いきもの事件史 最終回

発見の歴史

 

日高トモキチ(生きものなんとか紀行連載中)

 

ニホンカワウソの絶滅ではじめたこの雑文、締めは新種発見のおはなしにしようと決めていた。
だから、ヤンバルクイナである。

「沖縄で新種の鳥発見 クイナの一種 国内で百年ぶり

 沖縄本島北部の山地に、新種の鳥が生息していることを山階鳥類研究所(東京都渋谷区南平台、山階芳麿理事長)が発見、十三日明らかにした。
 この鳥はクイナの一種で、体長三十センチほど。くちばしと脚の鮮紅色が特徴。同研究所は学名を「ラルス・オキナワエ」和名を「ヤンバルクイナ」と命名、近く発行される同研究所報で発表する。
 日本国内での未知の鳥の発見は、ほぼ百年ぶりのこと。生息地や生息数、生態などの詳細はまだつかめていないが、空を飛べない可能性が強く、これが今まで発見されなかった大きな理由と見られる。環境庁も正式な報告を受け次第、保護策の検討に入る。」(1981年11月14日 朝日新聞朝刊1面)

百年ぶりの新種の鳥発見とあって土曜朝刊の1面を飾っている。ちなみにこの百年前に発見されたのは1887年に野口源之助らによってやはり沖縄で見出されたノグチゲラ Sapheopipo noguchii 。
そもそも日本の鳥類は開国後に訪れた外国人研究者たちにより明治期にほぼ発見され尽くしている。
1887という年には本格的な南西諸島の調査が行われたらしく、ノグチゲラ以外にもリュウキュウカラスバト Columba jouyi、ミヤコショウビン Halcyon miyakoensis といった同地の鳥たちの標本が採集された。
が、リュウキュウカラスバトは1936年頃に絶滅、ミヤコショウビンに至っては現在までに結局この一体しか見つかっておらず、種としての実在すら疑問視されている(記載は1919年)。
そうした中でのヤンバルクイナの発見報告は確かに朗報であった。

なお、この記事の時点ではまだ確定していないが、ヤンバルクイナは飛べない鳥だ。この仲間には飛翔能力を失ったものが少なくない。したがって島嶼部においてはしばしば独自の固有種がみられ、開発などによって簡単に絶滅してしまうケースも多い(モーリシャスクイナ、ウェーククイナ等)。
発見後30年を経て、現状は「開発による生息地の破壊および分断、交通事故、側溝への雛の滑落、イヌやノネコ、人為的に移入されたジャワマングースによる捕食などにより生息数は減少している」(Wikipedia)。
生息数は現時点ですでに1980年代の半分以下に落ち込んでおり、見通しは明るくない。それでも、21世紀の日本人はかれらを見殺しにはしないはずだ。たいした根拠もなく、私はそう信じている。

ヤンバルクイナ(Wikipediaより)

 

最後にもうひとつ、こんどは恐竜の発見のニュースを紹介しよう。

「”海の恐竜” クビナガリュウ 工高生が化石発見 いわき市 8メートル、ほぼ完全な形

 海の恐竜「クビナガリュウ」の化石が、福島県いわき市で見つかった。十九日から東北大学で開かれる日本古生物学会総会で、発掘者の国立科学博物館(東京・上野公園内)古生物学研究室の長谷川義和、小畠郁生研究員から発表されるが、太平洋を取り巻く地域で、一頭分まとまって発見されたのは初めて、というので、早くも学会の注目を浴びている。
 発掘場所は、いわき市久之浜町入間沢の県道下のガケ。付近一帯に広がる双葉層という地層で、貝などの化石を捜していた県立平工業高校三年の鈴木直君が一年半前「骨の化石が出た」と国立科学博物館に知らせてきた。」(1970年1月18日 朝日新聞)

名高いフタバスズキリュウ発見のニュースである。フタバは双葉層、スズキは発見者である鈴木直君に由来する和名だ。
鈴木君はその後着々と古生物学の研究者としての道をあゆみ、現在はいわき市アンモナイトセンターの主任研究員を勤めておられる。君とかいって1968年に高校生の方なんで私よりぜんぜん年上なんですが。

ところがこの化石首長竜、新種か既に記載済みの種類かが判断がつかず、実は長いこと「種類として」確定していなかった。
発見後38年を経た2006年5月になって、国立科学博物館の佐藤たまき特別研究員と真鍋真主任研究員、群馬県立自然史博物館の長谷川善和館長(当時)らによってようやく新属新種の首長竜と判明し、「Futabasaurus suzukii (フタバサウルス・スズキイ)」という学名で正式に記載されるに至った。

 


いわき市石炭科学館に展示されたフタバスズキリュウ骨格復元模型(2008 日高撮影)

 

最近、フタバスズキリュウ発掘現場近くで収録されたテレビ番組の恐竜化石発掘プロジェクトでも、ちゃんと首長竜が出てきたと聞く。
山の中にも土の中にも、きっとまだまだ私たちの知らない生きものや彼らが生きた証が隠れているのだ。
いつかそれらに出会える日のことを思うと、ちょっとだけ明日が楽しくなりはしないかな。ちょっとだけ。

それでは皆様、よいお年を。

 

-ヒビレポ 2012年12月29日号-

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