「食い物の恨み」は消えず 第9回

「チャーハン」「ピラフ」「やきめし」はどれがお好み?

 
下関マグロ(「新宿の穴」連載中)
 
 
 


ひらがなで「やきめし」なのです。最後に料理の画像があります。

 
 
そろそろこの連載も中盤が過ぎたので、僕がこの連載を始めるきっかけとなった話を書いておこうと思う。
僕はワニマガジン社の「Yha ! Hip & Lip (ヤァ ! ヒップ アンド リップ)」という雑誌で連載をしている。
2010年の春にワニマガジン社から原稿依頼を受けて、フェチに関する原稿を2本書いたのが最初なんだけど、
実はこのとき連載するなんて予感はまったくなかった。
編集者も一回限りというかんじで原稿を頼んできていたし、内容も、それまで編集部の手元にある写真を使って、
そこに僕が適当に文章をつけるといういかにもやっつけ仕事っぽい内容だった。

 
 
それが2010年の秋あたりから隔月刊になると言われた。もともとこの雑誌というかムックは、なんとか手持ちのネタでのらりくらりと原稿を書いてきたけれど、
そろそろ取材とかしないとなぁって雰囲気が編集者から伝わってきた。
とはいえ、隔月なので、月1本取材すればいいかってかんじだったし、
取材先は編集部がピックアップし、取材交渉なども編集者がやってくれた。
それが、2011年の秋ぐらいから月刊化するということになり、以来、毎月2本の取材をしている。

ところで、この雑誌はとても不思議でバックナンバーがめちゃくちゃ高かったりする。
ちなみに最新号の定価は780円なんだけれど、
2011年02月号をアマゾンで見てみると、今現在(2013年2月18日)、
2冊の中古品が出されていて、¥ 9,788と¥ 9,787という価格がつけられている。
ちなみにこの号で僕は写真家の青山裕企さんと、漫画家のたべ・こーじさんを取材している。
が、値段がついているのは、壇蜜さんがグラビアに初登場しているからではないだろうか。
とはいえ、他の号もけっこう高いものがある。

ちょっと前置きが長くなってしまったが、この雑誌で取材のため、
初代ミニスカポリスの福山理子さんと浅草で待ち合わせた。
足のきれいな女優さんというかタレントさんで、キャットファイトなんかもやっちゃっているおもしろいお方だ。
担当編集のNは会社の会議が長引いているから遅れるというメールがケータイに着信。
神谷バーでランチしながら取材を開始。が、Nなかなか来ない。
それじゃ、飯も食い終えちゃったんで、移動しましょうかってことで、マウンテンという喫茶店へ移動。

しばらくして、編集Nがマウンテンに姿を現した。
100kgを超える巨漢のN。当然、昼飯はまだだ。
僕らは食ったからどうぞと言うと、注文したのが「やきめし」である。
そして、お店のおばちゃんがもってきたのが超大盛りの「やきめし」。
これが、見事なルックスである。Nの食べっぷりも見事。
いやぁ、取材どころじゃないよ。
って、ことがあった。

そーだよねぇ、やっぱ「やきめし」だよね。
「焼きめし」でもいいか。でもマウンテンのメニューには、
ひらがなで「やきめし」とあった。
しかも「昔ながらのやきめし」とあった。
いったい、どこか昔ながらなんだろうか。
もう頭の中は、「やきめし」でいっぱいである。

そっか、最近「やきめし」食べてないなって気がついた。
が、じゃぁ、どこで「やきめし」を食べられるのだろう。
昔は、大衆食堂というか、なんでもやっている食堂がけっこうあって、
そういうところには必ず「やきめし」があったような気がする。
あと、喫茶店か。
近所を歩いて、喫茶店の店先に書かれているメニューを見て驚いた。
たいていそこに書かれているのは「ピラフ」なのだ。「やきめし」の文字はない。
ならば、中華料理屋はどうだろう。これもダメだ。
メニューを見ると「チャーハン」とか「炒飯」になっている。
最初は、近所で適当に「やきめし」でも食べて、
それをヒビレポに書こうとこの連載を始めたのだ。
しかし、いつまでたっても「やきめし」に遭遇しない。
仕方なく、本日、浅草まで行くことを決意した。

それにしてもなんで「やきめし」がこんなに減ってしまったんだろうか。
「やきめし」ほど自由なメニューはないと思う。
母親は子供の僕によく「やきめし」をつくてってくれた。
たとえば、夕方、塾に行く前など、簡単にさっさと、有り合わせのもので作ってくれた。
ご飯をフライパンで炒めるのだけれど、入っているのはタマネギだったり、
ひき肉だったり、カマボコだったり、ちくわだったり、いろいろだった。
たいてい薄い醤油味でちょっとだけ胡椒もきいていた。

というわけで、浅草の喫茶店「マウンテン」。
この喫茶店、僕の中では、大阪のなんばの自由軒とシンクロするかんじのお店。
昔から、同じおばちゃんがずーっとやってるイメージ。

というわけで、開店直後に一番乗り。
「やきめし」と元気よく注文。
厨房で焼いている音が聞こえる。
ちゃーちゃーって作るんじゃなくて焼きこんでいるかんじ。
ああ、ここは二階がお好み焼きを出しているんだけど、やきめしも鉄板で作っているのかなぁ。
で、10分くらい待って出てきましたよ、「やきめし」。
まさに飯が焼かれているかんじ。
ほんのりしょうゆ味。
肉が入っております。珍しいねぇ。
これはポークだ。やっぱり鉄板で焼きこんでいるかんじ。
あ、ご飯におこげがある。ああ、まさに焼いているんだねぇ。
これぞ、「やきめし」だ。
マウンテンにきてよかった。
しかし、なにが「昔なつかしい」のだろう。
会計のときに聞いてみると、
「あ、おじいちゃんのレシピなんですよ。先代が作ってたまま作ってるんで」
とのこと。なるほど、変わらない味か。
外に出て、街を歩くと、やっぱり、浅草には昔からやっている喫茶店が多い。
が、表に出しているメニューを見ると、みんな「ピラフ」である。
「やきめし」なんてない。ひどいというか、すごいのは
「なつかしいピラフ」と書いている喫茶店があった。
なつかしいピラフって、人によるのかもしれないけれど、
僕はまったくイメージできない。
 
 
 

やっぱり、「やきめし」のルックスはこうでなくちゃ

 
 
 
-ヒビレポ 2013年3月2日号-

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