ちょっとプアンなタイ散歩 第3回

小皿にへばりついた白い塊

 

吉野 歩(第5号で「カラスを飼うという愛の行方」執筆)
 
 
ないないないない! どのタイ料理屋inジャパンを探しても、見つからないんですよ。旅の途中で出合ったあの「へんてこデザート」たちが!

こぼれ落ちんばかりにトウモロコシが乗ったバニラアイスや、全く熟してないマンゴーの酢漬け等々。ビジュアルの不可思議さに一瞬たじろぐのだが、食べてみるとなかなかどうしてクセになるおいしさなのだ。絶品とまではいかないが、ふと食べたくなる。日本に帰ってきては、ことあるごとにタイ料理屋さんやお菓子の店で聞いてみるのだが「こっちじゃ置いてない」と断られる始末。 “めったに食べられない”という状況に追い込まれると、再会への渇望は膨らむ一方なのだ。田舎のキャバ嬢が如し、タイのスイーツ。

大体は、材料さえあれば自分で作れるのかもしれない。だが唯一、最後まで得体が知れず、謎が謎を呼んだデザートがある。それはバンコクの隣にあるノンタブリー県で見つけた「小皿にへばりついた白い塊」。もはやなんと呼んでいいのかも分からない。

 

 

 

散歩中に小腹の空いた、私とタイ人の親友ヌイ(アラサーイケイケ姉ちゃん)、そしてその友人。屋台でセンヤイ・ナーム(鶏肉入りの汁そば)を注文して、外のテーブルで食べようとしたところ、醤油を入れるような小皿が伏せてたくさん置いてあったのだ。ひっくり返すと白いべろべろとした物体がへばりついている。うげっ、なにこれ。ビンテージ物の杏仁豆腐? 二層式の煮こごり?!

皆の振る舞いから察するに、これはいくら食べても無料のデザートということらしい。立ち位置としては、寿司屋のガリが近いかも。

 

 

ま、マズそう……。尻込みするワタクシに、容赦なくその怪しげな小皿を振り分けるヌイ。何事も経験ということでちびっと食べてみたけど、予想を裏切らずマズイ。うだるような外気と完全一体化した、生ぬるさ。それに、昭和の意味不明駄菓子「ヨーグル」を彷彿とさせる薄ぼんやりとした甘さ。食感=ヌメヌメ、めろめろ。

とりあえず、素材が分からない。二人に聞いても、その部分だけタイ語だし聞き取り不能。結局ナンなんだこれは。それにいくら伏せてあるとはいえ、この出しっぱなしの皿に何度周囲を飛び交うハエが着陸したかを考えると、一抹の不安が胸をよぎる。

すでに完食したヌイのいぶかしげな視線が、私の食べかけ皿に注がれた。しかし、次の瞬間うれしそうに「アユミィ、遠慮してるんだね! まだこんなにあるから大丈夫だって!!」 違うんだヌイ。マイン、コップンカー(No, thank you.)なんだよ……。マインを連発する私に、スーパーの試食販売人ばりにヌメヌメ小皿を勧めるヌイ。おい、この執拗さは何だ。もしかして、友人としての通過儀礼なのかもしれない。もう放っておくと第2皿がやってきそうな勢いだ。ブイーン、ブイーン、ブイーン! 頭の中では警報が鳴っている。敵は強いぞ、総員退避!!

この辺で記憶が飛んでいるため、完食したかどうかは定かではない。しかし、今も友人関係が継続されていることを鑑みると、彼女を納得させるだけの分量は食したのだろう。

と、これだけディスっておきながら、あのヌメヌメを確認するためにまた屋台に行きたいと思ってしまう。きっと相変わらずハエまみれでマズイのに。ああ、困った……。
 
 
 
-ヒビレポ 2013年1月21日号-

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