昭和歌謡宅急便 第10回

踊る本棚

 

田中稲(第8号で「K文学館の散歩者」執筆)

 

さて、いきなりですがみなさん、本屋で写真を撮った事はありますか。
私はあります。……許可必要だったらどうしよう(汗)。けっこうドギマギしました↓

さてさて大好評のうちに11月末終了した三省堂本店の「笑う本棚」。
ちょうど上京した時開催中だったので行ってきました
(行き着くまでの過程は前回の昭和歌謡宅急便「東京ラビリンス」でどうぞ!)

4Fに上がると、「いらっしゃい!」とばかりに黄色い看板が迎えてくれ、その下にズラリと並ぶはレポ陣大プッシュのオススメ本。
「さあ俺たちを読め! ジャンル縛り無用、オモロイ本はオモロイのだ!」と主張する文豪系やらサブカ系ルやら食べ物系やらみるからに濃厚な書籍たちが放つパッションが湯気となって湧き上がっている(気がする)。そしてそれを無限の愛で受けとめるかのようにヒラリと棚にかけられたスペースバッグが悠然と微笑んでいる(気がする)。

私は、すでにターゲットを南伸坊さんの『本人伝説』に絞っていたのだが、それが置いてある真ん前で、オッチャンがものっすごい真剣に立ち読みしており微動だにしない。
うむう、「本人伝説」を手に取るには、オッチャンの脇腹あたりに手を伸ばさねばならない。どうしよう。「ちょっとすいませーん」とエクスキューズミーすべきか。考えているうちに、もう1人遠慮がちに「笑う本棚」の周りをグルグル回る謎の青年が現れた。
オッチャンの様子を見ながら惑星のようにグルグル回り観察する私&謎の青年。なにやらオッチャンを太陽とした銀河系みたいな状態になっていた。むーん、小宇宙!

「笑う本棚」を見て改めて再確認したが、私が紙の本をこよなく愛するのは(電子書籍の将来性をどれだけ認めたとしても!)大中小・色トリドリに並べられた何冊もの本によって作られる「本棚」がたまらなく好きだからだ。

なんというか、書籍の厚さ・背の高さ・表紙デザイン込みで雑多に作られる、永遠の未完成アートとでも言おうか。

「本棚を見ればその人の性格や生き方がわかる」とまでは決して思わないが、「興味の矛先」みたいなものがうっすら感じられて、すごく愛しい。
思い起こせば私の本棚も、幼少から現在においてその彩りをコロコロと変えた。

一番本棚が輝きを放っていたのはファンタジー小説に凝っていた小学校時代だろうか。長靴下のピッピやらメアリーポピンズ、スプーンおばさん、ドリトル先生などがズラリと本棚で仲良くたたずんでいた。この手の本は挿絵も可愛かったので、学校の図書館で岩波文庫を借りて読み、お気に入りはお小遣いをためて、あえてハードカバーで買い、著書別に並べてうっとり眺めたことを覚えている。

しかし思春期特有の「悩まなくていいことをえんえん悩む」スパイラルにハマってしまった暗黒の中学校時代は本棚の色も一気に荒みまくった。太宰やら中也やら本棚から溢れ出る「生まれてきてすいません」感。

その後、高校生になっていきなり「本は一つのオブジェよ!」とばかりに画集ばかりを集め出した。我ながらこの急激なメンタルの変化の原因は未だにさっぱり分からないが、人生において一番金がかかっていた本棚はこの時期だったのは間違いない。

大学生時代はゼミの関係で心理学の本を買い漁ったものの、買った時点ですでに勉強した気分になって中身を一切開かないという本が続出。河合隼雄さん本や斎藤茂太さん本が「せめて第一章だけでも読んでくれや〜」とウンザリした顔で並んでいた。

嗚呼、懐かしい本棚!! 私は引っ越しする30歳まで、ずっと同じ木製の本棚を使っていたが、クルクルと目まぐるしく変わる中身の書籍群たちを思い出すだけで胸がいっぱいになる。

私の本棚だけではない。『悪霊島』やら『悪魔がきたりて笛を吹く』やらオドロオドロしい題名が並ぶ母のサスペンス本棚や、丹波哲郎の「大霊界シリーズ」を集めていた姉のあの世とこの世は地続き本棚、「並べているだけで頭がよさそうに見える」と三島由紀夫を買い並べながらも、その裏にヌード写真集をこっそり隠していた父のナルシスト&エロ本棚など、「生き方・性格」の一括りでは表せない「好奇心と向上心と秘密」みたいな、ものすごい可愛さを感じるのだ。

スマホなどでダウンロードした書籍の名前がズラリと一覧で表示されるより明らかにかさ張るが、部屋の一角をガッツリ取り、埃をかぶりつつも「ほーら手にとってごらん!」という本棚の濃い自己主張を私は愛する!

私の最近の本棚は、もっぱら昭和文豪寄りだ。文庫が多いので見た目は地味だが中身はピリリと辛い!けれどこの先、きっとまた違う色に染まるはず。我ながらそれがとても楽しみである。

さて、今回は日本の作家が描いた作品の映像化の中で、非常に心に残った音楽をご紹介。

まずは映画「次郎物語」(井上靖原作)の主題歌「男は大きな河になれ〜モルダウより」(1987年)。

さすがはさだまさし。あの名曲「モルダウ」に歌詞を付けるとはだれが発想しようか!
「北の国から」みたいに全編ハミングで通したらどうしようかと思ったが、ガッツリ「次郎物語」の世界観が歌詞に乗り素晴らしい。

 

次にこれまた映画「悪霊島」(横溝正史原作)の主題歌「レット・イット・ビー」(1970年/ビートルズ)。
どこか哀しく美しいメロディーに「なにこれ!!」と仰天したのは私だけではないだろう。私はこれでビートルズを知った。

最後にドラマ「鬼平犯科帳」(池波正太郎原作)のエンディング「インスピレーション」(1995年)。
音楽はビールのCMでおなじみのジプシーキングス!!この組み合わせを思いついた人はスゴイと思う。サムライのチャンバラとギターのジャンジャカ具合のマッチングに「負けました!」と叫びたくなるほどだ。

……つまり、日本の懐かしい風景には洋楽が素晴らしく合う!
ありゃりゃ、タイトルの「昭和歌謡」じゃない内容となってしまった。
とほほ。まあ、たまにはいいかな……(汗)。

 

-ヒビレポ 2012年12月5日号-

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