ステレコ 第10回


by:元・音楽ライター 和田靜香(第8号で「ハッケヨイ、和田翔龍!」執筆)

ふつう「レコード(CD)批評」といえば、
「買いたい人のため」のものだろうが、
その逆があってもいいんじゃないか?と思った。
「捨てたい人のためのレコード(CD)批評」。
略してステレコ。

こう、あまりに暑さが続くと、暑さに疲れ、
エアコンに疲れ、身体の置き場がなくなってくるよね。

妄想するのは涼しい高原の風。
あああ。。。。

でもそんなのは無理な東京都中野区。
今日も歩きます!と夕方、
ジェイムス・ブラントの『サム・カインド・オブ・トラブル』を手に
さくさく歩き出した。

ジェイムス・ブランド。そう、あの「ユア・ビューティフル」の人です。イギリスのシンガー・ソングライター。けっこう一発屋。なんというか、深みはあまりない。綺麗なメロディを少しクセのある声で切なげに歌ってはくれるんだけど、ううむ、それだけぇ。いつも、それだけぇ。心の浅いところを通り過ぎて深いところにあまり残らない。たぶん心の浅いところってヒダヒダみたいのが少ないんだよね。だからスウウウウと通り過ぎちゃう。心の深いところってヒダヒダみたいのが大きな突起になっていて、そこにガシガシひっかかる。残念ながらヒダヒダんところまで到達できないんだ。彼の歌は。

でもこの人、悪い人じゃないんだよね。昔、取材したときに、私、突然にひどい喘息発作に襲われて←台風だったの……「この咳は喘息で、風邪ではないのですが、ごめんなさい」と謝ったら、顔色一つ変えず、どんなにゲホゲホしても1度たりとも顔を背けず、淡々と話してくれた。ミュージシャンになる前はNATO軍としてボスニアの最前線に居たそうで、さすが死と隣り合わせにいた軍人は違うな、なんて思ったんだ。そして「日本ではどうにもならない状況を変えるために戦争したいと若者が言うこともあるんですよ」と言ったら、また眉根も動かさずに「リディキュラス(愚か者)」とだけ言ったの覚えてる。

そんな人だから、この明るい、やけに明るいアルバムを作ったのは、何か変化があったのかなぁ?なんて思いながら、目的地のスーパーに到着。小規模なスーパー。ママと子ども連れが2〜3組いて、子どもらが野放し。ママは勝手に商品選びをしていて、その間に子どもらがネギだのトマトだのズンズン指で押していく。な、何やってんだあああ?

誰も怒らないから、ツカツカツカツカと行って、こらっ! 触るんじゃない!と怒ってやった。子どもら、びっくりして向こうに行った。そこへオカンが登場したが、オカン、子どもらに「何してたの?」も聞かないし、なんというか、子どもらに無関心なんだよねぇ。

魚売り場に行ったら、もうちょっと年長の子が、1個ずつ販売の魚をとるトングを手に、魚を突っついてる。注意したるか? と思ったのだが、彼女の手にはお財布。ハッ。。。もしやお買い物に来た女の子? 家は貧乏で、どれか1つだけ買おうとしてるけど選べない? そんな物語がグルグルしてるうちに、ジイイイと見ていたので、その子、行ってしまった。で、行ってしまった先にはオカン。なんだ、やっぱりオカンがいやがるっ!

腹立つわっ! やっぱりただのいたずらで。オカンは子どもには知らん顔だったんだ。最近の若い男性は草食系とかいろいろいうけど、最近の30代以下の人たちの、あらゆることへの「無関心」ぶりには、ときどき寒気がする。

興味ないんだよね。あらゆることに。子どもにさえ。逆に子どもにだけは異様に興味ある人もいるけど。寒気がするな、こういう風潮。中野だけ?

興味があるのはスマホの、あのたった縦横10数センチの世界の中だけって、異常だよ。誰もこの世をしっかり生きてない。みんな幽霊なのか?

ジェイムス・ブラントは幽霊退治もしてくれなくて、ステレコさんです。

もう1枚。マルーン5の『オーヴァーエクスポーズド』というアルバム。

私は毎月、月始めに近所の神社にお参りに行きます。えっ? 神道なんですか? 違います。とにかくすがるものがないので、身近な神社に行ってるのです。おみくじが楽しみなんです。

9月もパンパン、おねがいしますっ!とふかぶかお辞儀した。お願いして引いたおみくじ、あれっ? どっか行ってしまった。。。一体どこへ? おみくじは必ず持ち帰ってくることにしてるのに。しかも、今月の私にぴったりな励ましの言葉があったのに! 確か、受けたお役目を一心不乱にやれ、みたいな。うん。そんなのだった。

どこへ行ってしまったんだろう?

でもそんなおみくじ引いたりなんやりしながら聴いたマルーン5。元々彼らって、ウネウネするビートがレッチリっぽいよね? レッチリのパクリ?と最初は思ったんだけど、今回はそのウネウネがレッチリ風でありながらも、同時にブリトニー・スピアーズのウネウネにも近い。えっ? ブリトニー・スピアーズもウネウネしてるっけ? してるのよ。あの子、ダンサブルだから、意外とウネウネしたビートが揺れたりするのよ、歌声自体が。

それでマルーン5はウネウネとブリちゃんしまくりで、なんか軽佻。ブリちゃんがウネウネするのは嫌いじゃないが、むくつけき男たちがウネウネとブリちゃんみたくするのは、どうも好きじゃないなぁ。

CDの帯に書かれた小さな文字(←CDに書かれてる文字って老眼鏡世代には死ぬほど辛いです。作ってる人たちが若いから、気づかないんだろうけど)によると、「制作過程に外部ライターを迎え、新たなる境地を生み出した新作」とあるけど、よもやその外部ライターってのが、ブリちゃんとこのライターなんじゃないか? と思ってみたら、やっぱりマックス・マーティンというスウェーデン人でね、アメリカのジャリタレどもの音楽を一気に取り仕切ってる、とうぜんブリちゃんも仕切ってる、アメリカ版小室か秋元?みたいな人がプロデューサーだって。わっかりやすい〜〜〜〜〜。

そんなわっかりやすい〜〜〜〜ことシデカシちゃってる、バンドとしては行き詰ってることありありのCDはいりまへんですわ。もうしわけないですがね。もっと己の道を精進しましょう。後で泣きを見ます。ステレコです。

帰りに若い女の子が焦った様子で「この辺にファミマありませんかっ?」と聞いてきた。ファミマ? セブンならあるんだけどぉ。。。ファミマ?? と考えて、けっこう遠いファミマを教えてしまったんだが、もしかしたらもう少し近くにあったかなぁ。「ファミマじゃないとお金が下ろせないんですぅ」と叫んでいたけど、それって三井住友? 「がんばれ〜〜〜」と送り出すと、「はいいいいいい」と叫んで、彼女は自転車をグイグイ漕いでファミマへと向かって行った。ああいう馬力。ああいうの。バンドにはああいう馬力が必要だね〜。

今週はここまで。

–メルレポ 2012年9月15日号(通巻第260号)

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