ぼんやりクッキング 最終回

ベルギー・ブリュッセル ジャガイモのチーズ煮込み

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

 ブリュッセルには、良い思い出しかない。ヒューガルデン、レフ・ブロンド、クウィーク、PUBごとに醸造しているオリジナル・ビール・・・。要するに飲んだ記憶しかないんですが、公園の中にもPUBがあるくらい、ビールを全面に押し出している街ですので、致し方のないことなのかもしれません。

 イギリスとかドイツ辺りだと、お酒は美味いけどツマミが・・・。ってなっちゃいますが、そこは美食のベルギー。名物のムール貝だけでなく、キノコのオイル漬けや、エビのフリットなど、どこに行っても中々気の利いたものを出してくれました。

 ある公園で行われたJAZZフェスティバルを取材していた時のこと。屋台がいくつも出ていたんですが、僕の心を射止めたのが、パエリア鍋一面にチーズを拡げていた、老夫婦が経営しているお店。見ると、気持ちよさそうなチーズの海を泳いでいたのは、ジャガイモ。「これなんていう料理ですか?」と英語で尋ねると、夫婦揃って目を見合わせて、パチクリ。あ、珍しい、フランス語しか出来ないのか。ブリュッセル、大体英語OKなんですが。しょうがないので、指で1を作って「1個ください」のアピール。おばぁちゃん、コクコクとうなずき3を指で作る。ハイハイ、3ユーロね。おばぁちゃんに渡し、おじいちゃんがポテトをチーズの海からすくってお皿に盛ってくれた。「メッスィー!」と唯一知ってるフランス語で御礼を言ったら、向こうも揃って「メッスィー!」と返してくれた。良い言葉ですね、メッスィー!

 どれ、お味の方は。トロントロンのチーズごと、フォークで刺して、フゥーフゥー、パクリ。おぉ、何とチーズの濃厚なことよ! これはジャガイモを美味しく食べるためにチーズをかけているのではない、チーズを食べるための素材としてジャガイモを使っている、そんな表現が適切でしょうか。日本の食品産業は世界中に誇れる水準だと思いますが、やっぱり乳製品だけは欧州には敵わない。しょっぱいだけじゃなく、確かなコクが感じられるチーズ。ハフハフしながら全部食べきって、気付いたことがひとつ。ビールを買うのを忘れていた。
 その後、仕切りなおしたことは、書くまでもございません。

 それでは、今回も思いだしていきましょう。用意したのはコチラ。

 ジャガイモ 3個
 チーズ 200g
 白ワイン ちょびっと
 牛乳 ちょびっと

 

 

 ワインと牛乳は、最初の最初、チーズを焦がさないためだけにちょいと垂らすだけ。あくまでも、チーズの味で勝負。では、調理開始。まずは、ジャガイモを一口大に切って、蒸かします。この後もう一度煮るので、まずは蒸かす。その間に、チーズを溶かします。お鍋に白ワインと牛乳を垂らし、弱火でコトコト。湯気が上がってきたら、チーズを投入。チーズの海を作ります。そこに、蒸かしあがったジャガイモを投入。「チーズで煮込む」くらいの意気込みで、足りないと思ったらこの段階からでもバンバンとチーズを追加して行ってください。トロトロのチーズの海で、ジャガイモを充分に泳がせたら、完成。お皿に盛って、いただきまーす。ハフハフ・・・、一口食べてわかるこれは失敗だ、根本的に、やはりチーズの力が足りない。日本で売られているチーズは、あくまで料理のサポートだが、この料理はチーズが主役。マーロン・ブランドやアラン・ドロンの様な、強烈な主張を持つ欧州のチーズが必要なのだ。

 とはいえ、これで終わっては収まりが悪い。何とか挽回するために、顆粒のコンソメを投入。サラサラサラと。どれ、お味の方は。ハフハフ・・・、うむ、さっきよりはコクが出ている。確かに出ている。だが、「これ美味いけど、クリームシチューだね」という同居人の言葉通り、最後まで「欧州のチーズが美味すぎる」という「そもそも論」に勝てなかった。

 ぼんやりクッキング、最終回にして、失敗であります。みなさま、ご家庭で試される場合は、デパ地下の高級チーズをご使用下さい。

 ひとまずこれでこの連載はお終いです。3か月、読んでくださいましてありがとうございました! 行った国の数だけネタはありますので、また何かの機会で再開出来ればと思っております。感想などございましたら、ツィッター上ででもお聞かせくださいませ。

 それではまた!

-ヒビレポ 2012年12月27日号-

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