ぼんやりクッキング 第11回

アメリカ・カリフォルニア州アーヴァイン カニのチリソース煮込み

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

 意外に思われるかもしれないが、アメリカ合衆国には芳醇なシーフード文化が拡がっている。
 各州が強い地域色を持っているアメリカ、州が変われば食事も変わる。マサチューセッツ州のクラムチャウダーなんかが有名ですが、ラスベガスがある砂漠の街ネバダ州でさえも、カエルをフライにして食べる習慣があると聞きます。今回は、そんなアメリカのシーフードの一つをご紹介。

「レポTV」にも電話出演してもらったことがある、カリフォルニア州アーヴァイン在住、デイヴィッドの家に遊びに行ったときのこと。ディヴィッドが「めちゃめちゃ美味いシーフードを御馳走するよ!」と、愛車の窓開けて風にまかれて、レストランのある方へ。

 着いた先は、70名は入る店構えなのに大賑わい。これは期待できる。店のTVで流れているレイカーズの試合を「Shit!」なんて言いながら二人で眺めること1時間、ようやく席に通される。
 驚いたことに、テーブルには紙のテーブルクロスが。「オススメがあるからそれ食べなよ!」というディヴィッドの助言に従い、注文は彼にお任せ。しばらくして出てきたのが、真っ赤になったカニを更にもう一段階赤くした、チリソースの煮込み料理だった。それを、お皿も使わず、ウェイターが一匹まるごと目の前にドンと置く。なるほど、だから紙のテーブルクロスだったのね。
「さぁ食べようぜ!」と言うディヴィッドの右手には、細長いフォーク。そして左手にはペンチ。パキッ!と身体を折っては、フォークでホジホジ。見た目はかなり豪快かつグロテスク、漫画「進撃の巨人」の巨人達もこんな気持ちなんだろうか・・・。
 とりあえず、いただきまーす。おぉ、顔を近づけただけで、強烈な唐辛子とニンニクの匂いが。とりあえずペンチでパキッ!フォークでホジホジ、パクリ。うぉ、強烈!カニの身なんて少量なのに、ステーキを一切れ食べた時にも匹敵するインパクト。もちろんチリソースの濃厚さもあるだろうが、それ以上にカニという生き物が本来持っている味の迫力に拠るところが大きい。「カニの味わいを損なう調理法だ!!」とぷんすか怒る和の達人もいるかもしれませんが、いやいやチリソースだってカニを美味しく食べる補助線になっていますよ。
 物も言わず、最早レイカーズには見向きもせず、カニをほじくること数十分。気が付けばテーブルの上には、殻だけになったカニ2匹と、いつの間にか頼んでいた大量のバドワイザーの空き瓶だけに。チリソースでベタベタの口と手を拭いながら、「オイシカッタネ!」と日本語でディヴィッド、「りーりーないす!」と英語で返す僕。食べ終わった僕らの机上のゴミを、紙のテーブルクロスで包んでそのままポイしたウェイター。
 1から10まで、「ザ・アメリカ」なお食事でございました。

 さて、それでは今回も思い出して行きます。材料はコチラ。

 カニ
 水
 塩
 砂糖
 ケチャップ
 豆板醤
 コチュジャン
 ニンニク
 お酒

 

 

 理由は後述しますが、今回分量は明記いたしません。(これまでも「明記」してたかどうかは謎ですが・・・。)カニは、流石に自宅の机の上にまるっと置くわけにいかないので、足や甲羅など既にバラして売っているパックをスーパーで買ってきました。
 では、調理開始。まずはカニを鍋に入れたら、材料がかぶるくらいの水も入れて、沸騰させます。そしたら醤油、塩、おろしニンニクなど、順番に調味料をいれていくんですが・・・。どうもおかしい、いつまで経っても、どんだけ煮込んでも、あのときの様な爆発力のある風味が漂ってこない。試しにちょっとつまんでみても、明らかにパンチが足りない。理由は明らか、煮込み汁が薄いのだ。そうと決まれば話は早い。コチュジャンや醤油など、味の濃そうなものを次々と足していく。気が付けば、換気扇を回しているのに部屋中に香ばしいニオイが。これだよこれ。そんなワケで、レシピに細かい分量は書けなかったんですが、そこはまぁ目分量ならぬ鼻分量で。良いニオイがしたら、それでOK!!お箸でカニを器に盛って、完成です。

 それではいただきます。今回はペンチはいらない、お箸だけでホジホジ、パクッ!む、まだ何かが足りない。というか、恐らくあの店、煮込むときに水使ってないんだ。お酒だけで煮込んで、そこにばんばん辛味や旨味の調味料を投入した「原液」を寸胴に用意し、注文しちゃぁ漬けて煮込み、漬けて煮込みしているんじゃないかと推測。
 もう一回やり直すのも、それはそれで億劫。「これ十分美味しいけどねー」と同居人も言ってくれたので、普通の料理としてはこれで十分かな。「再現」という意味で言えば、カニを食べながらどんどん増えていくビールの空き缶が、料理の失敗を補填してくれました。

 今回は、ちょいと失敗ですが、これを本気で家で再現するのは、「家庭でゼロからラーメンをつくる」ぐらいの意気込みが必要だと感じました。ビールの進みが尋常じゃないので、再現される方はドリンクの準備も怠らないように願います。

 次回は、お待たせしました、イギリス・スコットランドを思い出します。

-ヒビレポ 2012年12月13日号-

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