ぼんやりクッキング 第6回

アンチョビのサラダ スペイン・イビサ島

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

「スペインってどのお店入っても本当に料理美味しいよね!」という意見に、全面的には賛成できないでいる。外国の人からしたら、日本食が全部醤油の味がしたり、インドの料理が全部カレーの味がするのと一緒で、僕にとってはスペインの料理は全部「しょっぱく」感じてしまうから。暑さ、そして昼間からお酒を飲む、というライフスタイルが、その原因の一つだろう。とはいえ、現金なもので、いざ現地に行ったらセラーノ(生ハム)だのトルティージャ(スペイン風オムレツ)だのをグイグイとビールで流し込むのですが。
 今回再現するのも、その例に洩れず、非常に「しょっぱい」「しょっぱい」料理。

「観光客だけじゃなく、この辺住んでる人も行くから行ってみた方がいいよ。」とホテルのフロントに教えてもらった、イビサ料理専門店を名乗るその店は、正午の開店前から既に行列が出来ていた。並ぶのって、日本人だけじゃない。
店主の太ったオッサンが、観音開きの扉を開いたらそれが開店の合図だったのか、我先にとドカドカ中に駆け込むスパニッシュ達。列を守るのって、日本人だけか。しかし独り身なことも手伝って、幸運なことに1周目で入店成功。「マジョルカから来たんだ」という合席になったスキンヘッドのオッサンと喋ってたら、「オラ!」と笑顔で店のお姉ちゃんがメニューをくれた、さっと目を通す。「トルティージャ」「エビのからあげ」「白身魚のホイル焼き」、スペイン語とカタラン語の「2ヶ国語」表記のメニューからは、ヨダレが垂れそうな名前が踊り狂っていたが、目を引いたのが「アンチョビのサラダ」。うん、まずは前菜からじっくり攻めてみよう。
 お姉ちゃんに「エスト・イ・ヴィノ・デ・ブロンコ・ポルファヴォール!」とメニューを指さし、ひとまず前菜と白ワインをオーダー。数分後、キンキンに冷えた白ワインと一緒に運ばれて来たのは、掌サイズにちぎられたレタスの上に、フムス(ひよこ豆のペースト)を盛り付け、その上にアンチョビを一匹丸ごと乗っけた、簡易な造りのサラダだった。しかし特筆すべきは、それが四つも出てきたこと。「取り分け用じゃなく、これで一人分よ~」と、お姉ちゃん。恐るべし、スペイン人の胃袋。
 周りでオーダーした人をチラ見すると、みんな一口でパックンチョ。なるほど、郷に入っては郷に従おう、パックンチョ!サクモグ。うん!最初は珍妙な組み合わせに感じたけど、レタスの食感が心地よいし、レタスとフムスが絶妙な塩梅でアンチョビの「塩気」を和らげて、舌の上で「ちょうどいい食感と塩味」が楽しめる。この三位一体、漫画「ハンター×ハンター」でレイザーを倒すために協力し合ったヒソカ(レタス)、キルア(フムス)、ゴン(アンチョビ)のコンビネーションに匹敵する。例えが分かりづらいか。
 ともあれこのサラダ、とにかく酒が進む。重くないし、適度にしょっぱい。4つペロリと平らげたころには、グラスは空になって、良い感じに食欲も刺激されたので、もいっちょワインとメイン何品かを「ポルファヴォール」。
 9月末のイビサの暑さと、乾いた空気で干からびた身体に、あの塩気とアルコールはスイスイと気持ちよく染み込んでいったのでした。

 では、今回も思いだして行きましょう。材料はコチラ。

 アンチョビ 4尾
 ひよこ豆  缶詰1個分
 ニンニク  一かけら
 水     ちょっと
 オリーブ油 ちょっと
 レタス   適量

 

 

 理想はアンチョビも作るのが一番なんですが、時間と手間がかかりすぎるので素早く断念。瓶詰めのアンチョビを購入して使用。ひよこ豆の缶詰は、都内だと「肉のハナマサ」で100円で売ってます。
 まずはレタスを掌サイズにちぎって皿に盛る。大きさはまぁお好みですが、僕は店に倣って掌サイズに。
 続いてフムスの作成。本来、フムスはもっと色んな材料や塩を入れるんですが、今回はあくまでアンチョビのサポートなので材料は最小限。缶詰の水気を充分に切ったひよこ豆と、にんにく一かけらをフードプロセッサーに入れて、その上から少量の水とオリーブオイルを垂らし、スイッチON。粘り気が出るまでミキサーかけたら、それをレタスに盛って、その上にアンチョビをトッピングして、完成。フムスを多めに盛ってしまったので、今回は3つ。
 では、白ワインも準備して、いただきまーす。パックンチョ、サクモグ。うん、ちょっとフムスの水分が足りなかったけど、それ以外はキレイに再現出来ている。すかさず酒を飲みたくなるところもソックリだ。キュッと白ワインを一口、美味。用意しといて大正解。
 ただ、どこか物足りないのは、恐らく最近寒いから。こういう冷やっこしょっぱいツマミと、キンキンに冷えた白ワインを美味しくいただくには、「夏」という最高の調味料が大事なんですなぁ。

 料理自体はちゃんと出来たけど、来年汗かきながら作って、食べて。それで「成功」としたいと思います。てなワケで、今回は敢えてちょっと失敗。

 来週は、中国・北京を思い出します。

-ヒビレポ 2012年11月8日号-

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