いきもの事件史 第10回

電気を止めるやつら

 

日高トモキチ(生きものなんとか紀行連載中)

 

「大飯原発に押し寄せる大量クラゲ、相次ぐ出力減

 関西電力は2日、福井県おおい町の大飯原子力発電所3、4号機(各118万キロ・ワット)で7月末、大量のクラゲが取水口近くに押し寄せて冷却用の水を集めにくくなったため、約17時間にわたって出力を引き下げたことを明らかにした。

 引き下げ幅の最大は、3号機が1・8%、4号機が1・3%。再稼働工程でクラゲのため出力ダウンしたのは7月8日以来2度目。

 関電によると、フル稼働状態だった7月30日午後からクラゲの量が増え始め、3号機は午後3時30分から、4号機は同4時頃から段階的に出力を引き下げた。クラゲは翌31日未明に減り始め、午前8時30分に出力を元に戻した。

 取水口にある漂流物を除去するスクリーンにクラゲが張り付き、取水能力が3割以上落ちたという。回収したクラゲは約200立方メートルにも及び、関電は対策を検討している。」(2012年8月3日11時57分 読売新聞)

「クラゲも再稼働反対!」と騒がれた今夏の出来事である。ネタとしては面白いが、まあ、そんな訳はない。現象としてはクラゲが大発生しましたというだけのことで、あまり話題にはならなかったが以下のようなニュースがある。やはり今年の夏のおはなし。

「クラゲ大量発生→電力不足? 海水取水できず火力運転停止 関西電力、頭痛の種

関西電力がクラゲの大量発生に悩まされている。例年は数件というクラゲによるトラブルが今年は100件超も発生。梅雨明け後もその数は減らず、蒸気を冷やす海水を十分に取水できずに7月下旬には火力発電所が運転停止に追い込まれた。関電の電力供給力は大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働で一息ついたが、クラゲ対策に有力な手段はなく、関係者は頭を抱えている。」(2012年8月5日 Sankei Biz)

むしろ火力発電所を止めてるぞクラゲ。

 

イスラエルの火力発電所のクラゲが詰まった取水口(acidcow.com より)

 

以前レポ本誌でもちょろりと書いたが、クラゲというのはそもそも何の前ぶれもなく大発生するたぐいの生物である。発電所の機能を麻痺させたのはその結果にすぎない。

比喩でなく「電気を食う」生物というのは、今んとこニョロニョロとか電獣ヴァヴェリとか怪獣ネロンガとか、いずれにせよ空想世界にしか存在しない。が、間接的に電力配給を妨げる連中となると、クラゲ以外にも色々とござる。
もっとも被害が多いのは、ネズミだ。
このミッキーやミニーのお仲間はとにかく何でも齧る。配線や電線の被覆部分なんか大好物だ。
以下、ねずみ駆除協議会ウェブサイトにまとめられた被害事例より抜粋。

「ネズミが原因 信号機トラブル
 岡山県津山市にあるJR姫新線坪井駅で、普通電車が信号機が赤のまま変わらず発車できなくなった。JR岡山支社の調べでは、同駅構内にある信号ケーブルの一部が、ネズミにかじられ、故障したらしい。」(1995年3月2日 山陽新聞)

「突然、真っ暗 公演中止
 ネズミが送電線かじる? 福岡市民会館で突然停電事故が起き、クラシックの公演が中止された。会館外からの送電線をネズミがかじって、回線がショートした模様。」(1994年5月16日 西日本新聞)

「ネズミが電気を止める
 東京・秋葉原のビルで、ネズミが高圧電源に触れて焼死、約13時間も電気が使えなくなる騒ぎがあった。電気街で電気のありがたみが身にしみる1日となった。」(1994年10月13日 毎日新聞)

最後のは齧ったわけじゃないですが自らの生命と引き換えに電気を止めてます。やめろよ誰得だよ。
2008年にはアルバニアの首都ティラナで、追っかけっこしていた猫とネズミが高圧線施設に入り込んでショートさせ、全市が72時間にわたって停電するという事件が起きている。丸三日も首都機能をストップさせるトムとジェリーすげー。仲良くケンカしなとか言ってられねー。さすがに感電死しちゃったそうですが。
電線じゃないが、LANケーブルを牛が食べたために相手と連絡が取れなくなったという事故も今夏インドであったそうな。牛ねえ。インドでは聖獣だから仕方ないのかな。

ちなみに貧乏学生やってた頃、電気は半年に一度くらい止めてました。だいたい電話はすぐ止まります。次がガスで、3番目が電気。水道はよっぽどのことがない限り止まりません。あ、料金未払いによる処分の話です。
あの頃待ってもらった経験があるから、少しだけ東京電力に甘いのかもしれません私。
少しだけね。

 

-ヒビレポ 2012年12月8日号-

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