MAKE A NOISE! 第11回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

ベルリン国際映画祭感想2

 

山口ゆかり
 
 
 
 
 

ベルリン映画祭の感想、前回はコンペ作についてだったので、今回はそれ以外。

前回の通り、今年のベルリンで見られた映画は27.5本。400本くらい参加してるので、見られなかった方が断然多い。後ろ髪引かれまくりです。
リアルタイムで書き送らなきゃいけないニュースの仕事で行ってますが、しまいには書いてる時間がもったいなく思えてくる。その時間を丸々試写にあてたら、もっといけるのにー。…本末転倒ですね。
 
映画Dark Bloodより
 
 
そういう見なかった映画に対する悔しさを、見ることによってかきたてる珍しい映画だったのが『Dark Blood』。
リバー・フェニックスの遺作ですが、クランクアップ前にリバーが亡くなったので、撮れてないシーンがある。そこがどうなってるかというと、画面が静止してナレーションになるのです。ふげーっ!

 
ナレーションのおかげでストーリーとしては完結してますが、撮れなかったシーンへの残念感がハンパない。加えて、会見ではもっと残念な事実が。リバーが亡くなって20年、その間、権利の関係とかで、フィルムがあちこち行ってたらしく、撮ってあるのに紛失してる分がある。ぐおーっ!
身もだえしたくなる残念さ。無い分をCGとかで補えなかったのかと一瞬思いましたが、やはり、このままがいいかも。未完成感たっぷりで、若くして亡くなったリバーとその損失を思わずにはいられない映画です。
公式サイトhttp://www.darkbloodthemovie.com

今年のベルリンで流行ってたのがポルノ。目立つ映画にポルノ周辺を扱ったものが多かった。

 
ジョセフ・ゴードン=レヴィット 2013年ベルリン国際映画祭 (撮影:著者)
 

まずは、ジョセフ・ゴードン=レヴィットの長編監督デビューとして注目を集めた『Don Jon’s Addiction』。『SHAME-シェイム-』とかぶるんじゃないか心配でしたが、全然大丈夫でした。
『SHAME-シェイム-』でマイケル・ファスベンダーが演じたセックス中毒の主人公は深刻に病気。一方、ジョセフが演じるポルノ中毒の主人公は、若くておバカなだけ。若くてバカなのは可愛いというものでもあります。そのバカさ加減を際立たせるのが、スカーレット・ヨハンソンがセクシーダイナマイトに演じるガールフレンド。バカを脱していく手助けをしてくれそうなのが、ジュリアン・ムーア演じる、歳いってから勉強してるクラスメート。その配役に、乗りのいい音楽とともにちりばめられたポルノ映像で、面白く見せといて、最後にはホロリとさせる。上手いです。『SHAME-シェイム-』とはタイプも全く違う映画でした。
公式サイトhttp://donjonsaddiction.tumblr.com

『SHAME-シェイム-』のスティーヴ・マックイーン監督は、止むに止まれぬ芸術家魂、何でもアートにしてくれる。前作『ハンガー』の囚人が描くウンコ絵、痩せ細って死んでいくボビー・サンズを演じるマイケル・ファスベンダーの体、迫ってきます。
痩せただけじゃなく、カリスマ性も炸裂で、ファスベンダーすごかったのに、オスカーではノミネートもされなかったんですよ。
Shame公式サイトhttp://www.foxsearchlight.com/shame
Hungerトレイラー(youtube)

 
 
まあ、オスカーにイチャモンつけたくなるのは毎度のこと。今年は『ザ・マスター』のホアキン・フェニックスに主演男優賞いかなかったのを怒りながら、ダニエル・デイ=ルイスの主演男優賞3冠目に感激という竹中直人みたいなことになってました。
『ザ・マスター』のホアキン演じるアル中さんは、ちょっとクシャおじさん入ってて、こういうアル中の人、いる、いる、というリアルさ。
ホアキンは良い役者になりましたね。出てきた頃、兄貴ほどにはかっこよくない弟としか見えてなくてゴメン、です。今は、リバーも生きてたら、ホアキンみたいな良い役者になってたかなと、逆の尺度で思います。
公式サイトhttp://themastermovie.jp

ベルリン、ポルノに戻すと、『24アワー・パーティー・ピープル』の黄金コンビ、マイケル・ウィンターボトム監督、スティーヴ・クーガン主演で、英ポルノ界の帝王ポール・レイモンドを描く『The Look of Love』というのもあったんですが、見られず!
イギリス映画なので、こっちで何時か見られるかも。
24hour Party Peopleトレイラー(youtube)

 
 
 
 

アマンダ・セイフライド&ジェームズ・フランコ 2013年ベルリン国際映画祭 (撮影:著者)

 
 

あと、ジェームズ・フランコが2本のポルノ絡みで参加してました。1本が『Lovelace』。
『ディープ・スロート』のリンダ・ラブレースのお話。リンダは晩年、女性の人権のための活動家になるのですが、そうなる第1歩みたいな自伝を出すとこで、話は終わる。そこにいくまでのポルノスター時代が描かれますが、女性のために立ち上がるのも納得の壮絶さ。
リンダを演じるアマンダ・セイフライドには賛否両論で、良くも悪くも可愛い子ちゃん過ぎかな。私は、その可愛いとこが、多少不良だけど基本は普通の家の普通の子だったリンダという感じも出せてるのではと賛です。
最低最悪なヒモ男を演じるピーター・サースガードは、ヒモ男にかかせないチャーミングさも見せて名演。フランコはちょっとしか出ませんが、PLAYBOY発刊者ヒュー・ヘフナーを嫌らしく演じてます。
公式サイトhttp://www.thelovelacemovie.com

フランコのもう1本のポルノ絡みが、監督、出演もしてる『Interior. Leather Bar.』。ウィリアム・フリードキン監督アル・パチーノ主演『クルージング』の失われたゲイシーンを再現というのですが、こちらも見られず!
フリードキン監督は『キラー・スナイパー』で来英の際、自作のプレミアか何かで並んで試写していた奥様が怒って席を立ったという話で笑わせてくれました。それほど容赦なく、エロい映像、グロい映像混ぜ込んで、優れた映画を作る監督です。その監督のカットされた映像というのは気になりますが、ロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭の方で見られそうです。
公式サイトhttp://www.interiorleatherbar.com

 
 
というわけで、次回はロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭について。
そういえば、上記『Lovelace』のロブ・エプスタイン監督は、『ミルク』で有名になったゲイの活動家ハーヴェイ・ミルクのドキュメンタリー『The Times of Harvey Milk』の監督でもあります。
暗殺されることを予期してメッセージを録音するミルクも、ミルクの悲報を受け、キャンドルを手にした人々で埋め尽くされた町も、ほんとだった!『ミルク』後に見ると号泣もの。
ショーン・ペンが、すごく上手くミルクと似せてるのにもびっくりです。でも、ペンが『ミルク』でオスカー獲得の年って、ファスベンダーがノミネートされてなくてがっかりの年でもあるんだなあ。もしノミネートされても、両雄並び立たずだったんですね。

The Times of Harvey Milk公式サイト
http://www.tellingpix.com/films/show/the_times_of_harvey_milk

Milk公式サイトhttp://focusfeatures.com/milk

 
 
-ヒビレポ 2013年3月13日号-

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