ハルヒマヒネマ 3−6

怖がることはない。島は雑音でいっぱいさ

 
やまだないと(「料理入門」連載中)
 
 
 
 

去年ロンドンオリンピックのポップアップブックのような開会式をみたら、もう、「2020年東京にオリンピックとパラリンピックを」って書いてある旗が憂鬱でしょうがない。いったいどんな開会式になるんだろう。エグザイルが日の丸を背負って歌うのか。2020年にはエグザイル何人になってるんだろう。日本のエグザイルとファンシーと萌え〜的なものに反発するハルヒは、招致が決まる前からうんざりしている。オリンピックのおかげで、ハルヒんちの近所、つまり国立競技場近辺の昭和の風景が、エグザイル的な風景に変わりそうでそれもまた憂鬱なのだ。
映画監督ダニー・ボイル演出のあの開会式は、小さな(人間からしたら巨大だけど世界からしたら)スタジアムの中にイギリスの、ロンドンの全部がきゅーっとつまってた。フロックコートの紳士から作業着の労働者たち(スタジアム建設に関わったほんものの)こどもからお年寄り動物、元気な人も病気の人も、コメディアンに、俳優に、ロックスター、それから女王陛下まで。かわいらしくてかっこよくて、変わってておかしな国。日本はまじめがおどける国だから、あー、開会式憂鬱。

 
 

『アウトロー』 2012 USA
DW:クリストファー・マッカリー A: トム・クルーズ/ロザムンド・パイク/ロバート・デュバル

2時すぎの深夜映画館でみた。夜中にみる映画はだいたいなんかこういうのになる。積極的に見たい映画じゃないんだけど、アクション映画とかって。
でもトム・クルーズは一見おもしろくなさそうな堅苦しい古くさい2枚目のイメージだが、やってる事はいつも自由で新しいので、乗り気じゃなくみた映画でも、映画みたなあって満足度が高い。頭つるっぱげにしてた『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』とか楽しそうだったなあ。
無差別狙撃殺人犯として刑務所に送られた男は、護送車の中、当然のようにリンチで意識不明にされてしまう。弁護士は検事側の父親への反抗心もあって、意地でこの男の無罪を証明しようとするんだけど、刑務所に送られる前に、自分のぬれぎぬをはらせるのはこの男しかいない、この男を呼べ、と託したのがジャック・リーチャーという謎の男で、トム・クルーズ。
刑事達もなんだって? ジャック・リーチャーは実在するのか?!みたいに驚いてる。有名人らしいが、その男の存在を証明するものは何もないのだ。実際リーチャーは、クレジットカードも携帯も身分証明書も何も持たないで暮らしている。謎いっぱいでの登場だったが、別にジェームズ・ボンドみたいなどっかの組織の工作員というわけではなく、闇の仕事人というわけでもなく、身分証明を持たないのは、自由に生きる為の彼の主義のようで、軍人時代にで備わった異様な観察力と的確な戦闘力で探偵的な事をやっている。
真犯人は? 誰が? なんの目的で? 以降のサスペンスや陰謀部分は感心する程の事はなにもなく、むしろ都合良くさくさく事が運んでいくし、リーチャーもなぞの男じゃなくても、ただ頭も腕っ節もいい容疑者の友達でもよさそうだった。
それでもトム・クルーズの堅実でまじめな演技を追っていくのがなぜかおもしろい。トム・クルーズのまじめさは、それらしさじゃなくて、人間味で役に肉付けしていく。
ジャック・リーチャーも、アウトロー!っていうほど、渋—いかっこいいーいニヒルーな感じじゃなく、基本ただの変わり者、湾岸戦争の傷を未だこっそりひきずってるが、意外とひとなつっこい、人にも好かれる、そんな人間的にいいヤツな人物だった。
監督・脚本は『ユージュアル・サスペクツ』の脚本の人。やっぱりこの人の脚本監督で、デルトロの『誘拐犯』っていうB級『明日にむかって撃て』みたいな映画ハルヒ好きなんだ。
 
 

『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』 2010 USA
D:アダム・マッケイ W:アダム・マッケイ/クリス・ヘンチー A:ウィル・フェレル/マーク・ウォールバーグ/マイケル・キートン

トム・クルーズと同じく、ウィル・フェレルはハルヒにとってはずれの無い映画スター。
花形スター刑事の座を狙う空回り熱血刑事ウォールバーグ。空気の読めない堅物刑事ウィル・フェレルのコンビ。覆面パトカーの愛車はプリウス。
大爆笑かというと、なんか少しずつかくんとはずしてる。
どうだ!俺ってバカだろう?って人はひとりも出てこない。どうだ!笑えるだろう?ってシーンもない。ただなんというか、こんなどうでもいいくだらない事を本気でおもしろいとおもってるの?ってとこが面白かった。人が笑おうが笑うまいがおかまいなしだ。ただ、DVDの日本語吹き替えがハルヒは気に入らなかった。なんかこのウィル・フェレルの声は好きじゃないよ。
 
 

