つの弁当箱が並んでいた。兄キとぼくの、サンリオやキン肉マンなんかのキャラクターが描かれている小さい弁当箱と、親父のランチジャー。
その巨大で黒々とそびえ立つ姿は、子ども心に「やっぱり大人は弁当の大きさもちがうなあ」と思わせるに十分の迫力があった。
しかし、今思えば、その頃すでにランチジャーは衰退の時代に入っていたのである。

ランチジャーが生まれたのは1964年。大阪府羽曳野市にあるグロリア魔法瓶製作所が業界に先駆けてランチジャー第1号を開発する。
1964年といえば、東京オリンピック開催、東海道新幹線の開業など、まさに高度経済成長の真っただ中。ドラクエでいえば「ガンガンいこうぜ」の時代。
そんな日本の繁栄を築いた企業戦士たちの腹を満たしていたのがランチジャーだったのだ。
働く男の鉄の胃袋を満たす大容量の容器、そして時間が経っても温かいご飯が食べられる保温機能が時代のニーズにマッチしたと言えるだろう。

グロリア社に負けじと、象印、タイガー、ピーコック等、他の魔法瓶メーカーも次々とランチジャーを開発。ちなみに、グロリア社を含め、上記の4社はすべて大阪の会社である。

1977年、ランチジャーは映画「幸福の黄色いハンカチ」にも登場する。健さんが事件を起こす日の朝、家を出て行くとき担いでいるのがそれだ。
ここがランチジャーのピークだったのだろう。80年代に入るとほか弁、コンビニ弁当の普及で、ランチジャーに頼らなくてもいつでも温かい弁当を食べられるようになる。さらに、バブル期の「新人類」たちからはその外見から見向きもされず、ランチジャーは静かにその役目を終えていった。
ぼくの親父の弁当箱も、いつのまにかランチジャーから普通の長方形の弁当箱に変わっていた。

そして2、3年前。世間もぼくもランチジャーのことなどすっかり忘れていた頃に「弁当男子ブーム」が到来する。景気が悪いこともあって、外食を控えて弁当を作ってくる男性サラリーマンが増えているのだという。
一度、テレビでその弁当男子の弁当を見たことがあるが、どれも筆箱サイズの弁当箱にチマチマとしたおかずが並んであるしゃらくせえ代物ばかり。
明らかにモテ狙い。しかも現にモテているという。

その怒りがぼくにランチジャーの存在を思い出させた。義憤に駆られたと言ってもいいだろう。
思えば、ぼく自身、フリーライターとは名乗ってはいるが、収入の半分をバイトで賄っている「労働者」である。つまりプロレタリア文学の旗手。今こそ労働者の弁当箱、ランチジャーを手に、ポーズだけの弁当男子を相手に立ち上がる時だ。
そしてランチジャー人気にもう一度火を点けてやる!
いざとなれば弁当男子なんかランチジャーでぶん殴ればいい。

誇張も含まれているが、以上がランチジャー「お・べ・ん・と」購入までの経緯である。Amazonで買ったワケは、デパートやホームセンターを回っても小さいサイズしかなかったからだ。

次号は、今年の春、北尾トロさんの事務所に持ち込みに行ったときのことを書く予定です。
最後に、「お・べ・ん・と」に詰めた記念すべき第1回目のおかずをレシピとともにどうぞ。

「焼肉弁当」
◎レシピ
・豚カルビ焼き
豚カルビ150g、焼肉のタレ適量

・野菜炒め
たまねぎ1個、ピーマン1個、もやし1/2袋、塩・コショウ適量

・白飯(1.8合)

・豚汁

・オロナミンC

-ヒビレポ 2012年10月16日号-

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