ハルヒマヒネマ 最終回

それはしりとりとか連想ゲームのように

 
やまだないと(「料理入門」連載中)
 
 
 
 

2週サボって、今回がヒビレポ金曜当番最終回です。

ハルヒは、とにかく時間という天敵がいる為に、上映時間と期間の決まった映画館にかかってる今の映画っていうのはあんまりみないのだけど、2005年からつけてるこの感想帖は、そういうわけで、ほとんどがTSUTAYAかAmazonだった。が、レポの当番で毎週かくときは、そういや結構意識して映画館で新しい映画をみていたのだ。
だから、ここんとこのハルヒは、かつてのハルヒより格段、今の映画をみている。
映画館で映画をみると最新作の予告編をみることになり、あ、みたい、という映画の情報が頭の片隅に残る。その、あ、みたい、と数年後、TSUTAYAの旧作の棚の森でであったりする。DVDを借りると、やっぱりそこには予告編がはいっており、あ、みたい、の連鎖で、返却時に予告編で観た映画を探す。
むかしのメモをみると、なんでこんなのみてるんだろうというタイトルがあるが、たぶんそこから、連想ゲームのようにまたは、しりとりの要領で、余韻がつながっているのだとおもう。それを自分でといていくのがたのしい。
ハルヒ日記はつけないが、映画のメモは、いまよりちょっとのちの自分の為の愉しみとして付けていく。

ハルヒマヒネマ
http://blog.livedoor.jp/nuitlog/
 

 
 

『横道世之介』2013 日本
D: 沖田修一 W:沖田修一/前田司郎 A: 高良健吾/吉高由里子/池松壮亮

ハルヒはどうも、とぼけを装った作風が嫌いで。
頭キレキレのひとが人を笑わせようととぼけを装ってるのがきらいで。というか、ぜんぜんおかしく感じなくて。
なので三木聡の映画がぜーんぜんおかしくない。おもしろくない。三木聡さんのことは知らないが、三木聡の映画はきらいなのだ。
だから『横道世之介』なんてタイトル、あらすじ、予告編、どれをとってもどうかんがえたって、三木聡っぽいにきまってる、と気持ちが避けてもしょうがなかったのだ。
そのうえ、出演俳優が高良健吾、綾野剛、吉高由里子、柄本佑、井浦新…と、なんかお腹いっぱいなかんじ。
それでも、『桐島〜』以来、ツイッタァで人々がおもしろいと騒いでいるものは、結構ほんとにおもしろいということに気づかされたので、みにいってみた。チケットを予約したら上演時間が2時間40分??…すでに失敗した気分だ。が。
先入観に負けて避けなくてよかった!2時間40分って長さに怯まなくてよかった!
むしろもっとみていたかった。そういう気分の残る映画だった。
はじまって数分で、ハルヒがわっと映画の中に連れて行かれたのは、80年代のハルヒがまだ福岡でぼんやり、何者になる予定もなく過ごしてたころの東京が映っていたからで、といってもそれは「新宿駅」(と書いてある)前のAXIAのサイトウユキのポスターだったり、キスミントガムの新発売のキャンペーンやってたりのあざとい装置をおいた上でのことなんだけど、そこにいる上京したての高良健吾だけでなく、通行人までもが昔の映像を見てるように自然に昔だったのだ。
若い人がみるとそこでどういう気分になるのか、ハルヒにはわからないのだけど、上京経験のあるひとならあの時代を知らなくても、あそこに立つ世之介の気分は一瞬で共感できるのじゃないかと思う。
でくわしたアイドルの野外イベント、そのあとのひとり下宿先へむかう電車。
窓からみえる流れる風景が白くまぶしくかすんでるかんじ。背中がぽかぽかとあったかいかんじ。思わず覚えたてのフレーズを口の中で繰り返すかんじ。試供品のガムがあってちょうどいいかんじ。
あんなにこの先の未来が愉しみだったことってないなあ。
でも、それも、ほんとにハルヒがそうだったのかどうかはわからない。そんな気分だったハルヒをみているように、世之介をみているのだ。そこからの2時間半。世之介はまるでハルヒの思い出のようだった。
『サニー 永遠の仲間たち』 をみたときに、ハルヒがまさにそこにいた80年代の再現がうれしいやら、くやしいやらで、くやしいのは、外国の映画だったからなんだけど、それがあったんで、『横道世之介』にとりかえしてもらったような気持ちにもなった。
どちらの映画も、懐かしさや、再現における芸の細かさを、笑いのネタとしてあつかってないところがおもしろさだ。その時代にほんとうにカメラを回していたかのような錯覚さえある。
ただ、実はどっちの映画も、87年頃が舞台になっていて、87年といえばハルヒはそれこそ漫画家として、東京で暮らすか暮らさないかくらいの頃で、その頃の思い出…となると、なんかもうすこしおしゃれですっきりしてたような記憶だ。眉は太かったけど。だって89年にはもうフリッパーズ・ギターが『three cheers for our side〜海へ行くつもりじゃなかった』を出すんだから。
『サニー〜』も『〜世之介』も、たのきんトリオの時代みたいなイモっぽさがある。正確さよりも、なんというか、その、自分がイモだった季節、日本中がイモだった、東京さえテレビさえイモだった、そんな気分が胸の奥底から勝手によみがえるから、おもしろいんだ。
(ちなみに監督はハルヒよりひとまわりも若い)
2時間40分はたしかに長いんだけれども、心地悪くはなかった。沖田監督のなんらかの演出法なんだろう。それがどういう演出なのかはうまくわからなかったけど、ひとつは、にんげんを生かすことかなとおもった。
後から原作を読んだ(家の人に聞いた)ら、意外にも映画はほぼ原作のままの構成とエピソードなのらしい。だから、『桐島〜』とはまた別の原作との向き合いかただ。沖田監督の方は、映画としての視点よりも、小説の中の横道世之介を始めとする登場人物をいかに生かすかが映画にするということだったのかもしれない。
というのも、例のお腹いっぱいの俳優たちが、みんなまるで経験の浅い新人俳優のようなのだ。それぞれいろんな色をもった人気俳優なのに、その色がない、というかわすれてしまう。イケマツソウスケはどの映画にでててもそんな感じだけど、これがハルヒにとってこの映画のいちばんのおもしろさだった。おもしろかったからといって2時間40分は決してあっという間ではなく2時間40分であったけど、またみたいな、いや、またあいたいな。世之介たちに。

