ぜんざのはなし 第4回


よしもと

 
 
島田十万(第9号で「『仕事辞めます』高野勝」を執筆)
 
 
 高校を出てから2年間、笑二さんは大阪の「よしもとクリエイティブエージェンシー」に所属していました。短い間でしたが、同期の中ではそこそこ活躍していた(本人談)、と言っています。
 若手お笑い登竜門、TVで全国放送されていた「あらびき団(*1)」に出演したこともあります。

「ずっと米軍基地の悪口を言うってのをやっていたんですね。それが収録前にネタ見せをしたら、オーディションで通ったのはあまりにも過激だといわれちゃって。その場で急遽考えたのを収録したんですよ」

 ここではあえて、URLを記したりはしませんが、本名で出たあらびき団の動画は現在でもYouTubeで観られます。ただ「だれか一刻もはやく削除してくれないかと思っている」と、、、、。本人はかなり不本意だったようで。

 また、収録から放送まで間があって「よしもと」を辞めて師匠に弟子入りしてからの放送になっちゃったのが、痛恨事だったとか。

 笑二さんは沖縄読谷村という田舎で育ちました。米軍の基地にかこまれた村で、有名人だとキロロの二人の出身地。「日本で人口が二番目に多い村」ってのがキャッチフレーズ。

 沖縄では落語はあまり一般的じゃないと思うんですが?

「ボクはTVドラマの『タイガー&ドラゴン(*2)』で知りまして、立川流のCDばかり聴いていました。わたしの両親は落語を知らなかったですね。息子が弟子入りするってCDを聞いたのが始めてで、一度も聴いたことありませんでした。未だに高座を生で聴いたことはないと思います」

 その後紆余曲折ありまして(といっても『よしもと』経由というだけですが)上京。入門してから1年8ヶ月経ったところです。すぐにでも高座に上げられる持ちネタが、現在25席になりました。何度かさらえば高座にあげられるものを加えると70席。これを、こまかなところの調子やリズムを整えて、持ちネタにしていくわけですね。

 一時間近いのもあるんですが、落語は一席およそ20分前後の噺が多いと聞きました。新しい噺を覚えるときには、すべて大学ノートにボーペンで文字に起こすところから始めます。

「ふつうのものなら5時間もあれば、書きだせますよ。長いものでも半日あれば充分。そのセリフを覚えるのに3、4日というところですね。入門して最初に覚えた『道灌(どうかん)』は1ヶ月くらいかかっちゃいましたけど、数覚えてくるとどんどん早くなるんですね。ご隠居と八っつぁんの喋りかたとか役割覚えるだけでだいぶ違います」

 覚えたネタは何度もさらって、仕上げます。高座に上げる前には、一門会などが始まる前に会場で録音をして入念にチェックしますし、師匠に直接稽古をつけて貰うこともあります。

 立川流では、落語50席、歌舞音曲(小唄新内端唄、踊り、鐘太鼓など)を一通り覚えて「二つ目の試験を受ける資格」ができます。それを師匠が判断するわけです。

 談志が亡くなったあとの一門会では昨年、実力があっても3年以上たたないと二つ目に昇格できないというしばりができました。ですから笑二さんの昇進は早くても2014年の春以降になるということです。

 期間が延びてしまいましたね?
 
「まだまだテクニックもないんで3年はぜんぜん長くないですよ。もう半分過ぎちゃいましたしね。吉笑兄さんが特別優秀だったんですよ」

 平均で4、5年ともいわれる前座修行を兄弟子、吉笑さんは1年半で終えました。上がった吉笑さんも偉いが、上げた師匠も偉い、というのがボクの周りでもっぱらの評判ですが、一門会をふくむ業界内では早すぎるのではという意見も少なくなかったらしいです。

(それにつけてもキウイさんの前座16年半はあまりに長すぎでしょう!その人となりはレポ6号「全身落語家立川キウイ」でぜひどうぞ!)

 師匠談笑さんは早稲田大学法学部出のインテリ。明るくて軽みがある売れっ子で立川流四天王の一人でもある。ふだんはウケの大きい派手な落語だが、ボクが上野広小路亭で聴いた人情噺「子別れ」も良かった。

 笑二さんは「喧嘩をしたらうちの師匠が一門で一番強いかもしれませんね」と笑っていたが、師匠は学生のころには柔道をやっていたそうで、声も身体もでかい武道家でもあるのですが、伝統的な厳しい徒弟関係に固執するというよりは、合理的に柔軟につき合ってくれるタイプのひとらしい。

 ただし、あたり前ではありますが、前座修行は楽しいだけじゃありません。
 別門だけれども、新作落語の第一人者のひとり、三遊亭円丈さんがこんなマニュアルをネット上に公開しています。
http://enjoo.com/rakugo/old/zenza_011.html
「プロ仕様前座マニュアル」その1、『前座、心得のこと』

一つ、前座は人間にあらず芸人にあらず前座なり
一つ、前座に幸せはない。あるのは修行のみ。
一つ、前座に言い訳する権利はない、ただ謝る!
一つ、世渡り上手の前座は仕事を貰い、賢い前座は芸を盗む
一つ、良く働く名前座に大成なし

 もっとも円丈さんは、50年近くまえに前座を経験したひとだから現在の感覚とはだいぶ違うのかもしれませんが、、、
 ちなみに円丈さんは自分のことを「とても気の利かない評判のさほど良くない前座だった」と記されています!

 
 
 

(*1)あらびき団       TBSの深夜番組。現在は「ナマイキ!あらびき団」としてネット配信されている

(*2)タイガー&ドラゴン  2005年にTBSで放映された。落語がモチーフのドラマ
 
 
 
 
1/26日(土)「立川談笑一門 弟子勉強会」があります。詳しくはこちら!
http://ameblo.jp/kisshou-shouji/

 
 
 

-ヒビレポ 2013年1月22日号-

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