MAKE A NOISE! 第10回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

ベルリン国際映画祭感想

 

山口ゆかり
 
 
 
 
 

ベルリン映画祭から戻りました。
旅から帰って、誰もが味わう感覚でいるところ。いやー、やっぱり家が一番。
くつろぎすぎないうちに、今回の感想などを。
 
ウォン・カーウァイ監督 2013年ベルリン国際映画祭 (撮影:著者)
 

まず、ウォン・カーウァイ監督、良いこと言います。
ウォン監督は今回の審査員長。映画祭初日、しょっぱなの審査員会見で「判定したり、批評するのではなく、称えるように審査する」と言ったのを、映画祭終了間近の審査結果発表時に、もう一度、繰り返した。

 
 
最初は、あたりまえのように聞いてましたが、最後に言われた時には、ギクッ。
というのも、前日まで、今年は不作だなあなんて、ぶーたれ気分でいたから。
今回は10日間で27.5本見ましたが、会見出て、写真撮って、原稿書いて送りつつなので、寝る時間、食べる時間も上手く取れなかったりで、いつもながら最後はへとへとです。
それでも、傑作、または、すごく好きだなあというのにあたると疲れも吹っ飛びますが、そこまでのにあたらなかった。コンペ作の最後の1本の試写が終わった時、何だかグッタリしてしまいました。

ちなみに、0.5本になってるのは、記事になりそうな会見に出るため、半分しか見られなかった分。同時にあちこちの会場で数十本の映画の上映と、会見があります。
その中から何をどういう順番で見るかスケジュール組むだけで、私の粗雑な頭にはけっこう重労働。ゲストの滞在予定と重ね合わせ、この映画の上映は4回あるけど、登壇があるのはこの日までだから、こっちを優先してあっちは後に回し…なんて組んでいく。ですが、その滞在予定が変更になったりして、また組みなおすうちに、わけわかんなくなってきます。

その疲れた状態で、あまり面白くもない映画を見せられると、ほぼ秒殺。この映画はペケ、と瞬時ジャッジ。映画祭終盤は、称えるように見るなんて気持ちは消し飛んでました。
ほんとは、映像の魔術師、完璧主義者と呼ばれるくらいすごい映像を作るウォン監督こそ、切って捨てるように見ても許されるようなお人。
でも、今年は突出した作品がなく審査は難しかったろうに、言葉通り丁寧に見たのであろう、すごく納得のいく結果になってました。

 
映画Harmony Lessonsより
 

私が良いと思ったものも、きちんと腑分けしてもらった感じ。
いじめられっこの少年を主人公に持ってきて、文化や宗教も絡ませながら描いた『Harmony Lessons』は芸術貢献賞(カメラ)。少年の心象風景みたいで良かったのは、少年が1人で部屋にいる時や、空想の映像でした。

 
映画An Episode in the Life of an Iron Pickerより
 

 
映画Child’s Poseより
 

くず鉄拾いで暮らすロマの極貧家庭を、本物のロマの人々(中でも主演のナジフ・ムジッチに男優賞がいきました)が演じて、ずっしりきた『An Episode in the Life of an Iron Picker』は審査員賞。これが金熊賞(最高賞)かなとも思っていたのですが、これを抑えて金熊に輝いたのは『Child’s Pose』。そういえば、地味ながら秀作でした。最初は、世知に長けた嫌なおばさんに見える母親に、最後には、子を思う母の気持ちはみな同じと共感させてしまう説得力です。

 
映画Gloriaより
 

唯一、おおかたの予想通りで、選ぶのも楽だったと思われるのは『Gloria』で女優賞のパウリナ・ガルシア。初老女性の精神的な自立を明るく見せて、上映後の拍手も大きかった。後味良く見終えられるので、売れそうな映画と思います。

映画評、辛口なのはいいとしても、偉そうなのは嫌だなあと常々思います。判定や批評するのではなく称えるように見てこそ、良さが見えるものもありそうです。

次回は、ベルリン参加作からコンペ以外のものをいくつかご紹介します。
 
 
-ヒビレポ 2013年3月6日号-

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