ぼんやりクッキング 第12回

イギリス・スコットランド ハギス

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

 お待たせしました! 今回は、以前に調理機材不備のため再現しきれなかった、イギリス・スコットランドです。これまで、基本的には「美味しかったもの」を再現してきましたが、今回は「不味かったもの」を思い出してみます。スコットランドの伝統料理、ハギスであります。

 イギリスでテキ屋の仕事をしていたとき、スコットランドのお祭りに出店することがあった。グラスゴー出身の社長が、「ハギス食わしちゃる!!」と言って、昼食として屋台で買ってきてくれたのが出会いだった。
「羊の内臓のミンチを茹でとるんじゃ!!」という社長がウンチクと一緒に出してくれた皿には、茶色い塊と、マッシュされたジャガイモとニンジンが添えられていた。「これがスコッツの魂じゃ!!」とのこと、ふむ、では試してみよう。いただきまーす。お肉とポテトを半分ずつスプーンですくって、一気に一口、パクリ。

 ま、まずい・・・。映像作家の森達也さんが、オウム真理教をレポートした傑作ドキュメンタリー「A」で、信者が食べてるご飯をいただいて、「これメチャクチャまずいですよ」と思わず言っていたが、今なら気持がわかる。本当にまずいものを食べると、人はただ、「まずい」としか言えないのです。
 肉はいい、パサパサでしょっぱいだけで、美味くはないがまずくもないし、羊の臭みも感じないのでいいんですが、問題は野菜。べっちょべちょ。一口かみしめる度に、口の中にぬちょりぬちょりと嫌な食感が拡がっていく・・・。
「美味いか!?」と激しいスコットランド訛で迫られたら、「アイ!」(スコットランド語で“イエス”の意)と笑顔で返すしかない。心やさしい日本人の僕。社長の温かい眼差しに監視、ではなく見つめられながら、笑顔で完食したのでした。テネッツ(スコットランドのビール)で流し込みながら。

 さて、では思いだします。材料はコチラ。

 豚モツ 200g
 塩 大さじ1
 顆粒コンソメ 少々
 ニンニク 1片
 ウイスキー 少々
 バジルペースト 大さじ1
 ニンジン 1/2本
 ジャガイモ 1個

 

 

 本当は羊の内臓でやるべきなんですが、当然そんなものは日本のスーパーに売っていないので、豚モツで代用。もうこの時点でツッコミ入れたい人はいるでしょうが、しばしお待ちを。まずは豚モツとニンニクを、フードプロセッサーでミンチに。その後、塩、コンソメ、バジルペースト、つなぎでウィスキーを少々加えて、混ぜ混ぜします。その間に、ジャガイモとニンジンは茹でておく。
 さて、ここでスコットランド再現を遅らせてまで取り寄せた、蒸し器の登場だ。本場のハギスは、「羊の胃袋に入れて茹でる」と聞いた。そんなことが、各家庭で出来るわけがない。そこで思いついたのが、「蒸す」という調理法だ。直径26cmの蒸し器、ちょっとお高かったんですが奮発しましたよ。さて、まずは底に水を張って・・・。と、ここで、ふと肉を見て思う。これ、普通に焼くだけでいけるんじゃないか? 締切をズらしてまで、蒸し器を待ったのに、それはいかん。いや、しかし、焼いた方が楽だし、 何より美味しそうだ。
 天使と悪魔が戦った結果、僕は、オリーブオイルをフライパンにひいていた。
 フライパンで肉をジュウジュウと炒めて色目をつけると、これはまぁキレイそっくり茶色い「豚ハギス」になりました。蒸し器、すまん。
 グチョグチョの食感を再現するため、ニンジンとジャガイモは10分以上長めに茹でて、更にフードプロセッサーにかける。これで見事ドロドロに。ハギスとニンジンとジャガイモを、皿に三分割に盛りつけて、完成です!

 では、いただきまーす。スプーンに、ジャガイモとハギスを半分ずつのっけて・・・、パクリ!あ、豚だけど、ちゃんとハギスになってる。臭みはあるけれど、それをバジルペーストがちょうどいい具合に打ち消してくれて、食感も凄く柔らかいハンバーグの様で、悪くない。それに、ジャガイモもグチョグチョではあるけど、改めて食べると、この食感がこの肉の味には合っている気がする。何より、一口食べる度に、夏でも気温が一ケタ台の、あのスコットランドの寒い夏が舌に蘇る。

 ウィスキーをチビチビ飲みつつ、気がつけば完食。「まずいものを作る」という当初の予定からはかけ離れてしまいましたが、食事を楽しめたし、スコットランドを思い出したんで、まぁ今回は前向きな失敗としておきます。蒸し器は、お饅頭でも作ってみようと思います。
 久しぶりに、イギリスの社長にメールしてみようかな。

 来週は、ベルギー・ブリュッセルを思い出します。

 

-ヒビレポ 2012年12月20日号-

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