MAKE A NOISE! 第5回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

ドラン2

 

山口ゆかり
 
 

 
 
『Laurence Anyways』

ドカーンときた1作目に、なかなかやるなの2作目(ここまでが前回)を経て、現在23歳のザヴィエル・ドラン監督3作目のこちらが、いよいよ日本で劇場公開らしい。

アン・リー監督映画『ブロークバック・マウンテン』を見た時は、この手があったか!でしたが、こちらには、この手もあったか!

ロミオとジュリエットみたいに家同士がカタキで悲恋になるなんてまず無いご時世、男同士で悲恋という手を打ち出したのが『ブロークバック・マウンテン』なら、女になろうという彼氏と彼女の愛の行方を追ったのがこちら。力技です。

『ブロークバック・マウンテン』の困難な愛は、ヒース・レジャーがジェイク・ギレンホールを思って山を見上げるあたりで、ほとんど純愛にまで昇華。愛した相手が変わってしまう、それも反対の性に!という『Laurence Anyways』の困難な愛の行方はいかに!

 
 
 

メルヴィル・プポー(これは女性化第1形態くらい) 映画Laurence Anywaysより

 
 

今回、ドランは、主演も務めた前2作とは違って、台詞も無く挨拶程度にワンシーン顔出しするだけで裏方に徹し、メルヴィル・プポーが主役のローレンスを男らしい女装で演じてくれます。違和感を抱えたまま男をやってきたローレンス、自分はもともと女! 女として生きる! と進む姿がかっこいい。

ニューハーフっていうんですか? そこいらの女性が負けるほど可愛かったり綺麗だったりする元男性より、どう見ても男だったのがありありの元男性に「がんばれ」と思います。
下手すると、滑稽、ヘンテコだったりする、ごつい女装姿。避けられたり、いじめられたりもするだろうに、それでも、ほんとうの自分になろうというとこに「がんばれ」。
自分を出すのは、誰にとっても勇気のいること。まして、それがすんなり受け止められないと予想されるものなら、なおさら。

だけど、「がんばれ」なんて、他人事だから言えるのかも。ローレンスを男として愛した彼女は、もちろんつらい。でも、別れても、お互いに忘れられない。それぞれの道を歩みつつ、時々、その道を交差させてしまいます。

再会の度に、ローレンスは女性へのメタモルフォーゼを進めています。彼女にも元彼ローレンスに「がんばれ」という気持ちは人一倍。お化粧やお洋服の手ほどきしちゃったり。反面、計り知れないほど強い憤りも抱えていて…。
複雑な心模様を演じた彼女役のスザンヌ・クレメントは、カンヌで女優賞を獲得しました。

メインの2人を取り巻く人々も映画に奥行きを与えています。後半に、おおっそういうことだったのかという仕掛けがある、ローレンスの職場(学校の先生です)の同僚など、3時間の大作を飽きさせない。
中でもローレンスの母が印象的。それほどしっくりいっているようでもないのに、母と息子の間に流れる情は、ドランの自伝的要素が強かった1作目『I killed my mother』とも通じるところがあります。

長い長い年月を経て、ローレンスと彼女の間に答えが出るシーンも凄いですが、その後に、時間をずっとさかのぼった2人のシーンがエンディングとして用意されています。
狙いに狙って、バッチリ決めたそのエンディングには、ブラボー!の声が上がりました。

良い映画でもほわっと終わるエンディングだと、どんな言葉で、どんな映像で終わったか、忘れてしまうこともあるのですが、このエンディングを忘れることは無いでしょう。

まだ時期などわかりませんが、公開のあかつきには皆様お見逃し無きよう。

公式サイトhttp://www.laurenceanyways.ca

若くて才能があって、なかなかハンサムという人、実はイギリスにもいるんです。しかも日系。次回はそちら。
 
 
 
-ヒビレポ 2013年1月30日号-

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