ぼんやりクッキング 第3回

韓国・ソウル 魚の丸揚げ(名称不明)

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

 昨年の秋、モンゴルからの帰り道に韓国・ソウルに一人で寄ったんですが、これをやると問題が起きます。焼肉屋に行入れないんです。行ってはみたものの、「二人分食べろ!」とオモニに迫られ、他のテーブルをチラ見すると、とてもじゃないけど食べきれそうにない量が・・・。「一人前じゃいけないかしら?」と色目を使うも、「ダメダメダメ!」と、店を追い出されるお決まりコース。これは理由は明白で、一人の客入れるより、グループの客を入れる方が儲かるから。大韓民国では、決してお客様は神様ではない。そのことを、一人旅の身ですと骨の髄まで思い知らされます。あぁ、近くて遠い国、コリヤ。

 そこでとってもお腹が空いた独り身の僕は、「屋台」に入ることにしました。韓国に行かれたことある人なら、すぐ思い浮かぶでしょう、おでんやらチヂミやら売っていて、地元の人がみんなで背中丸めてモソモソ食べている、アレです。屋台は普通の店より高くついちゃうんですが、その代わり独り身を拒絶しない。
 ただ、僕が行ったお店は、ちょっと本格的で。軽トラックを中心にぶ厚い保温シートで屋根を作って、その下にテーブルとイスを設置してて優に20名は入れる。そして端のショーケースに、串刺しになった肉や魚や辛ラーメンが並べてあって、その中の物から店のアボジに適当に注文するんです。
 韓国語が全くできないので、その時はこれまた当てずっぽうで「美味しそう」と思った魚とビールを指差して注文。「〇×★□スミダ!」と威勢よくケースから小ぶりの魚を取りだしたオッサンは、テンポ良くポンポンと粉をつけ、そのまま油の中にジュワッと丸ごと投入。ハラワタはとってあるんだろうが、何とも豪快な。とか考えてたら、キョポンと韓国ビールhiteの栓を抜いて、間もなく揚げ上がった魚と一緒にコトンとテーブルに置いてくれた。
 と、その後に、「◇■☆●!!」恐らく「これつけて食べな!」と言って出してくれたのが、日本人には慣れ親しんだ「わさびじょうゆ」であった。乱暴にチューブから出されたワサビをくちゅくちゅ醤油で溶かし、それをこんがり揚がった魚にチョンチョンつけて、頭から丸ごとカプリ。サクッ!
 お、これは食べたことない味。魚臭さは、揚げてあることで解消されていて、白身魚の淡白さとワサビの刺激が予想以上に相性が良い。さんまに大根おろしを添えている方法論の、もうちょい刺激強いヴァージョン、と考えていただければいいだろうか。しかも何の魚を使っているのかわからないが、骨が小さく頭から尻尾まで丸ごとかじって食べきれる。醤油の味も手伝って、これは酒に、それもビールに合う。ついついゴキュリと飲み干して、追加の魚とビールをオーダー。カプサクッ!ゴキュリ。この繰り返しで、一人なのにちゃっかり出来上がり。
「コマッササムニダ!」と言って取られた5万ウォン(約3500円)は、ソウルの他の店の晩飯の相場と比べたら、随分と高くついたが、いやはやこの発見のことを考えればお安いものだ。「コマッサムニダ!」と頭を下げて、コチラも屋台を後に。お酒で火照った身体には、ピューと吹く秋のソウルの風は、クールダウンにちょうど良かったのでした。

 さて、それでは、今回もこの魚の丸揚げ(名称不明)を思い出してみよう。材料はコチラ。

 真いわし 
 ごま油  適量
 小麦粉  適量
 片栗粉  適量
 醤油   適量
 わさび  適量

 今回は調理法が超簡単で、思い出せないのが魚の種類だけなので、スーパーに売っている魚を手当たり次第に試す作戦に。とはいえ、日本のスーパーだと意外に魚まるごとは売っていない。どれも切り分けられている。さんまではないことぐらい、形状でわかったので、まずは一番手頃で形が近い、小ぶりな真いわしで試してみた。
 まずは一つ一つ、丁寧にハラワタを取る。下ごしらえが終わったら、フライパンにごま油をたっぷりひく。安くてもいいから、ごま油で。ここだけは韓国っぽく。揚げ粉は、片栗粉:小麦粉を7:3くらいで、これは僕の好み。全体にまぶしたら、パタパタ叩いて余分な粉を落とし、ジュワッと油に投入。いい色がついてきたら、適当なところで上げて、出来上がり。
 ワサビと醤油をまぜまぜして、魚にチョンとつけて、いただきまーす。サクッ!うむ、美味い!やはりこの調理法と味付けは抜群に相性が良い。しかし問題は、骨である。真いわしだと味は非常に近いのだが、骨がいちいち食の進みの邪魔をする。あの丸揚げには、そんな邪魔な骨はなかった。むしろ、骨を噛むことさえ味のアクセントになるような、そんな爽快感がある程度の硬さだった。
 というわけで、第二候補、アジでチャレンジだ。しかしコチラは大失敗。味見を依頼した同居人に、「わさびじょうゆの意味がない。」とバッサリ断言され、骨以前の問題で敗北。確かに、わさびじょうゆより、ウスターソースやマヨネーズの方が合っていた。あ、そうか、それってアジフライか・・・。なんていう初歩的なミスを幾つか繰り返していたら、スーパーの品ぞろえから、もうこれ以上の追及は不可能と判断。多分、韓国では一般的だけど、意外に日本のスーパーで売っていない魚だったんでしょう。
というワケで、「骨を処理した真イワシを揚げたヤツ」が一番近いであろうという結論に勝手に達しました。
 その後諦めてネットで検索したものの、探し方が悪いのか、一切情報が出てこない。どなたか韓国に詳しい方で、魚の種類や料理の名称がお分かりになる方いらっしゃいましたら、当方までお知らせくださいませ。イワシでも美味しかったんだけど、今回は、ちょっと失敗かな。

 次回は、アイルランドを思い出します。

-ヒビレポ 2012年10月18日号-

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