『横道世之介』は、後半、東京でおこったとある事故を思い当たらせる。(これは原作もそうだ)実際その場所には、そこで亡くなった2人の名前が刻まれたプレートがあるんだけど、それをみるたび、ハルヒの全く知らない人ではあるが、彼らがどういう人達だったんだろうと、考えていた。ここに名前を残されて、彼らは語り継がれる人になったかもしれないが、ほんとうなら語り継がれることもない、でも普通の人生を今も送ってる人だったのに。
もちろん(その仕掛けの意図は不明だが)モデルにはしてあっても横道世之介はその人ではない。だけど、映画を観てると、そうか、「こんなふうに」あの人たちのことを思い出して微笑んでる人がきっといるんだろうなあ。微笑んでしまうようないい思い出が、いろんな人に残ってんだろう。と思った。そしたらなんかほっとした。
 
 

『キツツキと雨』2011 日本
D: 沖田修一 W:沖田修一/守屋文雄 A: 役所広司/小栗旬/高良健吾

130分くらいの映画。なんだかこれも、ひじょーに長くかんじて、これはやっぱり沖田監督の作風なんだな。なんだろう。流れる時間は流れるままに。みたいな。おもしろいようなどうでもいいような。…でもみちゃった。
木こりやってるヤクショコウジの暮らす村にある日映画の撮影隊がやってくる。監督は才能はあるのだろうがコミュニケーション能力皆無の25歳の新人オグリシュン。ゾンビ映画を撮ってるってとこがちょっとずるい。なんかずるいでしょ? で、どういう撮影プランできたのかしらないけど、どういうわけかそのゾンビを演じるほとんどに急遽村のひとたちがかりだされる。
ハルヒがいうとぼけを装うかんじって、ヤクショコウジがでてるCM全般。ダイワハウスとか、みるたびに、まーったくおもしろくない!っていわなきゃ気がすまないくらい嫌い。この映画でも、ヤクショコウジのぼんやりぶりは、最初ちょっといらりとくるんだけど、だんだん、いいやつじゃないかって愛着にかわってくる。オグリシュンもなんか嘘くさいただのオグリシュンだったのだけど、だんだん、がんばれよ監督ってきになってくる。沖田監督のなーんか無駄にながーく感じる時間は、観客が彼らの存在を自然に認めるまでの時間なのかもしれない。
 
 

『南極料理人』2009 日本
D: 沖田修一 W:沖田修一 A: 堺雅人/生瀬勝久/きたろう

125分か。3本目ともなると(逆行してるが)沖田監督への信頼感から最初からぼんやりみることができた。でも、これは南極観測隊の基地の暮らしの話だから、いろいろ興味深くふつうにおもしろかったし、くる日もくる日も朝昼晩の隊員たちの食事を作る調理担当の手際と思いやりがたのしい。いちばん最初の和食の並ぶ食卓がよかった。冷凍食材であんなに普通にちょっとした和食のコース料理が作れるんだな。南極だから、食材は外においてある。
退屈で何もすることがないときって、食べることだけがたのしいもんな。飛行機のなかってそうだもんね。
これは実際にその調理担当の人が書いたエッセイが原作になっていて、沖田監督の映画って結局日記なんだなどれも。だから、この映画には、ハルヒがすばらしいラストシーン!とじんわりしたその先があるのが、すっごく邪魔だった。
後日談はいらなかったとおもう。
あの、またいつもと同じ食卓についた隊員たち…がふっといなくなる。あそこで終わるのがハルヒよかったな。
調理担当を演じるサカイマサトが、隊員たちの身勝手にすっかりココロ折れてふて寝してしまうんだけど、食事の時間になんとなく目が醒めて台所に行くと、隊員たちが総出で食事の準備に四苦八苦してる。
テーブルに並んだ油でべちょべちょの唐揚げを口にしてとほとほと泣き出すサカイマサト。たしかに彼の日本に残してきた奥さんは、そんな唐揚げを作る人だったけど、ハルヒはあれは、人が作ってくれたものを食べるうれしさ、なつかしさで泣いたんだと思った。好きなシーンだ。

3本沖田監督の映画を観てたら、コウラケンゴともうひとりクロダダイスケが皆勤賞だった。
クロダダイスケは横道世之介のいとこのキヨシにいちゃんってのをやってて、そのキヨシにいちゃんの存在がハルヒはたまらなかった。あれは九州出身のひとにはきょうつうにおもいあたるたまらなさじゃないだろうか。
キヨシにいちゃんの部屋のベージュのスチールの本棚(ステッカーのあとつき)も、みたしゅんかんぐーんと連れてかれるものがあった。
 
 

さあ、来月はいよいよレオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』!! 公開日前まで、ユーロスペースでカラックスの特集をやってる。映画館でみたらぜったい号泣だからひとりでみにいこう。
http://www.holymotors.jp/special.html

 
 
 
-ヒビレポ 2013年3月29日号-

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