白と黒の報告書 第3回

記録と記憶(後編)

木村カナ(レポ編集スタッフ)

わたしがジャイアントパンダに夢中になったのは、2005年以降のことなのだが、それ以前にも上野動物園には何度か足を運んでいて、そのときの写真も手元に残っている。

パンダ舎はフラッシュ使用禁止ですよ!パンダ舎はフラッシュ使用禁止ですよ!

おそらくは1994年の秋の撮影だと思われます。モノクロなのは、その方がなんとなくかっこいいような気がして、白黒フィルムが入った使い捨てカメラをわざわざ買って、持って行ったから。

上野動物園の歴代パンダの資料を見ると、この写真にネームプレートが写っているトントン以外に、トントンの両親であるフェイフェイとホァンホァン、上野生まれのユウユウとの交換で中国から来たリンリンがいたはず。うーん、このとき、4頭とも全部、見れたんだっけ? 全然思い出せない。こんな風に不鮮明な写真しかないからわからない。使い捨てカメラでなんとなく、じゃなくて、もっとちゃんと資料性のある写真を撮っておこうよ! フラッシュは切っとけよ!! ばか!!!と過去の自分を叱りつけてやりたい。

続きまして、それから4年後の1998年の写真、このときにはAPSフィルムのコンパクトカメラを持っていて、撮影年月日が裏面に入っている、11月4日。

だからフラッシュは使用禁止なんだってば!だからフラッシュは使用禁止なんだってば!

フェイフェイとホァンホァンはすでに死去、トントンとリンリンの2頭だけになっている。このときの写真も、なんとなく動物園に行って、なんとなく撮ってるなーという印象。パンダへの愛情がまったく感じられない。ダメだこいつ。

で、だいぶ間が空いて、2007年。デジカメで撮って、mixiのフォトアルバムにアップしてあった写真。かなり長い時間、パンダをしっかり観察して撮ってあって、1枚1枚にわざわざキャプションが付けてある。パンダ好きになった後だからね。パンダはもう年をとったリンリン1頭だけ、現在は西園にいるレッサーパンダがパンダ舎の別の部屋にいた。

2007-01-04 リンリン「りんごりんご 投稿日時:2007年01月05日 00:46」

ブログにこんな日記も書いている。

「2007.01.04 Thu.
上野動物園に行った。「ペンギンのお散歩」イベントがお目当て。ペンギンがすぐ目の前をトコトコ歩いていく。旭山動物園の行動展示の影響をあからさまに感じる。カワウソが管の中を泳いでくるのが見れるプラスチックの装置とかにも。ツキノワグマの冬眠実験はちょっと違うか。モニタに映し出されたクマは丸くなって寝ていた。人間も冬眠できるらしい。冬眠したいなあ。ずうっと眠っていたいなあ。パンダを最後に見る。リンゴを食べてちょっと竹を食べたらそのままごろりと寝てしまった。パンダになりたいなあ。」

ここに書きとめられている出来事を、まるで数日前のことみたいによく覚えているのに、6年もとっくに経っているのか……でも、発想も思考も今と完全に一緒だよ。その一方で、物心つく前の1979年ならばともかく、1994年とか1998年の自分が、赤の他人のように、ほとんど別人であるかのように思われてならない。もちろん記憶はそれなりにあるんだけど、自分で撮った写真だって目の前にあるんだけど、現在の自分とあんまり連続していないように感じる。わたし以外の誰でもないのに、変だなあ。パンダが大好きじゃなかったから? いや、たぶん、それだけじゃないはずだ、どうしてだろう、不思議だなあ。

さて、過去から現在へ、2013年4月4日木曜日のパンダレポです。この「白と黒の報告書」の写真は今のところすべてiPhone4Sのカメラで撮っています。

この日、上野公園の桜の大半はすでに散りかけで、それでもくじけずにお花見をしている人たち多数、ソメイヨシノだけが桜じゃない、本数は少なくとも咲き誇る白桜あり八重桜あり枝垂桜あり、とは言え、視界が葉桜寸前の花のない木ばかりでもいいのか、別にいいのだ、だって例年ならば今頃こそがお花見シーズンなのだ。平日なのに家族連れが多いのはまだ春休み中だからか。

ちょうど15時、室外から室内への展示の切り替えの時間、先にリーリーが室内へと。

2013-04-04 リーリー、ダンス!?踊っているわけではなくて、においづけをしているのだと、警備員のおじさん曰く。

木の台の上でのマーキング行動ののち、池に入って水浴び。池から出て、部屋の隅にそのまま座ってしまって、もうひとつ奥の自分の部屋に一向に入ろうとしないリーリー。室外から見ている飼育係さんに水を浴びせかけられてようやく自室に移動、ゆうごはん。

2013-04-04 リーリー、水浴び。2013-04-04 リーリー、びしょ濡れ。2013-04-04 リーリー、もぐもぐ。

リーリーが自室に落ち着いてから、シンシンが室内へ。シンシンはすぐさまお食事開始。

2013-04-04 シンシン

それにしても、今回もパンダ愛に満ち溢れた写真だぜ、我ながら……って、iPhoneの高性能なカメラで撮りまくった中から、うまく写っている写真を選んでいるからなんだけど。

わたしも含めて、パンダ舎の前に集まっている人たちの多くが、大きな望遠レンズを装着した一眼レフから手のひらサイズのコンデジ、スマートフォン・携帯電話まで、それぞれのカメラを構えて、思い思いにシャッターを切りまくる。小学生ぐらいの子もDSでパシャパシャッと。そういう光景を見ていると、高いカメラを買わなくったって、これがあれば気軽に写真が撮れる!と、使い捨てカメラを喜んで持ち歩いていた時代が、なんだかすごく遠い昔のことみたいに思えてくるのだった。

前回・第2回の補足。
『上野動物園公式パンダブック』を読み返していて、こんな記述があることに、遅ればせながら気がついた。

「最初のパンダ舎は、1973年に現在のタイ式東屋がある場所に建てられました。その後、1988年4月から、2代目となる現在のパンダ舎を使用しています。
2010年には、リーリーとシンシンの来園に備え、リニューアルをしました。」

そうか、パンダ舎は建て替えられていたのか……1979年の写真が撮られた場所が、サル山ではすぐにわかったのに、パンダ舎ではよくわからなかったのも当然。

「タイ式東屋」というのはこれのこと、リーリーのいる屋外放飼場Bの横にある建物。

タイ式東屋

パンダブック(上野動物園公式)東京動物園協会編集・発行の『上野動物園公式パンダブック』は同協会のオリジナルグッズ、上野動物園園内の売店のほか、都立動物園・水族園の公式サイト「東京ズーネット」内の「TokyoZooShop」での通販が可能です(この本の売上の一部はジャイアントパンダの保護活動に活用されるとのことです)。

-ヒビレポ 2013年4月18日号-

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