イメージの詩 第31回

新連載に搭載するもの

 
 
えのきどいちろう
(第11号で「いつでも始められて、いつでもやめられる」を執筆)
 
 
 

 小学館『DIME』は創刊誌だった。僕は創刊誌にタッチするのがすごく新鮮だった。これまで「ブロディ方式=他人のつくったリングで暴れる」は経験してきたけど、創刊から連載やらせてもらえるなら、その雑誌のトーンやノリをつくっていける。雑誌のコンセプトは「トレンドウォッチ」というものらしい。感覚的には日経っぽいものだ。新商品や新ビジネスを積極的に紹介するイメージ。

 僕がページをもらうことになったのはデータウォッチングというくくりのなかの1ページだ。毎回、何かのデータを取り上げて、そこに短文をつけるというフォーマット。まず、アイキャッチとして、ページのなかに必ず円グラフとか棒グラフが入ってるのは面白いぞと思った。

 
 
 その当時、雑誌は編集部にライターやデザイナーが行ってみんなで相談しながらつくってたから、レイアウト上の遊びにライターが参加できた。僕はアイキャッチに凝ってて、例えば文中で急にワンフレーズやセンテンスが巨大化するみたいなやつ(実例を今、やってみようと平野さんに電話してみたんだけど、ウェブだと難しいね。フィックスしたフォーマットがないからね)とかね。その場にみんないるからできたことだよね。今、雑誌で連載やっても原稿をメールで送って、イメージを担当編集者に伝えるくらいで、まずデザイナーとはやりとりしないからね。しばらくしてデザイン校正が添付されて送られてきても、こっちは誤字脱字のチェックが主だ。クリエイティブワークとしては後退している。

 『DIME』の連載は「データ超個人主義」というタイトルになった。これは目のつけどころ勝負の企画で、自分が「これこれこういうことってありませんか?」と思ったことを少人数にアンケート取って、グラフ化してのっける。ま、実際にやったネタとしては「新刊書店に行くと何故か大のほうをもよおしませんか?」とかね。連載が順調にまわりだしてからは、バブル崩壊すると思いませんか?もやるんだけど、これは何かというと「あるあるネタ」ですよ。たぶん僕はこの連載を通じて、日本の「あるあるネタ」の創始に関わってるんじゃないかなぁと思う。っていうのは連載が注目されて、ホントに「人気コラムニスト」っていう風になっていくんだ。

 ま、この連載のために「あるあるネタ」のプロトタイプを考案した、くらいは自慢してもいい気がする。やり口は目のつけどころなんだね。まだ誰も言ってない、ビミョーなことを見つける。で、それをデータ開示して、「みんな」との間に広場みたいなもんをつくる。

 一方で、この連載の元になった『ミュージックマガジン』の「ブロディ」っぽいやつも何回かにいっぺんやるようにした。思い出すのは御茶ノ水駅前に立って「あなたは神を信じますか?」と通りがかりの人に聞くってネタ。「信じますが?」と言われたら「あ、そうですか」で終わり。いや、「信じません」でも「あ、そうですか」。これは空振りを味わう企画だね。あれの声かけてる側の人から見ると世界はどう映るのか。

 あと文中、多用するフレーズとして「ってあるじゃないですか?」を考案した。これは流行って、押し付けがましい間違った日本語みたいに言われるようになる。僕のアイデアの元は秋田弁だった。あ、僕はプロフィール上、秋田出身で通してるんだけど、両親ともに東京で、秋田市は父の転勤先なんだね。単に出生地なんだけど、秋田って雪国に思い入れがあって「出身地」にしてるって話。で、大人になって秋田へ旅して、交通事故のときの秋田弁のケンカを目撃した。これが衝撃的で「だば、でねぇすか。だば、だば」って機関銃みたいにダバダバ言ってたんだ。「でねぇすか?」の標準語訳ですね。「って〜じゃないですか?」

 日本語はテキトーなとこがあって、こういうやつがテンポさえよければグーッと持っていけるんだね。「山って川じゃないですか。川って海に届くじゃないですか。海まで行ったら広いじゃないですか。だから広いんです。僕の言いたいことはその広さの爽快感」。何言ってんだかわからないんだけど、何かこうグーッと持ってく力があるんだなぁ。この連載の時期、この修辞の自在さに笑った。もう原稿、笑いながら書いてたですね。おお、これも成立するのかって。

 だからアレですね、アイキャッチを考えて、企画のエンジンを搭載して、それに加えてその時期、凝ってるロジックを搭載する。勘でやってるんだけど、振り返ってみて意外とゲンミツなんだとびっくりしました。この連載が引いてきた最大の収穫は『週刊文春』の連載コラム「テレビ一目瞭然!」ですね。これも好評につき、データを開示するフォーマットをとった。「テレビ一目瞭然!」は、ナンシー関の「テレビ消灯時間」が始まるまで続く。80年代の終わり、僕はアクセル全開で連載を増やす時期に入ったんだ。

 
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2013年3月24日号-

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