ぜんざのはなし 第8回


勉強会1

 
 
島田十万(第9号で「『仕事辞めます』高野勝」を執筆)
 
 
 

 商店街を通り抜けて、建物の2階にある会場に入ると正面の受付に笑二さんが座り、その後ろで吉笑さんが立ってお客さんを迎えていました。

 二人が月に一回、高円寺の庚申文化会館でやっている勉強会です。
 2012年の2月から続けて今回で11回目になりました。昨年末、12月の会は休催でしたから2ヶ月ぶり、2013年の初回でもあります。

 高座前の緊張なんでしょうか、二人とも微妙に表情が堅いように見えました。

 今回は土曜日の昼席で、14時開場、14時半開演でした。かなり早めに行ったつもりでしたが、会場にはすでに4人座っていました。みな押しなべて黒い服装の中年のオジさん連中で、話したことはありませんがこの会で何度も顔を見かけています。

 
 
 受付でもらったチラシなどながめながら所在なげですが、なんとなくウキウキした雰囲気が感じられます。

「13時に楽屋に入りました。だいぶ慣れたので1時間あれば余裕で準備できますね。机を3つ並べて黒布、その上にビールケースを4つ並べて赤布、その上に紫の座布団を置いて高座の完成。ビールケースと座布団は会館に預けてあります。毎月やっていますから会館の方もいろいろ融通をきかせて下さいます」

 高座の背後にある大きなテレビモニターを隠すためにすだれを4枚並べて壁にかけ、45脚の折りたたみ椅子を並べます。受付に置いた机の上で、営業用のチラシを折り込んで終了、二人で小一時間の作業です。

 その後着物に着替えます。笑二さんはモスグリーン無地の着流し。吉笑さんは薄茶色の紋付。丸に左三階松は、立川流の定紋で二つ目以上が付けることを許されます。
 昨年2月、初回に見たときには2人とも入学式をむかえた小学生のようで、着慣れていないのが一目瞭然でしたが、本日はキチンとして違和感がありません。

 木戸銭は千円。2人2席ずつやります。

「前座には『前座のあがり』という出囃子(*1)が2種類あって、そのうちのどちらかを使うことになっています。勉強会ではiPodでこれをずっと流しています。二つ目以上は自分自分の好きなのを『お囃子さん』にお願いできます。兄さんは『東京節』ですね」

 ポロポロと途切れなく客がやってきて、きちんと数えたわけではありませんが、この日は40人弱というところでしょうか、見た目にはほぼ満員の入りになりました。

 時間ちょうどに吉笑さんが高座に立ちました。

 ずいぶんと久しぶりに風邪をひいたという話と、笑二さんとのたわいもない話をまくらに振って、新作の「くじ悲喜」を始めました。

 吉笑さんの新作落語の面白さは一言でうまく記すことができません。素人目にもかなり狭い難しいところを狙う、志を感じるタイプの落語でニューウェーブというのかアヴァンギャルドというのか。現代的で漫才やコントの要素もありそうです。

 一つの事象をあちこちから眺めて突っ込む、繰り返し芸というのでしょうか、「たぬきの恩返しすぎ」、「舌打たず」、「大根屋騒動」、「サプリメント」などの作品と、すっとぼけた意外性の面白さの「ふすま売り」なんてのがあります。

 狭くて小さな高みを目指しているように見え、笑二さんとは違う意味でスタイルを築くにはまだまだ時間がかかるように思います。年末だったか、すこし弱気な発言もブログにありました。ただし本日の1席目は大変面白く、よく受けていました。

 笑二さんの1席目は「初天神」。
 吉笑さんのまくらに応えるやりとりから入り無難に終りました。笑二さんはコンスタントに笑いをとるタイプのように見えて、あまり外さない。まったく末恐ろしい新人です。

 スタートから約40分、中入りとなりました。ボクは友人ら合わせて5人で観ていたのですが、そのうちの一人、生まれて初めて高座を聴いたという女性編集者も喜んでいましたし、みな充分満足した表情になっていました。

 ところが、前半はまだ序の口で本日の山場は後半にあったのです。
 
 
 

(*1)出囃子  高座に上がる際、三味線、太鼓、笛などを使って演奏されるBGM。

 
 
 
-ヒビレポ 2013年2月19日号-

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