『オーケストラ!』2009 フランス
D: ラデュ・ミヘイレアニュ W: ラデュ・ミヘイレアニュ他 A: アレクセイ・グシュコフ メラニー・ロラン

ロシアがソ連だったころ、ボリショイ交響楽団は政策のあおりでユダヤ人を追い出すよう迫られ、それに従わなかった団員達みな解雇されて30年。パリのシャトレ劇場からのオフォアーを天才指揮者と言われていた今は掃除夫のアンドレイが勝手に受け、偽の、でも本来のボリショイ楽団を呼び集め、コンマスのジプシー団員が手配した全員の偽造パスポートで3日間のパリ演奏旅行に繰り出す。
ドラマティックな背景がある割に、この寄せ集め楽団、あり得ない程みんないいかげんでぼんくらで、パリに到着するや、勝手に就職先を決めたり商売をはじめたり、たった1日しかないリハーサルににさえあつまらない。いわゆる「漫画みたい」なめちゃくちゃな力技コメディ。
尊敬する伝説の指揮者アンドレイ・フィリポフに指名を受け、夢が叶ったと感激ひとしおだったパリの天才バイオリニスト・アンヌ=マリーとおなじく、まるでハルヒが裏切られたような気分で、イライラムカムカ、もうつきあいきれない! でも、ひきとめるようにふいっと楽器を手に見せる底知れない実力の片鱗に、いや、きっと、このオーケストラは、なにかすてきなものを見せてくれるに違いないと、思い直す。そうやって、たどり着いたコンサート当日。タクトを振り下ろすまでこのオーケストラの実態は信用ならないままなのだが、そこからはやっぱりこの楽団を信じてよかったと思わせられる。過去の悔いは洗い流され、真実は伝わり、すばらしくあかるい未来まで見せてくれるような、彼らのチャイコフスキー。「漫画みたい」にぐだぐだだった、いや、ぐだぐだにする為に配置されたような楽団員達が、30年ぶりだというのにリハーサルもなしにこの至福の演奏をやってのけれた事は、ちっとも「漫画みたい」じゃない。そこにはちゃんと、物語が込められていた。演奏を終えたアンヌ=マリーの泣き笑いの表情がすばらしかった。
 
 

『ロンドンゾンビ紀行』2012 イギリス
D: マサイアス・ヘイニー W: ジェームズ・モラン/ ルーカス・ローチ A: ハリー・トレッダウェイ/ ラスムス・ハーディカー

みんな、生涯一度は、そう死ぬ前に一度は、ゾンビと戦ってみたいと思うよね。ハルヒも思うよ。ハルヒとゾンビの理想の戦いを見せてくれたのはエドガー・ライトの『ショーン・オブ・ザ・デッド』だった。自分が助かると言うよりも、ハルヒは人を助けたいので、いかにして、家族や友人、街のお年寄りを助けるか、それをシミュレーションできる映画だった。大好きだ。
この映画はさらに理想の対ゾンビシミュレーションであると同時に、ティーンズホラー(ティーンとは違うが)としても、最高にかわいかった。
主人公はテリーとアンディのマクガイヤー兄弟。ふたりはロンドンの下町生まれ下町育ち頭悪そうなヤツはだいたい友達。(原題のCOCKNEYS VS ZOMBIES コックニーというのがウエストロンドンの下待ちっ子)じいちゃんの老人ホームが立ち退き取り壊しになりそうなので銀行強盗を仕掛ける。それにのるのがいとこの錠前破り、クールな女の子ケイティ。そう、ヒーロー・ヒロインが、恋人同士じゃないところがチャーミング。ハルヒの好きな『蝋人形の館』も、仲の悪い双子の兄妹が主人公だった。恋人同士(は生き残るパターンじゃない。まず恋人の男が死んで、ニューヒーローと生き残ってどさくさの恋に落ちる)じゃ殺人鬼やゾンビと戦って生き残ったとしても、そのあと絶対PTSDでふたりには別れが待っている。些細な事でお互いののしりあう泥沼の日々が待っている。きっと。
ハルヒは親友同士、家族一眼となって、戦うホラーが好きなのだった。恋愛は余計だ。邪魔だ。
銀行強盗で警察に取り囲まれてバンジキュウスのはずが、銀行の外は警官もみんなゾンビ化。人質も一緒にじいちゃんたちを救出にいく。
ひとりでみたら、意外と怖くて、ドキドキしっぱなしだったが、手もアシも出せないハルヒのかわりに、ケイティがおじいちゃんおばあちゃんが、ゾンビの頭を吹き飛ばしまくってくれる。あと10回くらい映画館でみたい。友達も一緒にみたい。つぎにロンドン言った時、2階建てバスに乗るのが楽しみだ。
この映画のエンドロール、バスにはねられたゾンビ、赤ちゃんゾンビ、〜にいたゾンビ、〜してたゾンビ…とゾンビのキャストクレジットが膨大で丁寧。フーリガンゾンビはウエストハムとミルウォールで乱闘していた。
ゾンビと戦えないなら、ゾンビエキストラで映画にでたい。ゾンビ演技のシミュレーションも出来ている。
 
 

ハルヒマヒネマ
http://blog.livedoor.jp/nuitlog/
最近のハルヒの頭の中、日々をささげる王子様観劇日記
http://www.bookman.co.jp/rensai/esp.php?_page=boyslife
 
 

-ヒビレポ 2013年2月8日号-

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