今朝はボニー・バック 第10回

ビデオのこと

 

ボニー・アイドル(第9号で「人生とはトイレからの距離である、のか?」執筆)

 

前回ちらっと書いたように、ぼくはほとんどテレビを見ない。朝起きて目が覚めるまでテレビは点け放しにしておくが、この時間は含めない。ちゃんと見てるのは、布団から出て歯を磨いている時、画面左上のデジタル時計とその隣の天気予報ぐらい。「番組」を見ることは年に数回あればいい方だ。
よって、テレビは見れればいいので未だにブラウン管のアナログテレビ。番組の録画はビデオデッキ。一応、DVDプレイヤーも持っているが、メインの再生機器もビデオだ。映像ソフトもVHSで十分。

なので、ブックオフの店頭や駅前なんかでやっている中古ビデオのワゴンセールには必ず立ち寄り、掘り出し物を探している。川越駅でやっていたワゴンセールで黒澤明の初期作品が1本100円で売っていたのをまとめ買いしたこともあるし、吉祥寺ブックオフで「仁義なき戦い」シリーズ全9作品をゲットしたこともある。たしかにブルーレイやDVDの方が画質や音声で優れているが、いい作品は多少ノイズが入っていても面白いことには変わりはない。

「ほとんど見ない」とはいうものの、テレビは無音で点けっぱなしにし、いつおもしろい番組が始まった時にも備えてビデオデッキには常に生テープを挿入している。今年だと、早朝、突然始まったロンドンオリンピック閉会式のザ・フーの映像を録画することができた。

この、ビデオの生テープ。HDDレコーダーの普及で市場からなくなってしまうのではと心配していたが、今のところ、ぼくのようなユーザーがまだたくさんいるからなのか、ヨドバシカメラやビッグカメラで普通に購入することができる。何より、ぼくの家から徒歩3分の距離にある100円ショップに売っているのが嬉しい。

1年ほど前、生テープの予備が切れたのでその100円ショップに立ち寄り、120分のテープを買った。ある日、なんかの番組を録画するため、そのテープをビデオデッキに挿入した。何の拍子でそんなことをしてしまったのか忘れてしまったが、ぼくはテープを再生してみた。当然、「ザー、ザー」という音とともに、画面は一面、砂嵐。下ろしたての生テープだから当然だ。今度は早送りをしてみることに。すると、砂嵐は止み、ノイズの向こう側に何やら映像が出てきたではないか。外人が腰まで水に浸かりながら慌てふためいている。字幕には「母ザメ」とか「人間でおびき出そう」の文字。どっかで見たことある映像だ。これは、「ジョーズ3」だ!

 

 

おそらく、このテープは前に、金曜ロードショーかなんかで放送した「ジョーズ3」を録画したもののリサイクル品であろう。元のデータを完全に消去しきれなかったのだ。このビデオテープのメーカーの名前は名誉の為に秘すが、さすがは100円ショップ。良い買い物をした。

まるで「リング」の「呪いのビデオテープ」もどきのような話だが、ぼくはかつてビデオにまつわるもっと怖い経験をしたことがある。

ぼくは高校時代、自分の部屋に2台ビデオデッキを置き、レンタル店から借りてきたアダルトビデオを片っ端からダビングするという作業を日夜繰り返していた。120分テープを3倍録画して360分、全てエロ。しかも収録されている作品はいずれも秀作のみ。いつしかそのテープは「ボニー・セレクション」(仮)などと呼ばれ、友達の間で評判を呼び、他校の知らないヤツにまで流通することに。しかし、「貸したエロビデオは二度と帰ってこない」の格言通り、セレクションの数は一本、また一本と減り、僕の手元にはまったく残らなくなってしまったのである。

焦ったぼくは兄キの部屋に忍び込み、兄キ御用達のエロビデオを無断で借りることにした。兄キとぼくは2人兄弟ということもあってか、子どもの頃から仲が良かった。が、そんな2人にもタブーはあった。下ネタである。「うんこ」や「タマキン」なんかのバンカラ風なのはOKだが、女絡みの下ネタは一切禁止。「時計仕掛けのオレンジ」すら別々の部屋で見ていたほどである。

当然、2人の間にエロ本やエロビデオの貸し借りもなかったが、実際はお互いがお互いのエロビデオをばっちり見ていたのである。つまり、公に「エロビデオ貸してくれよ」というのは御法度だが、気づかれない分には相手の部屋に忍び込み、隠してる場所から掘り出して見てもいいという暗黙の紳士協定を結んでいたのだ。もちろん、テープの再生位置なんかを元に戻しておくのは紳士として最低限のマナーである。

その日、久しぶりに兄キの部屋に忍び込んだぼくは、エロ物件の隠し場所であるアディダスの空箱を開け、一本のテープを持ち出すことに成功する。自分の部屋に戻り、ビデオデッキにそのテープを挿入すると、いやに画質の悪い映像が流れはじめた。しかもどっかで見たことある女優。これは、ぼくがかつてダビングした作品だ。つまり、兄キはぼくがダビングしたテープを、ぼく不在の時に持ち出し、さらにダビングしていたのだ!

 

-ヒビレポ 2012年12月4日号-

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