ぼんやりクッキング 第5回

カナダ・トロント カリフォルニア・ロール

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

(まずは謝罪を。前回、「次回はイギリス・スコットランド」と書きましたが、延期させていただきます。理由は、必要な調理道具が我が家になかったからです。現在ネット通販にて取り寄せておりますので、しばしお待ちください。)

 ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく

 と詠んだのは石川啄木でありますが、海外に長く滞在していると、無性に日本語が聞きたくなるときがあります。目も耳もずっと外国語に晒されて、頭が緊張しっぱなしで、脳みそをほぐしてあげたくなる。iPodに、落語やラジオを入れて持ち歩くクセがついたのも、完全にそのせい。旅の頼れるお供でした。

 それと同じで、日本食を食べたくなる瞬間、というのもあります。食べることで、頭と胃袋を休ませてあげたい。とはいえ、日本食は海外では決まって高級。「UDON」だろうと「KATSUDON」だろうと、決まって1000円以上はする。「美味さ」を追求しなければ、もっと安いものもあるんですが、以前イギリスで500円くらいの「MISO RAMEN」を頼んだら、味噌をお湯で溶かしただけの液体に、茹でた麺を入れる、という珍妙な料理が出てきました。味はもちろん、ノーコメントです。これではむしろ頭を抱えて逆効果。「日本食」を食べようと思うと、どうしてもある程度の値段を出さないといけない。安かろう、悪かろう。そんなときに便利なのが、意外にも「SUSHI」なんです。
 もちろん魚をちゃんと使っているものは高級ですが、「ROLL」いわゆる「巻き物」系は格安でテイクアウト出来る店が多い。油を使わなくてヘルシー、しかも野菜だけで作れるからベジタリアンにもウケがいい。「あっちの寿司ってマヨネーズがべちゃっとかかってるんじゃないの?」とよく聞かれますが、それは高級店、いわゆる「SUSHI BAR」の話。テイクアウトさせてもらえる一般的な「SUSHI」は、きちんとSOY SAUSEとWASABIを添えて出してくれます。

 そんな訳でロンドンでもニューヨークでも、「SUSHI」には非常にお世話になりましたが、一番日本人の僕の舌に合ったのは、カナダ一の経済都市、トロントでお持ち帰りしたカリフォルニアロール。「コンニショワ!」と適当な日本語で客を迎えるヒスパニックのオッサンが作ったそれは、酢飯でもないし、中に入ってるのはアボカドとカニカマだけど、ワサビ醤油をちょんとつければ、もうそれだけで僕の口の中には「NIPPON」が拡がっていた。周りを見渡しても、それらしい風景はないし、相変わらず耳に残るはイングリッシュでしたが、家にいるみたいにリラックス出来ていました。タバコ吸わないんで当てずっぽうですが、一服してるときってこんな感じなんですかね。

 さて、それでは今回も思い出して作ってみます。材料はコチラ。

 海苔   一枚
 米    適量
 カニカマ 3個
 アボカド 適量
 ごま   適量
 しょうゆ 適量
 ワサビ  適量

 

 まずは竹製の巻くヤツに海苔を置いて、ご飯を海苔の黒さが透けて見える程度に敷いて行く。カニカマと、同じ大きさに揃えたキュウリをご飯の上に一列に並べて、その上にアボカドをポトポト乗っけていく。クルクル巻いて、太巻きの形を整えたら、ボロボロにならないようギュギュっと全体に力を加えて。太巻きの両端を切り落として揃え易くしてから、綺麗に六分割して、お皿に並べる。上からゴマをふりかけて、ワサビ醤油を作ったら、完成。

 それではいただきます、チョイとつけてパクッ。うーん、やはりワサビはツンと鼻に来るぐらいが好みだ。そしてキュウリの食感が、辛うじてこの食べ物の「寿司」としての体裁を保ってくれている。ズバ抜けて美味くはないけれど、ひょひょいと六個を完食。しかし不思議なもので、日本を懐かしむために欧米で食べていた食べ物が、今日本で再現して食べてみると、ロンドンの裏道や、トロントの公園を思い出させる。同じものを食べても、ところ変われば、記憶も変わるものだ。

 今回作ったカリフォルニアロールは、材料の安さと入手の安易さ、そして手軽に作れることから、現在我が家の朝の定番メニューの一つとなっております。具材さえこだわらなければ、巻き物は時間がない朝の調理にはピッタリ。それも含めて、今回は成功かな。

 次回は、スペイン・イビサ島を思い出します。

 

-ヒビレポ 2012年11月1日-

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