MAKE A NOISE! 第12回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

アウェイとホーム

 

山口ゆかり
 
 
 
 
 

今、ロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭(LLGFF)の取材準備中。
スポーツじゃないけど、映画祭取材もホームだとけっこう余裕です。
前回までご紹介したベルリンでのように、開催期間だけの滞在となるアウェイでは、話題になりそうな映画を逃がさないだけで手一杯。
その点、ホームは開幕前のプレス試写から参加できるのが強み。大きい映画祭なら開幕前に数十本見終えられ、開幕後に余裕ができます。掘り出し物が探せたりもします。

LLGFFトークイベント登場の人権活動家クリーヴ・ジョーンズ (撮影:著者)
 
 

 
 
『ミルク』でジョーンズを演じたのは若手演技派エミール・ハーシュ (撮影:著者)
 
 

ホームでもう一ついいのが、食いはぐれることがないこと。時間がずれることはあっても、終わって家に戻れば何か食べられる。
昔、ベルリンで深夜取材後、レストランも店も軒並み閉まってて困ったことがあるのです。宿の近くに1軒だけ開いてた狭い雑貨屋で、かろうじて買えたポテトチップスがその日の夕食。通常価格よりだいぶ高かったから、ヤミ屋だったのかも。
日本に比べれば夜間や日祭日に開いてる店が少ないイギリスですが、ドイツはもっとキッパリ休んでます。両国ともだんだん増えてはいますが、日本には及びません。

そういえば、正月頃のロンドンで、客に悪態つく店員に出くわしたことも。
「こんな時、買い物来てる人って哀しいわ!」とレジ係の1人が大声の独り言を放ちやがった。「こんな時、働いてるアンタの方が哀しいよ」なんてイジワルは誰も言いませんでした。家でまったりしたかったのか、このシフトさえなければ、田舎に帰ってのんびりするはずだったのか…みな、その店員さんの境遇に思いをはせたのでしょう。
消費者の便利は「こんな時」働く人がいてこそ。そう考えると、何時でも買い物できるのが豊かなことなのかどうか、ちょっとわからなくなってきます。日があるうちに働いて日が落ちたら休む、みんながいっしょに休める農閑期みたいなのもあるのが、本来の働く形かも、なんて農耕民族なこと思ったりします。

狩猟民族はそうはいかない。夜が主戦場の“ハンター”を主人公にした『Nighthawks』(シルヴェスター・スタローン主演同名映画とは別)は、LLGFFで見られたゲイ映画初期の名作。と、強引なつなぎで話を映画祭に戻します。
『ゴッドファーザー』のアル・パチーノに負けずとも劣らない、すごい目の演技を見せて、ゲイクラブでお相手を探すハンターは教師。懐かしい70年代文化を彩りに、当時、その生き方がいかにきつかったが描かれます。茶化す生徒にきちんと向き合ってカミングアウトする名場面がこちら。
(youtube)

 
 

というような、この映画祭ならではの名作もあるのですが、足を踏み入れにくい映画祭ではあるかも。男装、女装はあまり見ませんが、普通の格好でも男前なお姉さまとか、なよやかな男の子とかはよく見ます。最近では全国ネットのテレビで取り上げられたりで、一般の映画好きも増加傾向にありますが。
LLGFFをポルノ映画祭と思ってる方がいて驚きましたが、もちろん違います。社会派ドキュメンタリーからコメディまであります。

これまでの良作なら、たとえば『Sasha』はコメディドラマでした。ゲイだと言えずにいる男の子サシャが主人公。思いを寄せる女の子や家族に巻き起こるドタバタで笑わせながら、移民たちの人間ドラマが深みを加えます。
トレイラー(youtube)

 
 

コメディとドラマのバランスが良い映画なら『Cloudburst』も。長年連れ添ったレズビアン・カップルを主人公に、老いの問題も絡めたロードムービーで、ジンワリきます。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でも『夕立ちのみち』として上映されました。
公式サイトhttp://www.cloudburstmovie.com

カルト映画『ミステリアス・スキン』も東京、ロンドン両方のレズビアン&ゲイ映画祭で上映されています。子役からスタートしたジョセフ・ゴードン=レヴィットには、この映画で男娼を演じたことが、俳優としての転機になりました。
公式サイトhttp://www.antidotefilms.com/films/mysterious-skin

レズビアン&ゲイ映画祭、これまで見ず嫌いだった方も、覗いてみたら良い作品にめぐりあえるかもしれませんよ。
行きたいけど、自分がストレートなのは、はっきりさせときたいという方に、良い方法があります。それは、カップルでの鑑賞。ストレートだけどレズビアン&ゲイに偏見をもつものではないという自分の立場を、スマートに表明している男女の2人連れもちらほらいます。
でも、カップルで行きたくても相手がいない方もいらっしゃるかもしれませんね。なら、同性の友達とでも良いのでは。そこから愛が芽生えることだってあるかもしれないし。無責任なこと言ってる間に、この連載もいよいよ次回が最終回。どうしましょ。
 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年3月20日号-

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