昭和歌謡宅急便 Ⅱ  〜重箱の隅つつき隊〜 第4回


歌謡曲におけるお国柄イメージの一考察

田中 稲
(第11号で「大阪から来た女」執筆)
 
 
 

さて、みなさん。突然ですが海外旅行は好きですか。
私は苦手です。というか無理です。
今までシンガポールと韓国に行ったことがあるはずなのですが、なぜか記憶にありません(号泣)。

元来、現実世界を旅するよりも、自分の部屋でアッチの世界に妄想旅行をする方が好きという救いようのない性質であり、見知らぬ土地に旅に出て見聞を広めるなど、UFOに乗って宇宙に出るのと同じレベルの勇気を必要とするのであります。
このままだと、私の人生、非常にコンパクトな行動範囲で済みそうな予感です。


 
 

そんなチキンな私の海外恐怖症を煽るかの如く、いつだったでしょうか。こんな恐るべきニュースが。

【5歳で迷子になり帰れなくなった男性が25年後、グーグルアースで故郷を発見!】

内容を要約すると、セロー・ブライアリーさんは5歳の時、インドの某駅で物乞いをしていたのですが、ある日うっかり電車の中で眠ってしまい、目が覚めると全く知らない場所にいたのです(ひぃぃぃぃ)。

幼かった彼は現在地も自分がどこから来たのかもハッキリわからないため故郷に戻れず、その結果、孤児院で暮らすことに。その孤児院でオーストラリア人夫婦に引き取られて、オーストラリアに移住したのです(ああぁぁぁぁ)。

そして25年経ったある日。Google Earthで、5歳の時にいた駅にソックリな「カンダワ駅」を発見。それをきっかけに、フェイスブックのコミュニティなどを通じ、見事故郷をつきとめ実の母親と再会を果たしたのでした。
 
            ※       ※      ※ 

なんということでしょう(涙目)。迷子で25年間家に帰れないんですよっ!!
「超」がつく方向オンチの私としましては、もう他人事ではありません。
思わず自分の姿に変換して想像してしまいます。脳裏に浮かぶのはインドで25年間迷子になり
「インド旅行なんて来るんじゃなかった〜帰りたーいオカアサーン」
と泣き叫んでいる、白髪&シワシワヨボヨボのお婆になり果てた己の姿……。
(ああああ想像するだけでイヤー!)

でも、こんな私でも、歌謡曲でなら海外旅行が可能なのです。数々の歌い手が、各国のお国柄を情緒豊かに歌ってくれているのですから、これに乗らない手はありません。
そう。素晴らしい歌声は「無形飛行機」なのです!

ただ一点、注意したいのが、昭和歌謡の外国は「イメージ先行」だということです。
それを覆すリアルやギャップなど、昭和歌謡は必要としていないのです。
例えば

● リズム感の悪いアメリカ人
● ナンパが下手なイタリア人
● ダサいフランス人
● チャラくて約束にルーズなドイツ人

こういった方々は歌謡曲の世界観では存在しないことにされるのです。

行った事が無い人が聞いても、行った気になる雰囲気作り。
ゴダイゴや佐藤隆などはそれが天才的に上手く、見事「無形飛行機」の役割を果たし、私たちを異国の世界へと誘ってくれました。嗚呼、アテンションプリーズ……。

ただ、中にはそのイメージ自体が迷走し
「うちの国のどんな部分を参考にしてまんねん!」
と現地の方が困惑しそうな曲も存在します。

最たるものが、橋幸夫さん「恋のメキシカンロック」。リズム歌謡の超名曲ですね。
歌詞を読んでみると「セニョリータ(女性)」「マタドール(闘牛士)」「マニャーナ(明日)」…いやいや、なかなかメキシコらしさを出すための現地語投入も頑張っております。それは痛いほど分かります。
 
 

 
 
が。どうしても隠しきれない、ニッポンフジヤーマ、テンプラゲイシャ臭……。
橋幸夫の流暢な鼻声ドヤ歌唱が、歌詞とリズムに散りばめられたメキシコイメージの種を見事に摘み取り、代りに浴衣姿の酔っぱらったオッサンがセニョール!マニャーナ!と座布団投げてはしゃいでいる温泉旅館のイベント「メキシコ祭り」的風景がまざまざと浮かんでくるのでございます。

ただ、それがアダとなっているかといえば決してそうではなく、温泉旅館メキシコ祭り感こそが、この「恋のメキシカンロック」のキッチュさを醸し出す素晴らしさである、と私は思うのです……。
 
 
次に、庄野真代さん、「飛んでイスタンブール」。
 
 

 
 
歌詞でイスタンブールを思わせるのは
「おいでイスタンブール」「飛んでイスタンブール」
と、そのままズバリ土地名が入ったサビくらいで、後は延々グダグダ失恋の愚痴と思い出話に終始しています。

これ、曲の舞台がイスタンブールの必要があったんかえ。
しかもイスタンブールに「砂漠」はねーし! 「砂漠でロール」たぁ一体どういうことッ?
とツッコみたくなりますが、いやいやいや。落ち着かれませ。これは逆に
「一般の人はあまりどんなところかハッキリ知らないが、土地名がとりあえずオリエンタル」
という部分を巧みに利用した確信犯という見方もできます。だとしたら恐るべし、ちあき哲也!!

結局、私なりに読み砕いてみたところ、ヒロインがイスタンブールに赴任することが決まった彼に
「おいでイスタンブール。しかしそれがムリなら別れよう。恨まないのがルール……」
と2択を迫られ、その末別れを選んだ歌……というのが妥当な気がします。
しかし「遠距離恋愛」という第三の選択肢はなかったのでしょうか。どうして男はこう融通が利かないのでしょう!

しかもですね。歌詞の中盤を読むと、どうやら交際のキッカケが
「バーのカウンターでシュワッとグラスを滑らせてくれた」
ということで、この男性「マスター、向こうの席の彼女に一杯」的な方法でナンパしたらしき事実が伺えるのです。

カーーーッ。痒いかゆいカユイッ。こんなことする男にロクなヤツいねーーーーッ!!
よかよか。別れてよか!! イスタンブールなんて着いて行かんでよか!!

はっ(我に返る)! 思わず歌詞の世界に引き込まれてしまいました。
あらぬ方向に怒りの矛先が向きそうなので、今回はここまでにしとうございます……。
 
 
 
 

最後に1つお知らせが。

田中稲、ついに昭和歌謡Barを開きました!
と言っても、ブログでの「仮想Bar」でございます。
場末の寂れた感を出そうと必死です。お暇ならきてよね……。

仮想昭和歌謡Bar「米の前」
http://ine1204.blog.fc2.com/

 
 

-ヒビレポ 2013年4月23日号-

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