ぼんやりクッキング 第10回

スイス・ルツェルン 牛しゃぶスープのシェリー割り

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

 昨年秋ごろの話。イギリスでの夏の出稼ぎを終え、スイスに嫁いだ友人を訪ねに、チューリッヒの南に位置するルツェルンという街に行きました。やたら物価が高いスイスで、友人のチキータ(日本人)とフィリップ(スイス人)は「泊まってきなよ!」と暖かい言葉をかけてくれていたので、僕もぬくぬくとそれに甘えることに。
 数日間滞在させていただき、初日に御馳走してもらったのは、御存知チーズ・フォンデュ。「ウェルカム・トゥ・スウィッツァーランド!!」ということで。もちろん美味。びみびみびみ。トロトロに溶けたチーズをパンにつけ、パクリ。にょほほほほ、とても日本に売っているチーズでこのコクは出せない。
 とはいえ、チーズ・フォンデュは毎日食べられている訳ではない。年に一回食べるか食べないかの贅沢な嗜好品である。それがスイスという国の代名詞になっているのだから、まぁ「日本人は毎日スシ食ってるんだろ?」と外国人に言われても、気を悪くしないように願います。僕らも似たようなことやってますからね。

 そして色々一緒に遊んで最終日、「これもパーティーメニューなんだよ!」と言ってチキータが作ってくれたのが意外や意外、牛肉のしゃぶしゃぶだった。
「作り方は簡単で、お湯にコンソメスープの素入れて、それにくぐらせるだけ。こうやって」と肉の赤みが消えるまでお湯にしゃぶしゃぶっ、と洗って手本を見せてくれるチキータ。そして洗った肉は、なんと「マヨにつけて食べる」んだそうな。なるほど、やってみよう。しゃぶしゃぶっ!マヨにちょんして、パクリ。おぉ、そういうことか。コンソメスープに浸しているから、洋風の味付けでピッタリ正解。味もしつこく感じないし、むしろサッパリしている。ボリュームを気にせず、結構グイグイ食べられる。
「これ美味しいんだよー!」と言いながら、愛妻の手料理を頬張るフィリップ。そんな彼をニコニコと見守りながら、せっせとアクを取るチキータ。コンソメスープは肉を潜らせるのみなので、別皿で彼女はサラダも用意してくれていた。(幸せになったのね、ホロリ)とよくわからない目線で家庭を見守りつつ箸を進めていたら、いつの間にやらフィニッシュ。
 ありがとう、美味しかったよ~。とこれまでのお礼を述べようとしたら、「あ、シメのスープも飲んで~」とチキータ。ん? シメのスープとな? するといそいそと牛肉の旨味と脂身が詰まった潜り湯を、スープ皿に取り分け、そこに少量の甘口のシェリー酒をトポトポと注ぐ。ふわっと拡がるシェリーの甘い匂い。これで出来上がり。「はい、どーぞー!」と勧めてくれたので、どれ一口。スプーンですくって、ジュンジュルリン。な、なんじゃこりゃぁ!と、ジーパン履かずとも叫んでしまう。牛肉の旨味とコンソメの塩気がグッと高濃度で凝縮されたスープを、シェリーの甘味とコクがふんわりと包んでくれる。いや、これは参った。古今東西色んなものを口に入れてきたが、この組み合わせは予想だにしていなかった。不意打ちを食らった分、感動もデカいぜ。
「やぶくん気を付けて帰ってね~!」ありがとう、チキータ&フィリップ。最高の味土産をもらって、スイスを後にできます。外を見ると、もうハラリハラリと雪が。だけどなぜか、暖かい。まぁ、それって暖房が効いてるからなんですが。

 では、今回も思い出して行きます。用意するのはコチラの材料、二人分で揃えました。

 牛肉       200g
 水        適量
 コンソメ(顆粒) 適量
 シェリー酒(甘口) ちょっと

 

 

 まずは牛しゃぶ作りから。一人で牛しゃぶは寂しすぎるので、同居人も強制参加。しゃぶしゃぶっぽく土鍋にお湯を張って、「薄いコンソメスープ」になるくらい、コンソメスープの素をサラサラと入れたら準備完了。いざ、牛肉投入!しゃぶしゃぶっ、とそうして、自分たちでやって気づいたのは、凄まじい量のアク、アク、アク。とってもとっても出てくる大量のアクに、二人そろって大苦戦。「牛肉だからしょうがないよね~」なんて言いながら、アクをとっちゃ食べ、とっちゃ食べ。そういや、チキータもがっつく男どもを見ながら、せっせと取ってくれていた様な気がする。僕は、何にも知らない子どもだったよ。
 調味料も、マヨネーズ以外に、醤油、ポン酢、塩など、色々と試してみたが、結局マヨネーズに落ち着く。「まぁこの料理は洋風ってことだね」と同居人。仰る通りで。

 

 

 気が付けば牛肉もなくなるころには、お椀一杯分のアクが。代わりに残ったのは、琥珀色に透き通ったスープ。いよいよメインディッシュ。文字通り本末転倒だが、だってこっちの方が楽しみなんだもの。おたま一杯分をお椀に移して、シェリー酒を4:1くらいの割合でコポコポ投入。混ぜ混ぜして、ではいただきます! ジュルッ・・・、いかん、シェリーを入れ過ぎた。同居人も「ちとしょっぱい」と不満顔。即やり直し。お椀一杯のスープに、大さじ1程度、香りを付けるだけのつもりでさっとシェリー酒かけて、まぜまぜ。ふわっと拡がる甘い匂い。今度は行けるか? ジュルジュル、うむ美味! 「これがやりたっかんだね~」と、今度の出来には同居人も合点がいったようで、一安心。

 今回は、失敗、のち成功という、珍しいパターンでございました。シェリー酒は、成城石井で1500円くらいでボトルで売っています。牛肉は、なるべく良いものを使わないと、胃にもたれるかもしれませんね。これから冬本番ですので、是非ご家庭でお試しください。

 次回は、アメリカ・ロサンゼルスを思い出します。

-ヒビレポ 2012年12月6日号-

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