ぜんざのはなし 第9回


勉強会2

 
 
島田十万(第9号で「『仕事辞めます』高野勝」を執筆)
 
 
 

 中入り後、3席目は吉笑さんの新作「赤ん」。一席というにはあまりに短かくて、新作噺の芽というところか。ただ、発想とか展開の仕方が吉笑さんらしくて面白くなりそうな気配。期待が持てました。
 そして、最後に笑二さんが上がりました。演目は「大工調べ」。落語会でのトリをとれるほどの大きいネタで、もちろん、笑二さんは正式な席ではまだやることができません。

 『家賃を溜め込んだ与太郎は、そのカタに、仕事道具の道具箱を長屋の大家さんに持って行かれてしまいました。それを聞いた大工の棟梁が、お金を持って取返しに行くのですが、全額にはすこし足りないため、ケチな大家はなんだかんだとイチャモンをつけて道具箱を返してくれません(大家の理屈も分からなくはないのですが)。ずっと辛抱していた棟梁ですが、あまりに細かい、くどい大家の言い分にキレて、ついにケツをまくって啖呵を切ります』
 
 
 

 この噺は、笑いが多い噺ではなく「聴かせる噺」に分類できるかと思いますが、この日根多おろしをした笑二さんの、この啖呵がなんとも見事でした。

 よく通る大きな声の啖呵で会場の雰囲気を一変させ、長いセリフを、早口で、一切咬まずに言い終えました。
 聴いている客も息を飲んで見守ったので、言い終えたときには大きく安堵したのですね、「ふうっ」と一斉に息を吐いたのが聞こえてくるようでした。
 そして一拍置いてから大拍手がおこり、本日一番のハイライトになったというわけです。

 なるほど、こんなところにも笑いをとるだけではない、落語独特の醍醐味があると思わせる一瞬でした。

「師匠なんかはあまり派手な啖呵はリアリティーがないとおっしゃいますから、もうすこし押さえてやったほうが良いのかもしれませんけど」

 謙遜もあったのでしょう、笑二さんは後日そんなふうに語ってくれましたが、とても満足そうでした。

すぐ後で、「でも気持ちよかったです」と付け足しました。

「自分でも今月はよくやったと思っています。たとえば『初天神』だと、親子が歩き出すと、2人の話す時の目線の高さが違ってきます。そのあとで、飴屋団子屋が出てくると顔の振り方、所作がゴチャゴチャになってきちゃうんですよ。難しかったですね。『大工調べ』も言い立てのところでものすごい時間食いましたけど、外の寒いところで頑張りました。ちょっと報われたですかね(笑)。初天神はもういつでも大丈夫と思います。自信になりました」

 むずかしい噺を根多おろしするようなときは、緊張しますか?

「勉強会で緊張するってことはないですね。皆さん、吉笑兄さんのお客さんだと思っていますから気が楽なんです。北沢タウンホールの師匠の独演会で、300人満員みたいなときは声が震えたりとか、ガチガチになったりもありましたけど」

 一月は忙しくて、あちこち駆け回っていて時間が自由にならなかったのもあり、2席完成させられるかどうかずっと不安だった、とのことでしたが、高座に上がってしまえば緊張はないというのです。

 落語もそうですが、演劇やライブなんかで演者側が緊張しているのは客にも伝わってくるものですね。うっかりすると客には増幅されて伝染したりすることがあるようです。そうなるとボクなんかは自分が酷いあがり性なので、落ち着かないどころか、いたたまれないようになって聴いていられなくなります。
 この二人に関しては、なんの問題もありません。

 終演後、連れの4人も啖呵の話題で持ちきりでした。それにしても、吉笑さん笑二さんの芸風は好対照、それも面白かったと今回落語デビューした女性編集者が言いました。

「でも誰を聴きにいったら良いのですかね?」

「とにかく最初は生で、5人の落語家を聴いてみて下さい。そのなかに一人は、必ず気に入る落語家がいるはずなんです。もし万が一、いなかったら、もうその人は死ぬまで落語なんて聴かなくてよろしい」

 先日、ラジオでゲスト出演していた立川談春さんは、おなじような質問にそんなふうに答えていました。

 
 
 

『立川笑二勉強会』2月28日(木)
(注:今回は笑二さん一人の会で、吉笑さんは出演しません)
高円寺・庚申文化会館2F
開演、19時15分 料金、予約¥700当日¥1000 
予約は[tatekawashouji@gmail.com]まで

 
 
 
-ヒビレポ 2013年2月26日号-

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