白と黒の報告書 第1回

桜の樹の下には

木村カナ(レポ編集スタッフ)

西荻から湯島に引っ越しをして2ヶ月。

西荻への愛着はいまだに尽きないが、引っ越しをして良かったと心から思えることのひとつは、上野動物園に歩いていけるようになったことである。こう書くと、それが引っ越し先を決める条件だったかのようであるが、実は迂闊にも、引っ越した後に地図を眺めていてようやく、その事実に気付いたのであった。

パンダをことのほか愛しているわたしにとって、それは僥倖以外の何物でもない。西荻に住んでいた頃、善福寺公園の脇の竹林にパンダがいたらいいのに、そうしたら、いつでも歩いてパンダが見に行けるのに、などと、らちもない妄想をしていた。徒歩圏内にパンダ、ご近所にパンダのいる生活。それがついに現実となったのである!

引っ越してさっそく、上野動物園の年間パスポートを購入した。

顔写真を貼らないといけないのはちょっと面倒だったけれど、不正利用を防ぐためだろうから、仕方がない。

(この顔写真は、証明写真でもプリクラでも構いませんので、と窓口のおねえさんに言われたけど、去年の「大友克洋展」でデジカメで撮ってもらった写真をわざわざ現像して貼った。『童夢』のチョウさんが「ズン」ってなったシーンを再現……する直前。)

年間パスポートは一般2,400円。通常の入園料が600円だから、1年に4回行けば、元が取れる計算です。もちろん今年は最低でも4回は行く! なんてったって歩いて行けちゃうんだからね!

ということで、ほぼ毎週、パンダを見たいがために、上野動物園に行くようになりました。上野動物園のパンダ舎は表門のすぐそば。入園してパンダだけを見て帰る……年間パスポートならではのそんな贅沢を早くも覚えてしまいました。

『季刊レポ』4号で、下関マグロさんが行列評論家として、2011年4月1日金曜日、公開初日のパンダ見学の行列をレポっている。この日の待ち時間は51分、パンダ舎の前にいられたのは4分ほどだったとのこと。

「時間にしてみると50分ほどなので、そんなに長い時間では無いけれど、人の多さということではハンパない量であった。人酔いというかパンダ酔いというかんじで少し気持ちが悪い。」(下関マグロ「行列ノート ~並びながら原稿を書こう~ 第3回」

公開後まもないGWには、最長待ち時間が4時間30分に及んだ、との報道もあり【上野経済新聞】、パンダは大好き、でも、人ごみと行列は大嫌い、なわたしは、そうした情報に恐れをなし、しばらくはパンダ見学を控えて、人出が少なくなってからようやく、シンシンとリーリーとの対面を果たしたのであった。

そんな久々のパンダ来日直後のフィーバーから2年を経た、2013年3月21日、木曜日。

平日ではあったが、例年よりも早く桜が咲いている上野公園は、花見客でごったがえしていた。上野動物園もいつもの平日よりもやや人が多い。えーっと……世の中はもう春休み? しかし、この日もまったく並ばずに、年間パスポートでするっと入園。

光のどけき春の昼下がり、シンシンとリーリーは屋外放育場に出ていた。

9時半の開園から昼過ぎにかけては、屋外でのお食事タイムなので、よく動くパンダが見られます。

桜の樹の下にはパンダがだれている!桜の樹の下にはパンダがだれている!

こちらがシンシン。2005年7月3日生まれのメス。

2013-03-21 シンシン

こちらがリーリー。2005年8月16日生まれのオス。

2013-03-21 リーリー1

2頭とも中国四川省の臥龍保護センター生まれです。

3月12日に自然交尾が確認され、その様子が動画で公開、テレビのニュースでも盛んに流されたわけですが……本人、いや、本パンダたちはそんなことはつゆ知らず、発情期を終えて、いつも通りの生活に戻った様子。いつも通りとは、パンダの場合、要するに食っちゃ寝であります。

交尾は確認されたものの、シンシンが妊娠しているかどうかは、産気づいて、実際に赤ちゃんが産まれるまでは、よくわからないという。パンダの赤ちゃんはすごく小さいので、お腹が目立って大きくなったりしないし、飼育パンダについては、想像妊娠の例も報告されているので……もしや産むのか!?と思って期待しながら待っていたら、いつまで経っても産まれない、なんてことがあったそうなんですね。

シンシンが産んだ赤ちゃんが、生後7日目に急死してしまった、という悲報のあった昨年。

上野動物園のパンダの歴史をひもとけば、ランランが妊娠中に死去、ホァンホァンの人工授精による最初の子どものチュチュも生後43時間で亡くなっている。2番目のトントン、3番目のユウユウは無事に育っているので、もし今年、シンシンが2番目の子どもを産んだら、きっと大丈夫、立派に育て上げてくれるはず!と心から祈っております。

こんな感じで、上野動物園のパンダ、シンシンとリーリーを中心に、パンダとその周辺のあれこれについて、書いていくつもりの「白と黒の報告書」、4月から6月まで、どうぞよろしくお願いします。

2013-03-21 リーリー2それにつけてもこのまんまるさよ…

※引っ越しにまつわるよしなしごとを書き綴った「わたしのおうちはどこですか」を寄稿したインディーズ文芸誌『ウィッチンケア (Witchenkare)』4号、発売中です。
http://witchenkare.blogspot.jp/
「パンダはおそろしい」掲載の3号ともども、読んでいただけたらうれしいです!
「パンダはおそろしい」立ち読みはこちらから → http://witchenkare.blogspot.jp/2012/05/vol315.html

-ヒビレポ 2013年4月4日号-

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