昭和歌謡宅急便 第9回

東京ラビリンス

 

田中稲(第8号で「K文学館の散歩者」執筆)

 

さて、いきなりですがみなさん、東京駅で泣いたことはありますか。
私はあります……。コインロッカーの場所が分からなくなって(泣)。

忘れもしない。2年前、仕事の打ち合わせのため単身で一泊二日上京した時のこと。
大手出版社にゴロゴロと旅行用カートを引きずっていくのはカッコ悪いわッ、と鼻息を荒くし、東京駅に到着するやいなや、目についたコインロッカーに荷物をブチ込んだ。
そして、地下鉄に乗って打ち合わせに行ったはいいが。仕事の話もスムーズに終わったのはいいが。

東京駅に帰ってきて顔面蒼白。
コインロッカーがたくさんありすぎて、どこに入れたかサッパリ分からない!!!

駅周辺を彷徨う事2時間。記憶の糸を辿りどうにかこうにかマイ・ロッカーを見つけた時は、安堵のあまり本気で両手で顔を覆い泣いた。周囲はきっと「あの人、男に捨てられて故郷に帰るのね」と思っていたに違いない(いやいや思ってない思ってない)。

その後も私は上京するたびに東京駅で迷い続け、延々地下鉄の改札を探していたらいつの間にか大手町駅に着いていた、という失敗は10回を超えた。もはや、私の中で大手町駅は東京駅の一部である。

ここ2年ほどで東京のクライアントさんが増え、2か月に一度は大阪から上京しているが、出口を間違えればもうそこはラビリンス。ええ、もう毎回脳内で「トーキョー迷子」(中島みゆき/1991年)が流れてますとも。

そして今回も、11月14日、TBSラジオ「えのきどいちろうの水曜wanted!」に呼んでいただき、一泊二日で単身上京することになったのだが。

せっかく東京に行くんだから営業もぶちこんだれー、とよく企画を見て下さる編集者さんに
「別件で赤坂に用事がありますので、そのあたりの待ち合わせだとありがたいのですが」
とメール送信すると。なんと

「では、赤坂見附の交番前で」
という驚愕の返信が。

げっ(汗)。しまった。「そのあたり」と書いてしまったのが災いしたッ!!
赤坂と赤坂見附って近いの? 遠いのッ?? 地図を見ると微妙。うーむ、移動に電車を使うのは、明らかに遠回りでバカバカしい位置である事はさすがの私も分かる。が、歩くと絶対迷う。

私は頭を抱えた。

結局、どうしたかというと、赤坂見附で打ち合わせが終わった後、編集者さんに
「ああああ赤坂駅まで連れてってください」
とヘコヘコと頭を下げて頼み込み、駅まで連れて行ってもらいました……。

さて。赤坂駅まではどうにか無事たどり着いたものの、宿泊予定の「ホテルビー赤坂」までは1人で行かねばならない。地図は一応あるのだが、この時点ですでに夜。周りは真っ暗で地図もロクに見えない(号泣)。心の余裕もサッパリ失った私は予想通り迷いまくり、半泣きでTBS付近でマネキンの如く立っておられた警備員様3人にリレー聞きし、30分ほどかかってようやくどうにかたどり着いた。

ホテルの看板が見えたときの感動たるや。ある意味、これも旅の醍醐味……!
部屋で食べたファミマの唐揚げは達成感が絶妙なスパイスとなり、抜群の美味であった。

ラジオ出演の際、「ホテルビー赤坂」から歩いて3分ほどの場所にあるTBSまではさすがに迷わなかったが、本番、緊張してトークの行方が迷子に(泣)。それを余裕で受け止めフォローして下さるプロの方々の仕事に感動したです…(上手に文字に出来ない!思い出は美しすぎてっ)。
本当に良い経験をさせてもらいました。この心の宝石、大切に今後に活かします!!

しかし次の日。昨夜の緊張が両肩に来たのか、首が全く回らない!!
どひー。神保町の「三省堂本店」で開催されている季刊レポプレゼンツ「笑う本棚」を見に行くと決めていたのに、なに、どうすんの、このロボットみたいな上半身。
グギギ、と無理やり体を斜め上に折り曲げ空を見る。天気は快晴。大丈夫!歩いてりゃ体のコリもほぐれてくるってもんよ。レッツゴー!

…ということで、さっそく赤坂駅で事前に印刷してきた地図を見る。が、ここで痛恨のミスが発覚。私は↓の三省堂本店の店舗紹介に載っている「駐車場」の地図を印刷してきてしまったようなのだ。

http://www.books-sanseido.co.jp/shop/kanda.html

矢印があっちゃこっちゃバラバラの方向を指しているので「ヘンな地図!」とは思っていたのだが。そうかー、駐車場の地図だったんか。でもまあ、端の方に「三省堂書店本店」ちゃんと載っているので地図としては有効だろう。

ところが、そうスンナリとはいかなかった。
この地図を見て、カンのいい方ならすでにピンときているだろう。
そう。デカデカと「御茶ノ水駅」と書いてある。
私はこれを見て最寄駅が「御茶ノ水」と思い、地下鉄御茶ノ水駅に降り立ってしまったのだった(泣)。

「“神保町本店”なのに、御茶ノ水が最寄ってへんなのー」
と思いつつ、地図を見ながらエンヤコラと坂を下って行く。まず、目指すは明治大学リバティータワーねッ。回らない首を気にしながら、ガラガラとカートを引きずりオノボリサン度100%で地図と周囲の建物を見比べ進んでいく私。

そして10分ほど歩いてやっと、地図にある大切な「表記」の気が付き、足が止まった。
三省堂書店マークの側に、小さくちーさく描かれた「神保町A5出口」の文字が……。

ぎえーーーーー!! やっぱり最寄駅は神保町!!!!

明治大学リバティータワーの前で思わず座り込んだ私。

学生たちよ、答案用紙だけでなく、地図もちゃんと見直しましょうね。嗚呼、あまりにも哀しい42歳、流離の冬……。涙目で御茶ノ水の空を見上げる私。
いや、これもきっと旅行の醍醐味。迷ったからこそ、明治大学リバティータワーの存在を知った!!

東京へは、もう何度も行きましたね。
「東京」(マイ・ペース/1974年)を口づさんでみる。ふと耳元で吹いた風の音が優しく

「何度も来てるんやったら、そろそろ慣れんかい〜」

と囁いているように聞こえた……。

 

ふっ、広いわ、東京。さすが花の都。
「笑う本棚」&「本についての一考察」については次回に続くッ!!

 

-ヒビレポ 2012年11月28日号-

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