ちょっとプアンなタイ散歩 第2回

祭壇ヒエラルキー

 

吉野 歩(第5号で「カラスを飼うという愛の行方」執筆)
バンコクの街を歩いていると、東京の自動販売機以上に“あるもの”をよく見かける。

THE 祭壇。

民家や商店、デパート、ナイトパブに至るまで、その横っちょには、必ずと言っていいほど小さな社のようなものが作りつけられている。まるでお菓子を買うと絶対ついてくるおまけのように。しかしどうやら、メインである人間の建物より大事にされているようだぞ。プロ野球チップスのカードか、祭壇は。

これを鑑賞しながら歩くだけでも結構楽しいのだが、あまりにもいっぱいあるので、勝手に分類してみた。

 
■ベーシックタイプ

表参道のショップや中目黒あたりの小金持ちが持つとしたら、
だいたいこのレベルです。
「ほこら」(サーン ヂャオ)と呼ばれている祭壇。太い支柱の上に、タイのお寺みたいな建築が乗っている。写真のほこらは、中の上ぐらいのサイズである。

祀られているのは、土地の神様や「ピー」と呼ばれる精霊、あとは先祖の霊だ。ピーは、土にも植物にも石にも何でも宿っているという。日本の「八百万の神」に近い捉え方だ。

彼らは、人間に幸も不幸ももたらす。タイの人たちはそれを恐れて、家やビルなどを建てるときに自分のたちの住まいより立派なほこらを作るんだそうな。姑の土地で二世帯住居を建てるときの、嫁の心境に似ているんでしょうか。どうだろう。

だからここを拝むのは、施主やその親族。

散歩の途中で、学生と思しき男女が楽しそうにほこらを掃除していたのだが、どうにもお互い胸キュンのオーラが漂っている。はにかみながら見つめあったりしてさ。親族×恋人ってことは、いとこ同士だろうか? もしかして兄妹? え、やばくない。それじゃ禁断の愛じゃ~ん?! キャーーッ!!(赤面)

下世話な臆測がピーに読み取られる前に、退散。

 
■プレミアムタイプ

もしあなたが企業経営者や著名人であれば、是非このランクをご検討いだだきたい。
先ほどのほこらと似ているが、こちらは「廟(びょう)」という別の祭壇。
祀られているのはヒンズー教の神様たちだ。

だいたいの廟は、商売繁盛や地鎮、交通安全、金運などを祈願するもので、百貨店やホテルなど、大きなお金が動く商業施設に建てられていることが多い。だから自ずとビッグでゴージャスになる。

ほこらと違って、我々部外者が拝んでもご利益にあやかれるらしい。
実際、バンコクの人たちの間では聖地巡礼ならぬ「廟巡礼」が行われているとか。
バンコク伊勢丹には、象顔でお馴染み「ガネーシャ廟」。エラワン・そごう跡地の高級ショッピングモールには、「エラワン廟」といってブラスマーという神様が祀られている。ちょっとした観光スポットだ。もうスゴイですよ。あたり一面、金ピカですよ。

写真のお方は、「アルダーナ リシュヴァラ」。右半身と左半身をそれぞれ手で隠してみると――、面白いでしょ? 世界で最も珍しい神様ともいわれ、“「男性原理」と「女性原理」が結合された「完全神」。最高にして最強の神 ”なんだそうな。

そんなトップ オブ トップ神が普通に道端におわすんだから、おちおちポイ捨てなんてできないのである。

 
■スーパーシンプルタイプ。


ゴージャスより質素が性にあうあなたに、オススメの祭壇を見つけました。
大通りから人けのない細道に入り、何度も曲がった先で見つけた自動車整備工場。
その塀の外にありましたよ。ほこら。

 

心もとねぇー。
 

よく見ると、後方5人中3人は脱落した模様。残った片足が哀愁を漂わせている。
まぁ生き残り組が楽しそうだから、よしとするか……。

あ!!

今気付いたが、もしかしてこの単なる台座に見えた切り株に、ピーは宿っているんじゃなかろうか。じゃあ上で踊っているヤツラは、神様でもなんでもなくだだの「しもべ」じゃないか!!
排ガスと泥をかぶりつつ、おまけに頭上では部下にダンシングステップを踏まれながら、人知れず整備工場を守る切り株様。あんたぁ、お人好しすぎるぜ。

「バンコクで一番、心の広い神様」に認定します。(暫定)
 
 
 

-ヒビレポ 2013年1月14日号-

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